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第7章 帝都にて、それぞれの時と思い
083★皇帝陛下の妃は、ちょっとズレているぐらいじゃないと勤まりません
しおりを挟むキャロラインの言葉に、副団長で事務的なことを任せている副団長のオスカーへと話しを振る。
「オスカー?」
アルファードの問いに、オスカーはスラスラとその答えを口にする。
「我が魔法騎士団も古参の隊長2名と
騎士達を派遣しております
しかし、アルバード様もそちらに
行っているとは聞いていませんでした」
オスカーの口からも知らなかったという言葉を聞き、アルファードは苦虫を潰したような表情で言う。
「ったく、あのシオババアの仕業か?」
唸るように言うアルファードを振り返って、その表情を見たエリカは、思わず見とれてしまう。
〔うわぁぁ~…こういう顔のアルも
カッコイイわぁ~……って、でも…あれ?
シオババアって誰なんだろう?
後で、きちんと聞かないと………〕
皇妃リリアーナが、岩塩をたてに皇妃の座に無理矢理収まっているので、その行為を嫌悪し、口の悪い者は、『シオババア』と言うのだ。
が、この時点では、まだ、エリカはその意味などを知らなかったので、疑問符を浮かべつつも黙っていた。
そんなアルファードを注意することもなく、オスカーは平然と答える。
ちなみに、魔法騎士団の中では、団長のアルファードがことあるごとに、口にするセイで、皇妃は『シオババア』で通っていたりする。
「可能性は否定しませんね」
その言葉に、アルファードからオスカーへと視線を戻したエリカは、小首を傾げる。
〔えーとぉー…シオババアって共通認識?
いったい誰のことを言っているんだろう?
話しの流れからいって……騎士達を
個人的な感情で動かせるってことは……
ある程度の権力あるってことよね
どうやら、かなぁ~り嫌われている
みたいね
優しいアルやオスカーさんが
そんな風にいうんだもの………
エリカ、絶対に近付きたくないわ
絶対に、イジメられるもん〕
アルファードは、自分達の会話を聞いたエリカが、そんなことを考えているなど気付くことは無かった。
勿論、観察眼のあるオスカーもである。
この時、アルファードとオスカーは、シオババアが仕組んだそこに、どんな作為があるか、どんな罠が張り巡らされているかを考え始めていたのだ。
が、そんな魔法騎士団の団長アルファードと副団長オスカーに、キャロラインが笑って言う。
「それは、大丈夫よ」
「えっ…何が?」
何が大丈夫なのか?と思い、疑問のままそう聞くアルファードに、キャロラインは爆弾をポンッと軽く投げる。
「だって、東の妃のエスメラルダ様の
アーカンディル様も……
中央騎士団の魔物討伐で
魔の森に行っているわ
確か、中央騎士団だけで
行っていたはずよ」
その内容に、流石のアルファードも、ソレに気が付く。
「それって…シオババアだけで出来るのか?
…なぁ~オスカー?」
キャロラインが今言ったの言葉の意味に、オスカーもすぐに気付く。
そして、オスカーは確信めいた口調で言う。
「たぶんに、陛下の意思が入っていますね」
〔シオババアから…陛下の意思って何?
何らかの意図があって、魔物討伐に
複数の皇子が出されたってこと?
うわぁ~…過去の聖女様の話しよりも……
帝国内の相関図的な話しを聞いておけば
良かったかもぉ……はぁ~………
全然、理解(わか)らないんですけど……
今、聞ける状態じゃないし……後で聞こう〕
混乱するエリカの意識をよそに、話しは淡々と進んで行く。
そして、オスカーの答えに、アルファードが疑問を投げかける。
「何故?」
そんなアルファードに、オスカーがこの部屋に居ない誰かを思い浮かべて、嘲笑を滲ませた表情で、嗤って言う。
「陛下にとって、大事な本当の皇太子と
第2皇位継承権者と第3皇位継承権者を
聖女候補の《召還》時に、その身の
《魔力》を《呪陣》に吸われる危険を
嫌ったというところでしょう
陛下にとって、皇妃リリアーナの生んだ
現皇太子や、その他の皇子達は…所詮
スペアにもならないというところでしょう」
オスカーの答えを肯定するように、キャロラインは優雅に頷いて言う。
「そうね、皇妃リリアーナ様も
東の妃エスメラルダ様も………
何かというと直ぐに争うから
陛下も嫌気がさしていたわね
それでも、アーカンディル様は
地位に応じた《魔力》があるから
皇子として扱うというところね
ふふふ………でも、良かったわ
それなら、魔物討伐に出された
アルバードも、ちゃんと皇子として
扱われているんですもの
私の皇子は、陛下のお役に立つのね
頑張って産んだかいがあったわ」
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