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015★ソウマはタケルの幼馴染み
しおりを挟むタケルと正式な【契約】を交わしたコトで、守護結界に守られた守護地の地域住人という認識を全ての生き物に刷り込んだソウマは、にこにこと上機嫌で言う。
「そう言えば、タケルを落とし穴に落とした者達はどうします?」
ソウマに聞かれたタケルは、小首を傾げてちょっと考える仕草をしてから、ポツリと言う。
「えー…なんか面倒くさいから、放置で良いんじゃないかなぁ………俺達は、ここで遊んでいたってことにしようぜ。ソウマだって、この間亡くなったソウヤさんのひとり息子ってことにしたんだしさ」
タケルは、ソウマが繭玉から羽化した妖魔だと言う認識と同時に、父親・マサルの友人ソウヤのひとり息子だというモノがあることに気付く。
それもつい最近、守護地の境界線の外で徘徊していた、在来のツキノワグマと呼ばれるモノが凶悪に変異した、レッドベアに襲われて亡くなった為に、マサルが引き取ったということになっていた。
それが、この守護地にある集落での、ソウマの現在の立ち位置なのだ。
ちなみに、ツキノワグマと呼ばれていた熊はかなりの変異をしている。
毛並みが燃えるような赤色に変色しているモノを、レッドベアと読んでいる。
色によってそれぞれ変異特性があり、レッドベアは従来のツキノワグマよりもかなり狂暴になっている上に、一度獲物としたモノへの執着心がもの凄く強いのだ。
また、変異の際に被毛の色合いが青黒い色や紫系の色を帯びたツキノワグマは、まずその牙や爪に毒を持つ個体となっていた。
閑話休題
タケルは自分の中にある、ソウマに関する記憶に納得して無意識に頷く。
ソウマって、流石妖魔だけあって、器用なことするよなぁ~…
ほんの短時間で、なんの違和感もなく、そうだったってコトにしちまうんだから
こういうのって、確か記憶の改ざんとか言うヤツだったよなぁ
でも、俺にもみんなにも無害なら、いっか…バレなきゃ良いだけだし
タケルは自分の記憶だけは上書きのように書き換えられることなく、新たな情報として足されたモノを認識して、再度無意識に頷く。
そんな中、タケルが落とし穴に落とされた負傷したことに対して、なんの報復もしないことに、ソウマは少し不服そうにしつつポツリと言う。
「タケルがそれで良いなら………」
あははは………俺が怪我したことが気に入らないんだな
でも、俺が怪我した傷跡、もう無いんだよなぁ
たぶん…いや、間違いなくソウマが治癒してくれたんだろうな
やや不服そうなソウマに、タケルは肩を竦めて言う。
「だって、ほら…両手に負った切り傷も、綺麗に消えているし………」
そう言って、タケルはソウマに両の掌を見せて、ヒラヒラとさせる。
タケルの掌は、傷跡などひとつもない綺麗なものだった。
その掌を見て、傷跡が無いことを満足そうにしながらも、タケルを傷付けられたコトを憤るソウマは口中で何事かをブツブツと呟く。
そんなソウマに、タケルはクスクスと笑う。
「ついでに言えば、俺達を探しに来る大人達がアレを見付けたら、怒られるのはあいつらだろ。悪さしなければ、あんなに監視されないのになぁ………そう思わないか?」
タケルの言葉に、それも一理あるかと、ソウマは頷く。
「そうですね。俺達は、落とし穴に気付かず、ここで遊んでいたってことにしましょうか」
ようやく納得したらしいソウマに、タケルは確認するように問い掛ける。
「ソウマは、親父の友人であるソウヤさんのひとり息子ってことで良いんだよな。母親は、産後の肥立ちが悪くて、亡くなっている?」
タケルは、そういう設定になっているんだよな、と言外に問い掛ける。
集落全てにそういう認識で、記憶に刷り込んだソウマはコクッと頷く。
「はい、それであってます」
頷いたソウマに、タケルは頷く。
「了解。ソウマは俺の幼馴染みで、今は一緒に住んでいる。母さんは妹達を育てるのに手一杯で、今は俺達への感心が薄いからな。親父も、最近忙しそうだしなぁ………」
「ですねぇ………」
「あと、なんで俺にそんな風に丁寧に話すんだ?」
同じ年の設定じゃなかったか?との問いかけに、ソウマがクスッと微笑って言う。
「父さん(ということになっている、ソウヤ)が、こう言う話し方をしていたからですよ」
