上 下
134 / 183

0133★蒼珠の異世界トリップ見解

しおりを挟む



 蒼珠の説明に、朱螺は自分と遭遇した時の状況を思い出して頷く。

 〔そうか 言葉の端々に 自分の意思ではないと
 言っていたな 男に買われたと‥ 性奴隷として
 自由を奪われ‥‥ ぅん? なにか引っ掛かるが

 まぁ 気になることは色々とあるが‥‥ 蒼珠は
 もしも その男と私を選ぶことがあったら‥‥‥
 私を選ぶと言ってくれたのを信じよう

 だが やはり気になる 聞いておくか‥‥‥〕

 『なるほど だから 全裸で震えていたのか‥‥‥
 私と出逢った時が この世界に 蒼珠が堕ちて来た
 時と思って良いのかな?』

 朱螺からの質問に、蒼珠は首を振る。

 「いや‥朱螺に出逢ったのは‥たぶん‥‥3度目の
 気絶の時だと思う‥‥‥
 他にも、変な異世界トリップが‥‥‥‥」

 蒼珠から聞きなれない単語を聞いた朱螺は、話しをぶった切るように訊き返す。

 『異世界とりっぷ? とは なんだ?』

 朱螺からの質問に、蒼珠はちょっと考える。

 えぇ~とぉ‥‥トリップも通じないのかぁ‥‥‥
 異世界トリップって言葉を、普通になんの疑問も
 無いまま使ってたけど‥‥どう説明すれば良い?

 いや、小説は書物に変換されて、通じていたけど
 トリップって‥たしか‥旅行って意味だったよな

 「ぅん~とぉ‥娯楽的な読み物に、何かの拍子に
 異世界へと堕ちるっていう話しがあるんだけどぉ

 そういうのを、異世界トリップって言うんだ‥‥
 あっ‥‥トリップは‥旅行って意味があるから‥
 まぁ‥直訳すれば、異世界への旅行かな?

 ようするに、時空間の移動かな? なぁ‥朱螺‥
 こっちには、平行世界理論ってあるのか?」

 『平行世界理論?』

 「多元宇宙理論とも言うんだけどさ、後は‥‥
 パラレルワールドかな?」

 『そういう言葉は 聞いた覚えはないが それは
 どういったことを言うモノなのだ?』

 「ぅん~とぉ‥‥簡単に言うと‥1つの星の上に
 幾千幾万にも重なった、異なった世界かな?

 ある時点から、生態系や文明文化なんかの進化や
 退化が起こって、次元が異なる世界‥‥‥

 俺が所属していた世界は、物質文明で、科学へと
 進んだから‥‥魔法や魔術は無きに等しい世界だ

 朱螺が生まれ育った、この世界は、どうやら精神
 文明の方へと進化して《魔力》という名の意思の
 《力》を発達させた世界だと思う

 だから、幾千幾万の層にも、世界が分かれている
 けど、ごくたまに、その世界を隔てる膜のような
 層を通過してしまうことがあるんだと思う

 そういう現象を、異世界トリップって言うんじゃ
 ないかな? まぁ‥俺の見解だけどさ‥‥‥

 1つの星の上に存在するから、その全ての世界を
 隔てる膜が何かの拍子にとても薄くなったり‥‥

 小さな穴が開いたりして、本来所属する世界から
 別の世界に堕ちるんだと思うんだ

 俺の世界には、魔族や魔物とかいう単語もあるし
 なにより、龍神という‥‥基本‥水を司る神様を
 信仰していたりするから‥‥‥

 朱螺は、水龍族の血を引いてるんだろ‥‥‥‥

 遥か遠い昔に、そういう膜とか層みたいなモノが
 薄くなったり、穴が開いて、お互いが交流できる
 時期があったのかも知れないなって思うな」

 蒼珠の説明に、朱螺は興味深そうに頷く。

 『なるほど 確かに そういう風に説明されると
 なんとなくだが 納得できる部分があるな

 たしかに 遥か遠い過去世に この世界と蒼珠の
 所属していた世界に交流があったのかもしれぬな

 だから 蒼珠は私の銀鱗姿を好んでくれるのだな』

 妙な納得をしている朱螺に、蒼珠は肩を竦める。

 「あぁ‥‥だから‥‥龍神様みたいで‥‥朱螺の
 銀鱗姿は好きだ‥なんと言っても‥綺麗だし

 ‥‥って、ことで、話しを戻すぞ

 本当につい最近知ったことなんだけど‥‥‥
 俺の父親の血統っていうのが‥‥いわゆる‥

 魔や神と呼ばれるような‥《力》があるモノの
 血筋を引いているらしいんだよな

 つっても、もう、ほとんどその《力》は薄れて
 微かになっちまってるけど‥‥‥‥

 たぶん、俺の異世界トリップは、それが原因じゃ
 ないかと思うんだ‥‥‥

 父親に『お前も、血族である私(父)や義妹に
 会ったことで血の覚醒が訪れているから‥‥‥

 無闇矢鱈に、対象を絞らずに、強く乞い願ったり
 してはいけない。取り返しのつかないことなる』

 って、言われていたんだ

 なのに、俺を大金で買ったとか言う、あの男(明宏)
 のすることが、おぞましくて乞い願っちまった

 誰か、助けてくれって‥‥‥

 主神である天照大神でも‥水の神の龍神でもなく‥
 誰かって‥願ったから‥変な異世界トリップ‥‥‥

 中途半端な‥状態の‥‥‥うぐっ‥‥‥」

 喋っている最中に、明宏やその部下の手で嬲られたことを思い出した蒼珠は、そのおぞましさを思い出して、躯を震わせた。





しおりを挟む

処理中です...