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第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事
188★桜の変態…かりそめの真族へ
しおりを挟む白夜の双牙で穿たれた2つの穴は、鮮血色をして盛り上がっているが、液体独特の表面張力によって、そのひと雫を零すこともなかった。
そのギリギリで零れおちない鮮血が放つ《生気》に満ちた甘い香りに誘われて、桜は和輝の首筋に顔を埋めた。
唇が触れた瞬間、首筋の2つの傷跡に盛り上がっていた血溜まりの均衡が崩れ《生気》に溢れた鮮血が、桜の口腔へとツルリと滑り込み、口の中に《生気》が溢れかえり、盛大に広がる。
その瞬間、癒されない飢餓感にさいなまれていた桜は、我を忘れた。
あぁ……た…まらない……
すごいエナジーの塊りが
私の…口の…中で…踊る
溢れる暖かい血潮を口腔に感じた桜は、夢中になって啜りあげる。
が、真族の本家本元である白夜の一啜りに匹敵するほど、桜が和輝の血液を啜るには、かなりの労力が必要だった。
まだまだ、変化に入ったばかりの桜では、それが限界なのだ。
啜るそばから、血潮はエナジーへと変換され、桜の身体へと浸透する。
膨大な量の《気》と少量の《精》と、血液から造られるエナジーによって、細胞の1つ1つが軋みを上げて変化する。
変化する痛みと、極上のエナジーがぶつかり合い、その変化の衝撃を中和していた。
和輝の血潮を啜り上げていた桜が、自身の急激な変態に反応して顔をガバッと上げ、身をのけ反らせる。
その姿は、先刻の白夜に良く似ていた。
人間でいうところの犬歯がグイッとのびて、その愛らしい唇の両端からは白く鋭い牙が覗き、双眸は赤光を放っていた。
桜の変態を目の当たりにした白夜は、ソッと胸を撫で下ろしていた。
一時的であれ、ここまで
ほぼ完璧に変態しているなら
血に狂った凶獣となるコトは
ないな
それもこれも、この子のお陰だ
後日、桜が完全に真族と
変化し終えたら………
何らかの理由を付けて
この子に慰労金を
与えねばならんな
しかし、桜は本当に
《運》に恵まれたな
《天運》というモノを
握っていたのだろう
溢れかえるエナジーがもたらす法悦感に酔いしれる桜を観察しながら、白夜は和輝の顔色を観察する。
ふむ、流石に
少し顔色が良くないな
まぁ…若いから……
このまま熟睡すれば
かなり戻るだろう
今はこの子よりも
桜の変異の方が重要だ
今まで集めた《気》と
この子から得た
エナジーを与えれば
しばらくは餓えるコトも
ないだろう
それに、もう一度
この子の《精》を
啜らせるという
手もある
「桜……気分はどうだ?
落ち着いたなら
私が集めた《気》を
与えよう
勿論、さっきこの子から
取ったエナジーも
お前に全部やろう」
そう言いながら、白夜は桜の頬に手をそえ、自分の方を向かせる。
相変わらず、双眸は鮮血のような赤光を放ち、唇からは少し牙を覗かせていた。
白夜は桜の姿に満足げな顔をしてから、その唇に口付けて、内包しているモノすべてを与えた。
白夜から与えられたエナジーの塊りに触発されて、飛んでいた意識が正常になる。
桜はハッとした表情になって、眠ったままの和輝を見下ろす。
眼下の少し青白い和輝の顔色に、桜はわたわたする。
「…ど……どうしよう」
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