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目が覚めた。
何やら、地面が硬い。ゴツゴツしていて、岩のようだ。目の前は、見渡す限りの草原。サバンナとか、そんな感じ。いつだったかテレビで見たことあるような感じだ。ということは、顔に食い込んでいるのは草か? たわしの長いバージョンみたいなものが当たっているのが感じられる。割と痛い。
「ん・・・?」
じっと寝転がったまま、体中の感覚を確認する。横向きに寝転がっている。ベットに寝る感じで。正確には、左向き。左下だな。ここで仰向けとかうつ伏せじゃないのは突っ込まないほうがいいのか? どんな体勢だよ。とりあえずあちこちをちょっとずつ動かす。指先とかつま先ぴくぴくさせてみたりとかね。下手に大きく動いてどうにかなったら困るし。後ろに池とかあったりしないよな? 感じる限り、特に体に異常はない。痛みもないので傷などはないようだ。てか、死んだはずじゃないのかよ。なんで体があるんだ?天国か、ここ。
あれ?
起き上がろうと周りを手で探ったとき、違和感を覚えた。ちょんちょんって触れるぐらいしかできない。草に。地面に。気のせいか? 姿勢の問題か? いや、普通つくだろ。あまりにも違い過ぎる。それに、手が動かしづらい。肩が回らない。固くなったもんだ。運動不足か? いや、そんな感じでもないんだけどな・・・。
まあ後ろに池はないと確信できたので、違和感を払拭出来ないまま、立ち上がった。はずなのに・・・?
やたらと目線が低い。普段の膝立ちの高さもない。なのに、僕の足の裏はしっかりと地面についている。
何だ、この矛盾は?
体を見下ろした。すると。
腕はプニプニで、手はまんまる。足が短く、胴が長い。足も肉でむちむちだ。足がやたらと近くに見える。体も、つまめるくらいにどこも肉がついている。そして、前世の服がだぼだぼで体についていた。靴もすっかりぶかぶかだ。これじゃあまるで・・・幼児体型じゃないか。なんで気づかなかったんだろう。腕が短いわけだ。
ひょっとして・・・。
例のシャットダウンで、強制的に転移させられたのか?
それなら、辻褄が合う。こんな見たこともない訳が分からないところにいるのが。子供に戻ったのは訳がわからんが。いや、転移じゃなくて転生なのか? なら、子供に戻っているのも納得できる。たぶん。
辺りを見渡した。
はるか地平線まで、草原が続いている。さっき寝転がって見たのと同じ光景だ。若干視点は変わってるけども。僕の膝ぐらいまでしか伸びてないということは、割と草は短めな感じか。基準がよくわからないからなんとも言えないけど。ゴツゴツした岩が所々、地面から突き出している。ライオンが乗っていなかったことに安堵する。ここで肉食動物とか会っちゃったら終わりだな。
救いなのは、砂漠のようには暑くないこと。日差しは少し強いぐらいだが、気温はちょうどいい。これでもし暑かったら、熱中症などでポックリ逝ってしまう所だった。サバンナってやたらと暑いイメージがあるからな。なんとなく。転生したのにまた死んだとかいったら、本気でシャレにならないぞ。
いや、それ以前に。
どこだよ、ここ・・・?
そもそもサバンナってどこだ? アフリカっぽいイメージだけど、あってるのかどうか・・・。アメリカとか? ロシアとか? カナダとか? とりあえず広いとこしか思いつかない。高校の卒業旅行でアメリカ一周の旅に行ったが、こんな所はなかった。ロシアは知らない。行ったことがないから。カナダも同期は出張で行ってたが、僕は行かなかったから知らない。
というか、このままずっとここにいたら、飢え死にしてしまうのではないか? 見渡す限りに食べ物もなく、水もない。僕の目の届く限りだけど。適温とはいえ、体からは確実に水分が奪われているはず。人や家を探して、歩いた方が得策かもしれない。こんなところに家がある気もしないけどな。どこかでばったり誰かに出くわすかもしれないじゃないか。
よし。
僕はとりあえず適当に方角を定め、歩き始めた。まあ決めようがないから、その場でぐるぐる回ってなんとなく止まった方向にするっていう、適度じゃなくて手抜きの方の適当なわけだが。
歩いているうちに、奇妙なことに気づいた。
この荒野では、全く音がしないのだ。風は吹いているのに、草や木も確実に揺れているのに、こそりとも音がしない。葉が擦れ合っているのも見える。なのになぜか、音だけがない。
まだまだ謎が多いな。いや、もう謎しかないか。
てくてく、てくてく。
荒野を歩き続ける僕と対照的に、沈んでいく太陽。別に対照でもないか? 言ってみたかっただけだ。それより、ここの時間の過ぎるスピードが尋常じゃない。子供は時間を長く感じるんじゃなかったのか? 別に夢中になってたわけでもないんだが・・・。確か起きたときすでに昼を越えていた。それでも2時とかそこらだ。なのに、1時間も経った気がしないのにもう日が暮れる。また1つ、謎が増えた。
そんなことを考えながら歩く中でも、明るい空と夕焼けのコントラストは、小さな幸せを久しぶりに僕に与えてくれた。
日がすっかり沈み、辺りが薄暗くなってきた頃に、僕は小さな泉を見つけた。ぱっと見不純物も混じっていないし、触ってみる感じでは冷たくて綺麗な感じだ。飲めるかどうか?
