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第1章 新しいバイトが………
042★桜の知らない裏事情
しおりを挟む桜は、迷いひとつ無く、普通の人間として生きるコトよりも、白夜の妹として、紅夜の恋人として生きる道を選んだのだ。
桜の姉・桃はというと、やはり白夜から自分達の一族にまつわる告白を受けて、一族へと加わる為の《儀式》を受けたのだが………。
突然、進行性の白血病に侵されてしまい、一族へと変化が始まる前に、死亡してしまったのだ。
それゆえに、白夜は自分の決断がもう少し早く、愛する桃への告白をさっさとして、一族に加えていれば助かったのに、という後悔が付いてまわり、桃の妹・桜を一族に加えるには少し………いや、かなり無理があると承知で………リスクがあると思いつつも《儀式》を執り行い、一族に迎え入れたのだ。
白夜の妻・桃の妹・桜というコトと、紅夜の恋人というコトで、一族に加えられたのは良いのだが、それには多大な代償が必要だったのだ。
そう、桜は一族に変化するのに必要なだけの《気》を有していない上、まだ成長途中であった桜を、無理矢理一族に加えたコトにより、白夜と紅夜は桜の変化を支える為に、良質な《気》を求めて奔走するコトとなったのだ。
なぜなら、一族への変化が始まってから《生気》が枯渇したりすると、一族への変化と飢餓感のせめぎあいに耐えられず、人間を見境無く襲う、異形の化け物へと様変わりしてしまうからである。
そうさせない為にも、白夜と紅夜は、完全に桜が一族の者へと変化し終えるまで、良質な《生気》を与え続けなけければならないのだ。
また、弱い桜を一族に加えたコトに反発している者達は、桜が完全に一族の者へと変化する前に、抹殺するコトを目論んで暗躍していたりする。
更には、白夜や紅夜達の一族を異端な魔性として、自分達は人間を護る者だと主張して、白夜達を抹殺する【狩る者】に狙われながらの活動を余儀なくされていた。
【狩る者】という外敵と、一族内の反発の目を盗んで、2人は《生気》を集めている。
その他に、特性や性質が似たり寄ったりだが、その習性は悪鬼そのものという、まさしく人類の敵と言って過言の無い、吸血鬼どもとも、獲物(良質な《生気》を持つ者)を奪い合わなければならなくなってしまったのだ。
末っ子の紅夜を可愛がっている一部の兄や姉達も、その為に現在は屋敷に居ない。
しかし、そんな複雑な事情を全然教えられていない桜は、今回の白夜の長期旅行が、今度書く物語りの為の取材旅行だと思っていた。
実際には、一族に加えた桜の変化を促(うなが)し、支える為の良質な《生気》を大量に求めての旅行であった。
一方、桜の恋人である紅夜は、俳優という職業を生かして、白夜同様に、桜に与える為の《生気》をかき集めていた。
異形の化け物としない為にも、本格的な変化に入る前に、変化に必要な量を、桜に与えなければならないがゆえの、苦渋の選択だった。
そんなコトを知らない桜は、唯々寂しくて、愛犬を連れてのお散歩に出てしまったのだ。
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