妖魔戦輝

ブラックベリィ

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016★タケルとソウマの日常

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 タケルとソウマは、蜂蜜入りの壷を持ち帰ったコトで、大人達に褒められた。
 甘いモノは、森林の中にある果実の恵みくらいしかない現在、とても貴重だからだ。
 内緒で自分達だけで食べたりせずに、集落のみなに分け隔てなく配るタケルとソウマにの鷹揚おうようさを微笑ほほえましく見ていた。

 そんな中、タケルとソウマは、守護地の境界線の外側で、レッドベアが取り逃がした獲物を探して徘徊していることを告げた。
 その場所を、特にソウマがくわしく説明すれば、狩猟や戦闘経験がある男達が苦虫を噛み潰したかのような表情になる。

 2人から報告を受けた大人達は、そのまま別室へと行ってしまう。
 その時に、大人達がレッドベアを討伐するまで、絶対に境界線の近くには行かないようにと言われたのは確かなことだった。

 いまだ子供であるタケルと、同じくらいの少年に擬態しているソウマは、守護結界を緩めてしまうようなケガレのことは、言えないでいた。
 それでも、ケガレのことが気になったタケルは、ソウマと相談し、お婆様に話してみようということになった。

 タケルも、ソウマという友達を得たことで、普通の子供達のように、集落の中で遊び、学ぶことが増えた。
 それは、ひとえに、お婆様にケガレの存在を教えたコトからきていた。

 そう、祖先にあたる巫女姫の系譜に出る、特別な【力】を継承していると判断されたのだ。
 ゆえにタケルとソウマは、特殊な古武術や祝詞のりとなど、多岐たきにわたって学ぶことがされた。

 集落の期待を背負った存在として、今まで以上に大切にされたことは言うまでもない。
 同時に、落とし穴などを掘った年上の悪ガキ達からは、より一層疎まれたのもまた確かな事実だった。

 そんな悪ガキ達の目に余る行動に、大人達は一抹の不安も感じていた。
 何故なら、今はまだ守護地に張られた守護結界に守られているが、いずれはそれも消えると考えられているからだ。

 何と言っても、誰がやったかは判らないままだが、守護地の中へとケガレを持ち込まれて、守護結界が緩んだという事実がある。
 もしまた、同じようにケガレを持ち込まれて、守護結界が溶け崩れてしまう可能性は捨てきれないからだ。

 それゆえに、本来ならば女性に受け継がれるモノまで、タケルは学ぶハメになっていたのは、本人の知らない事実だったりする。

 勿論、付き合いの良いソウマが常に側にいるので、タケルは本来なら必要のない習い事でも、かなり楽し気に学んでいた。

 新しいことを知る楽しみがあるので、多少の時間拘束によるきつさを何とも思っていないタケルである。
 そして、タケルとソウマは、今日も今日とて様々な剣技や祝詞のりとなどを教わっていた。

「ふふふふ………2人とも、だいぶ型がさまになるようになったな。教えた型を流れるようにとれるようになって、お婆様から習った祝詞のりとを唱えられるようになったら…………もしかしたら【神降ろし】ができるかもしれないなぁ………」

 もはや夢物語として語られる【神降ろし】だが、巫女姫はソレ【神降ろし】をして、今現在タケル達が隠れ住む守護地に守護結界を張ったことは口伝くでんとして伝えられていた。

 今はもう風化によって、機能するモノは無くなってしまったが、ソーラー発電や風力発電という技術が存在していたという名残りのモノはあった。
 現在は、遥か古来からある原始的な方法のひとつである、タイマツでかりをともしているのが大半だった。

 勿論、科学文明の崩壊と共に、新たに移行した精神文明の到来から、夢物語でしかなかった、魔法のような【力】を発現する者もチラホラと出て来ていた。
 大半は取るに足らないような【力】でしかないが、それでもモノは使いようなのだ。

 いわゆる光魔法と呼ばれるモノを使って、水晶や硝子ガラスに【力】を込めるコトで、かりをともし、夜でも作業ができるようになっていた。
 じょじょに新しい環境へと移行している世界にあわせて、人類も他の生き物も変化して行っているのだ。

 その中でも、そういう特殊な【力】を発現しやすい血統は、やはりあるのだ。
 そして、タケルの血統は巫女姫の血筋なので、そういうまれなる【力】を発現する者が多く出ていたのだ。

 ちなみに、そういう【力】を発現した者は、守護地の集落から出ることを許されていなかったりする。
 幸いなのは、タケルの父親であるマサルは、その手の【力】を発現していなかったので、集落のリーダーとして、別の集落に物々交換に行けたのだ。

 ちなみに、集落でもっとも喜ばれるのは、緑の手と呼ばれる植物などを育てる【力】が発現した者だったりする。
 勿論、水を出せる者も喜ばれていた。

 タケルの住んでいる集落は、いまだにちゃんと水田と呼ばれるモノが存在し、主食は相も変わらずお米だった。
 勿論、小麦や大麦などもちゃんと穀類として作ることができていた。

 ある意味で、タケルが暮らす集落は、人類のタイムカプセルのような集落なのだ。
 現在は、他の地域の人間達に発見されていない為、弱肉強食に晒されていないが、何時そうなるかわからないという危機感を持つ者達も存在していた。

 そして、本来なら人類にとってもっとも天敵となる、強大な【力】を有する妖魔とタケルは無自覚なまま【契約】しているので、今日も今日とてのほほんとしていた。

「ソウマぁ~………今日やるコトは終わったから、あそこに行こうぜぇ~……」

 楽し気にそういうタケルに、ソウマはニコニコしながら頷く。

「そうですねぇ………あっちに言ったら、今日は何を作りましょうかねぇ………」

 年上や年下の少年や少女と遊ぶことの無い2人は、手を繋いで何時もの大樹に穴がある場所へと向かう。
 そんな2人に『また何時もの場所に行くのか』という生温かい視線で見送るだけだった。

 基本的に、タケルとソウマの2人は、大人達の言葉を忠実に守るので、わりと野放しなのだ。
 勿論、そのな2人の後を追い駆けて悪さをしようと企む悪ガキ達には、ちゃんと監視が付いているので、2人が悪意に晒されることは無かった。

 当然、そういうのをちゃんと察知しているソウマは、タケルが危険が及ばないようにと、大樹に開いた空間に入ったと同時に、空間遮蔽を行っていたりする。
 そんな過保護なソウマに、タケルは苦笑いをしつつ、何時も感謝していた。

「ありがとうな、ソウマ」

「いえいえ、これくらい当然ですよ。私は、タケルに…もう2度と怪我をして欲しくないんですよ。貴方の貴重な鮮血を大地に吸わせるなど、もってのほかです」

 相変わらず、小難しい言葉遣いをするソウマに、タケルは苦笑いする。

「そんなの気にしなくて良いのに……あんときは、まだ、お前繭玉だったし……」

「それでも、タケルが怪我をした時、あの程度しかできなかったのが許せないんです」

「ソウマって、理想が高いよなぁ……俺なんて、平和に暮らせれば良いってぐらいにしか考えてないのにさぁ………」

 守護地から出たことの無いタケルは、その外がどのくらい危険かということを知らない。
 勿論、大人達からじょじょに勉強中に教えられているが、過度に外に対して好奇心を持たないように、情報制限されていたのは確かな事実だった。









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