異世界転生は突然に

水晶

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 前世の夢だ。

 友達が沢山いた、あの頃。

 懐かしいなぁ・・・。

 会社に入ってからは、同期はすべてライバルって世界だった。

 ああ、この頃の僕に思い知らせてやりたい。

 これが、この瞬間が、どんなに幸せだったか・・・

 と、急に映像が乱れた。砂嵐のようになって、ぷつっと消える。視界が真っ白になった。

 ピー・・・ガシャンガシャン。

 機械音がした。

『目標、確認しました。接触します。マスターに引き継ぎます』

 聞いたことのあるような、ないような声。

 アンドロイドか?機械の音声だな。女の人か・・・って。

 あの時の・・・!

『思い出してもらえたかな?』

 男の人の、声。耳元に囁かれたような感じだ。深みのあるアルトボイス。50代くらいだろうか。

『どなたですか?』

『案内アンドロイドの総支配マスターだ。マスターとでも呼んでくれ』

ちょっと笑っているような雰囲気で、その人・・・マスターは言った。

『僕に何の用でしょう。もう僕は転生しているんですが』

シャットダウンしたのはお前のせいか?という疑問と嫌味を込めて言ったら、どうやら伝わったようだ。苦笑しているのが感じから伝わる。

『シャットダウンは私の設計ミスだ。今まで、君のような質問をする人はいなかったからね。自分で考える能力を持たせなかったんだよ』

やっぱり、あれは僕の質問のせいだったのか。そうじゃないかとはちらっと思ったんだが。

『だから今回からは、人工知能を持たせた。また君のような犠牲者を出す訳にはいかないからね』

犠牲者って・・・。今の所、そこまで苦労してない気がするけど。

 いや、十分してるか。荒野を空腹で歩き回るのは、結構きつかったし。

『そういえば、説明もしていなかったね。死因だけ簡単に言おう。君はヤンキーの乗った自転車に轢き殺されたんだよ』

へえ。自転車なのはうっすら分かってたけど、ヤンキーとは。納得しなくもないな。前くらい見ろよ馬鹿野郎。

 ていうか。

「結局マスターは、僕に何の用があって、呼んだんですか?わざわざ夢の中で」

体の感覚が、もうすぐ朝が来ると告げている。目が覚めて仕舞えば、夢は終わってしまう。当たり前だが。

『君に、あげられなかったギフトをあげようと思ってね。本来なら転生した時に、自分で選ぶはずなんだが』

何のことだ?

『もう君には選ぶ時間がないだろう?朝が近い。だから君には、全てをあげようと思う』

「どういう『機械が勝手にシャットダウンしたことに感謝するんじゃないかな。まあ、どう使うかは君次第』

尋ねようとしたら、遮られた。

『ステータスと唱えれば見れるよ。ありきたりだが、良いだろう?特殊能力も、全てつけておくよ』

だから、どういうことだ?さっぱり意味が分からない。

 すると、視界がどんどん暗くなり始めた。朝が来たようだ。

『じゃあ、楽しむといい。転生ライフ、謳歌するんだぞ』

その言葉を最後に、僕の夢は終わった。質問も出来ず、意味が分からないまま。
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