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005★用意しておいた貨幣は、大銀貨までだったらしい
しおりを挟む俺は、その城壁の開かれた扉が閉じて、もとの城壁に戻ったコトを確認し、こころの中だけで浮遊の魔法の呪文を唱える。
そう、無詠唱ったヤツだ。
途端に引力の法則によって落下していた俺の身体は、ふわりと浮かぶ。
勿論、周囲に監視の目が無いコトは確認済みだ。
俺は自分の背中に翼をイメージし、幻影の翼をバサリッと広げる。
これで、自由に動きまわれるようになった。
「さて、それじゃ、隠し扉から地下の秘密部屋に入りますか
流石に、着の身着のままだからな
こんなロコツに見たことの無い姿をしていたら通報されちまう
それに、こっちの金も必要だからな………」
背中の翼を意識しながら、俺は断崖絶壁に設けられた、秘密の扉へと羽ばたく。
う~ん……流石に、久しぶり………というか前世ぶりだからなぁ………
ちゃんと意識していないと、失速しそうだな………
えぇ~とぉ~……たしか、この辺りに………っとあったあった
俺は、秘密の扉がある場所に辿り着き、その前に突き出た岩へと降り立つ。
「さて、転生したこの身体の血でも、扉は開くだろうか?」
不安から無意識に独り言が漏れる………と。
『だいじょぉ~ぶだいじょぉ~ぶ…お帰還(かえ)りなさい
我等が精霊の神子姫ビクトリアさま』
と、擬似生命と人格が与えられている扉の主が応えてくれた。
「ただいま、アース………中に入るわね」
『はい、ビクトリア様……秘密空間の中身の全てをお持ち下さい
そして、ワタクシメも、お連れ下さい』
俺は、擬似生命であるアースにニッと笑う。
「当然、お前も連れて行くよ
んじゃ、ちょっと中に入って取って来るよ」
そう言って、俺は右の人差し指の腹で左の手の平を縦にスッと軽く撫でる。
それだけで、左手の平に赤い鮮血の線が走る。
俺は、その鮮血を扉に付けて、内包する《魔力》を流す。
途端に、ただの崖面(がけっつら)にちゃんとした扉が出現し、左右に音も無く開かれる。
この中には、世に出せないようなモノが色々としまい込まれているのだ。
いわゆるロストマジックアイテムとかの類が………。
とりあえず、ココにはラノベ定番のマジックバッグにインベントリの細工が施された腕輪に耳飾を身に着けないとな。
それと、皮袋に入れられて放置された貨幣も当然持っていかないとな。
だって、俺、こっちの金もってないし………。
さて、皮袋の口を開いて確認したけど、白金貨に金貨に銀貨まではあるけど、鉄貨は無いんだよな。
まぁ良いか、城下町に行けば、銀貨を使えるところもあるだろうし………。
ただ、あまり目立ちたく無いから、城下町で買い物するかどうかは、その時次第だな。
それよりも、この髪と瞳の色、こっち基準にしないとなぁ………。
流石に、このまんまじゃ目立つ。
おとなしく、崖(がけ)からわざわざ落とされたも、まんまの姿でうろついたら、見付かる可能性は高いもんな。
フード被っていても、無理取られたらアウトだしな。
今、この国がどうなっているか、ぜぇ~んぜん理解(わか)って居ない状態で、むやみやたらとうろつくのは得策じゃないだろう。
そんなコトを考えながら、俺は両腕に嵌めたインベントリ機能のあるやや装飾過多な腕輪の中に、皮袋に詰まった白金貨に金貨を、まず放り込む。
そして、銀貨の皮袋から、銀貨を取り出して舌打ちする。
そう、銀貨は銀貨でも大銀貨だったから………。
とりあえず、周囲を見回しても、残っている皮袋はやはりコレだけだった。
一応、皮袋には何が入っているかの印はつけていたので、銀貨ひと袋しか用意してなかったようだ。
それも銀貨は銀貨でも、大銀貨で………。
いや、持ち出すときに楽なようにと、どこの都市でも使える様にという意味で、大銀貨だったんだろう………たぶん。
コレがここに在るのは知っていたけど、ここに貯めたのは俺じゃないんで、内容まではちゃんと把握していなかったのも事実である。
そして、俺は頭を抱える。
あっちゃー………コレ大銀貨だったよ
普通の銀貨は、たぶん無いな
はぁ~………やっぱり、これはここの城下町で買い物してってーのは
どうやっても、無理だな、大銀貨なんて掴んで出したら、まず目立つ
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