私は聖女になります、性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

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第9章 魔法騎士団本部にて

111★聖女候補達の会話に微笑むギデオンとレギオンと騎士達

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 レギオンやギデオンの生温い視線に気付かず、百合はどこかホッとしたような表情で嬉しそうに言う。

 「そっかぁ~模様替えとか色々なコトを
 ポイッと出来るね」

 わざわざ自分の為に色々と取り揃えるようなことを聞かされていただけに、聖女候補達は困っていたのだ。
 《勿体無い》とか《節約》とかいう言葉が、美徳?というよりは、極普通に身についている日本人としては、そういうイラナイことにお金をかけるのは迷惑だったのだ。
 だから、6人一緒だと経費が安くすむと考えてしまうのだった。
 
 「そういうコト…直ぐにここに住みたいから
 手を抜ける部分は手を抜くべきだと思うの」

 力説する撫子に、桔梗が同意する。

 「うん、それで、良いと思うよ」

 そして、桔梗も自分の思ったことを口にする。

 「だって、この部屋と同じ形式だったら
 リビングや食堂や書斎や寝室を、それぞれで
 使っていれば、1人にもなれるしね」

 桔梗の言葉に、鈴蘭も頷いて言う。

 「うん…1人の空間も確保出来るし
 みんなと一緒にもなれるから…便利だよね

 エリカちゃんに会いたかったら……
 騎士様に声掛けて来てもらうか
 私達が行くか、決めれば良いだけよね」

 鈴蘭のセリフに頷きつつも、牡丹が現在進行形で1番困っていることを口にする。

 「住む場所は確保されたと思って良いから…
 次は…守護騎士様って存在よね
 確か…皇子様がなるモノらしいけど」

 牡丹のセリフに、百合が不安そうに言う。

 「聖女って内在する《魔力量》が多いし
 その《魔力量》を子供に受け継ぐ《力》が
 あるって言ってたよね」

 自分達が狙われる存在であることを改めて思い出し、蘭が自分を無意識に抱き締めてブルッと身体を震わせて言う。

 「それって、皇族に取り込まれることが
 基本だったってコトよね」

 そんな蘭の反応に、牡丹が肩を竦めながら言う。

 「でも…私は…騎士様達の会話を
 聞いたのよねぇ…………」

 牡丹のセリフに、撫子が身を乗り出すようにして聞く。

 「なにを聞いたの?」

 撫子と同じように、鈴蘭、百合、蘭、桔梗が無意識に、その内容にを聞き逃すまいと上半身を寄せる。
 そんな中、牡丹は自分が聞いた話しを口にする。

 「公爵や侯爵、辺境伯爵とかって
 聖女の血を引いているから《魔力量》が
 多いんだって…………」

 牡丹の言葉に、撫子が小首を傾げて言う。

 「それって、その辺りの貴族を
 選んだってコト?」

 室内にいる騎士達は、聖女候補のそんな会話を聞いていた。
 ドラゴニア帝国というだけあって、皇族や上位の貴族は殆どがドラゴニアンやエルフや獣人なので、耳がとても良いのだ。

 勿論、国民の大半もドラゴニアンの血を引いた者達は多数いるが、その大半は獣人だった。
 当然、このドラゴニア帝国には、生粋の人間は存在していなかった。

 そして、ギデオンやレギオンも御他分に洩れず、獣人としての血が強い為に耳は良かった。
 だから、聖女候補達の会話に、静かに笑って目線で会話をしていた。

 「(ねぇーレギオン、聖女候補の《召還》で
 呼ばれた姫君達って、可愛いよねぇ~……)」

 「(うん、あのくらいの年頃の皇女や
 上位貴族の令嬢だと、まず話題にするのは
 宝石とかドレスとか珍しい香料や男だろ)」

 「(ああ、更にスレた女になると
 どの家なら贅沢ができるか?
 何処の領地か実入りが良いか?
 はてには、その家の家宝には
 どんなモノがあるかとかだろ)」

 「(だよなぁ~…それ考えると、姫君と
 一緒に《召還》された聖女候補達は……)」

 「(うん、どの子も聖女のほうだと思うな
 あんなに、贅沢を望まないなんてな……)」

 皇女や上位貴族の姫君達の贅沢さや我が儘さを、身をもって知っているギデオンやレギオンや騎士達は、聖女候補達を優しい瞳で心よく見ていられた。
 その視線の先では、楽しそうにラノベで良くあるパターンの話しに、聖女候補達は興じていた。

 そして、今も撫子の言葉に、牡丹もちょっと考えつつも頷いて答えていた。
 
 「…………たぶんね、確かラノベって
 身近な騎士様とか皇子様とか神官様と
 結ばれるって設定が多かったよね」

 その言葉に、桔梗が突っ込みを入れる。

 「ふふ…それって、仕事が忙しい人達が
 半径数メートルで結婚相手を決めるって
 アレと一緒じゃないの」

 蘭も、同感という感じで頷く。

 「そうなるねぇ」

 そんな中、撫子は、唐突に言い出す。

 「ちょっと、いやかなり打算的なんだけど
 私としては、面倒ごとが多い正室じゃなくて
 側室になりたいなぁ~って思うのよ」

 そのセリフを聞いた百合は、やや引込み思案なだけに、そういう大勢が集まる場所に行かなければならない立場はゴメンだと思ってしまう。

 「うんうん、それってわかるわ」

 そんな撫子や百合の言葉に、信じらんなぁ~いというニュアンスを込めて、蘭か言う。

 「ええーなんでぇ~……私は、自分以外の
 奥さんがいるなんて、絶対に嫌よ」

 そのセリフに、牡丹が指を立てて、ちっちっちっちっと言ってから、噛んで含めるように言う。

 「あのね、考えてみてよ……貴族って
 夜会やお茶会に親族婚姻族関係のお付き合い

 寄子(よりこ)と寄親(よりおや)の関係に
 領地経営って、それはもう色々とあるのよ」

 そのセリフに、撫子も重ねて言う。

 「そうよねぇ~……その義務を負うのは
 当主と、その正室と後継者って
 決まっているもんねぇ~…………」

 桔梗が、更に続けて言う。

 「でも、側室には、その権利は
 ほとんど無いのよ」

 そのセリフに、百合が自分の希望観測も含めて言う。

 「それって、イコール貴族の義務を
 負わなくてもイイってコトよね」

 そんな会話をする聖女候補達に、ギデオンとレギオンはどこか温く優しい視線で、見守りつつも、視線だけの会話をするのだった。







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