お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………

ブラックベリィ

文字の大きさ
93 / 446
第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事

092★欲しいモノは無いのに………

しおりを挟む
 「明日があるだろう
  朝食の時にデザートとして
  出してやるからよ
  そのくらいにしとけよ

  本当はさぁ……
  寝る前に食べるのは
  あまり胃に良く無いん
  だからな

  最低限、食後3時間は
  起きていないとなぁ

  胃や肝臓の負担に
  なるんだよなぁ………」

 そう言いながら、和輝は桜の頭を撫でる。
 それだけで、和輝の思いやりの有る暖かい《生気》が、ふんわりと桜の全身を包む。
 桜を心配する和輝の気持ちに反応して、常時発散されている《生気》が、無意識の内に、桜の全身に降り注がれる。

 和輝のそれは、純粋に桜を心配する正の優しい思いだが、これが反転し、ねたみやそねみ、嫉妬などという負の感情を伴うモノになると、その対象者に悪影響を及ぼすモノとなるのだ。

 そして、通常はそういうモノに気付かないのだが、人間の常時発する《生気》に対して、敏感に反応する異種族へと変化し始めている桜は、ことの他もソレを顕著に感じるのだった。

 それだけ純粋な和輝の正の暖かい《生気》に包まれた桜は、無意識にうっとりとして浸ってしまう。

 すごく気持ちが良いわ
 ふんわりと暖かくて…まるで

 そう…やわらかく、そっと
 抱き締められているよう
 
 飼い主に喉を撫でられて、気持ち良さそうに双眸を細め、喉を鳴らす猫のような表情で、桜はうっとりする。

 「どうした? 桜?
  ぅん? 少しは眠気が
  戻って来たか?

  だったら、歯磨きして
  横になった方が良いな

  少しでも身体を楽にして
  疲労回復につとめような」

 和輝にそう声を掛けられた桜は、無意識に小さなあくびを零れ落とす。

 「あ~ふ……うん…
  なんだか和輝が居るって
  安心したら、眠くなって
  きちゃったみたい

  あっ…今、和輝の着替え
  持って来る……」

 そう言い、無意識にユラリと立ち上がり、桜はリビングから見て左側。
 蓬莱家の爺やさんが、当主・白夜様の居室だと言った方へと向かう。
 爺やの言葉もあり、そちらへ行くのもはばかれるかと思った和輝は、一応桜へと声を掛ける。

 「桜、ひとりで大丈夫か?」

 「……うん……」

 ちょっとばかりおぼつかない足取りで、左側の部屋へとヨロヨロと入るのを見届けた和輝は、食べ終わった皿やカップを片付け、ドーナツやクッキーをタッパーやビニール袋へと入れてしまった。
 一応、食器洗浄機もあるのだが、使用した食器が少なかったので、手洗いの方が早いと判断し、さっさと洗ってしまう。
 そして、きちんと水切りも存在していたので、そこに入れる。

 どれもこれも、ほとんど使用していた形跡がないので、和輝は大半が本邸から持ち込み、本邸へと使用人が片付けていたと判断した。
 勿論、和輝の思った通りで、蓬莱家の者はほとん炊事洗濯などの家事はしたことが無かったりする。
 それでも、愛犬のボルゾイの為にご飯を炊いたり、肉を焼いたりぐらいはしていたのも、また確かな事実だった。

 和輝が、食器と残ったドーナツやクッキーを片付け、テーブルの上を拭いていると、桜が和輝用の着替えとバスタオルを持って、リビングに戻って来た。

 「和輝、着替えを持って来たわ」

 開口一番の言葉に、和輝は肩を竦めて答える。

 「サンキュー…桜…
  こっちもちょうど
  片付け終わったところだ

  さて、それじゃぁ桜は
  歯磨きしていてくれ
  俺はシャワーを浴びてくるから

  っと、そうだった………
  未使用のハブラシはあるか?
  無ければ、取りに行って来るけど」

 和輝の言葉に小首を傾げてから、桜は着替えバスタオルをテーブルに置き、キッチンの引き出しをゴソゴソと探り出す。

 「たしか…紅夜が持ってきて
  ここに数本の予備を入れていたはず
  ………あった、これで良いか?」










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...