父親にした男の行動と言動を見習った結果、今の喋り方になったと言うことらしい。
「そっか……確かに、ソウヤさんはそういう話し方していた気がするわ」
「でしょ………一応、父さん(ということになっている、ソウヤ)が持っていたモノは
色々と習得してますよ………例えば…………」
ソウヤが習得していた武術と呼ばれるモノなども、空間の記憶から読みとって使えることなどを話していたソウマが、突然ピクッとする。
「どうした?」
ソウマの様子に気付いたタケルが問い掛ければ、ソウマが肩を竦める。
「どうやら、私の父親(ということになっている、ソウヤ)を殺して逃げたレッドベアが境界線の外側をうろついているようです。変異しようと、元がこの地域の生き物なので、守護地の守護結界があっても、何かを感知しているのでしょう。喰らいはぐった獲物を探しているようです。レッドベアは獲物と見定めたモノに対しての執着が凄いですからね。いまだに探しているようですね」
ソウマの言葉に、タケルは頷く。
「そう言えば、熊という生き物は、もとから自分の獲物としたモノに執着するって聞いたことがある。たとえ、変異していようと、その習性は変わらないということだな。いや、かえってその習性が増幅されて、執着心が増しているようだな」
タケルの言葉に頷き、ソウマは困ったように溜め息を吐く。
「ええ…そのようですね……はぁ~…どうやら、この守護地の守護結界が少し緩んでいるようですね………フム……だが、その緩みは私という存在のセイではなさそうですね…………誰かが、悪意をもって守護地の中へとケガレを持ち込んだようです………このままでは、集落へと入り込まれて、守護結界が壊れてしまいますね」
ソウマの言葉に、タケルも苦い顔をする。
父親の友人であるソウヤが、守護地の境界線の直ぐ近くでレッドベアに襲われたことからしておかしいと、大人達が喋っていたことはタケルも知っていた。
ここに来て、それが人為的らしいことを、ソウマの言葉から知り、タケルは迷う。
何故なら、今、集落は久しぶりのベビーラッシュなのだ。
子供を産んだばかりの子育て中から、孕みの女性まで、集落には多く居るのだ。
そんな中に、変異種のレッドベアが入り込んだら、惨事間違いなしである。
だからと言って、子供の自分やソウヤだけでどうにかするということはできない。
いや、ソウマが妖魔としての【力】を使えば、どうにかするのは簡単だろう。
だが、ソウヤのひとり息子という記憶を刷り込んであるので、下手なことはできないのだ。
「よしっ……それじゃ、ちょっと境界線まで冒険した、レッドベアが見えたって言っとけば良いかな」
タケルは、たまに境界線近くまで行くことがあるので、言葉には真実味があるのだ。
ちなみに、ちょこちょこと守護地の境界線付近を見に行くのは、野生の果物などがなっているのを採取する為だったりする。
今の時期は、ベリー系が良く採取できるのだ。
もう少しすると、ドングリやクルミなどの果実がたわわに実り始めるので、何時頃から採取できるか?と、指折りしているタケルだったりする。
「それが一番無難でしょうねぇ………で、私達は、これからどうします?」
時間的に、境界線付近まで行くには全然足りないので、この後どうしようかと悩む。
「とりあえず、この大樹の穴から出て、周辺で何か採取できないか探そうぜ」
探しに来た大人達に対して、途中に落とし穴があるコトを知らないことにする為に、タケルはソウマを誘って、周囲探索を提案する。
「それも良いですね。少し距離はありますが、上手く行けば蜂蜜の採取ができますよ。結構大きな蜂の巣があるみたいです」
「んじゃ、蜂蜜を採取しようか……幸い、ここには空の壷もあることだしな」
タケルが、大樹の穴を隠れ家的なモノとしていたことで、そういうモノが大樹の穴の中には幾つもあるのだ。
「それじゃ、蜂蜜の採取にいきましょう」
空の壷を手にしたソウマの言葉に頷き、タケルも同じくらいの空の壷を手にして、蜂蜜採取へと向かった。
空の壷に蜂蜜を採取してニコニコしている2人を、タケルの父親・マサルが迎えに来たのは、日が暮れきった頃だった。
ちなみに、落とし穴を掘った年上の少年達は、大人達にこってりと叱られたことは確かな事実だった。
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