ええいと勢いで手を丸めてコップのようにし、水をすくった。指の間からすり抜ける前に、ごくりと飲む。
あ、美味しい。
喉を通る久しぶりの水は、まるで神からの恵みのようだった。冷たく、涼やかに僕の喉を滑り落ちていく。思ったより体は水を欲していたようだ。このまま歩き続けていたら脱水症状とか危なかったかもしれないな。ギリギリセーフ。今も頭は冷静に考えているのに、手は別物のように動き続けている。体が本当に欲していた証拠だ。僕は貪るように、水を飲み続けた。
水だけで満腹になってから。
僕は、改めて考えた。ここはどこなのか、本当に転生したのか、音がない訳はどうなのか、時間が早いのはなぜか。
まず1つ目から行くと、ここがどこかはまだ不明。ひょっとしたら異世界かもしれないけど、今はまだ何もわからない。というか、異世界説に期待してるあたり僕にもちゃんと『男の浪漫』っていえる感じの思いがあるんだな。よかったよかった。いや、今の状況は全くよくないけども。まるでマンガか小説みたいだな。
2つ目、転生してしまったんだろうな。おそらく。死んだのに、今更元の環境に戻ったとか、そんな都合のいい話がある訳がない。そんな簡単に戻れるなら、機械に答えられない質問を投げて、みんながみんな戻っているだろう。第一日本にサバンナなんてないし。こんな土地があったらもっとマンションとか建てられて開拓されてるだろ。赤ちゃんからじゃないのはちょっと謎だけど。
3つ目、これが僕にとって一番の謎かもしれない。普通の小説はそこそこ読む方だった。でも、音がない世界など、読んだことも聞いたこともない。障害者の方々と一緒・・・ってわけでもなさそうなんだよな。勘だけど。友達に薦められた本の中にも、この事例はなかった。しばらく保留だな。おいおい明らかになってくるのを待つしかないだろう。
4つ目、もうわけがわからない。あまりにも非科学的すぎる。僕の体感速度の問題かもしれない。慣れなすぎる環境だから早く感じるとか。なんとでも言える。というわけで、本当かもわからないのでこれも保留。
分かるやつは分かるが、分かんないのは本当に分かんないな。
そういえば、今夜はたまたま泉に辿り着けたけれど、明日からはどうすべきか?人間は淡水だけでは1週間ほどしか生きられないらしい。塩があれば、また別らしいが。ここを動かないという選択肢もある。だがその場合、里や村を発見出来る可能性はなくなる。でもその分、生命線の水は保証される。どっちを取るかだな。人に発見して貰えば、飲み物だけでなく食べ物にもありつけるかもしれない。
どうしようか。迷いどころだな。
考えていると、急に強烈な眠気が襲ってきた。やはり子供の体だと、夜は眠くなるものなのだろう。単純に体力の消耗のせいかもしれないが。効率の悪い体だ、まったく。
ああ、早く自由な大人にまで成長したいものだ。
初めての1日目は、こうして終わった。
何やら、地面が硬い。ゴツゴツしていて、岩のようだ。目の前は、見渡す限りの草原。サバンナとか、そんな感じ。いつだったかテレビで見たことあるような感じだ。ということは、顔に食い込んでいるのは草か? たわしの長いバージョンみたいなものが当たっているのが感じられる。割と痛い。
「ん・・・?」
じっと寝転がったまま、体中の感覚を確認する。横向きに寝転がっている。ベットに寝る感じで。正確には、左向き。左下だな。ここで仰向けとかうつ伏せじゃないのは突っ込まないほうがいいのか? どんな体勢だよ。とりあえずあちこちをちょっとずつ動かす。指先とかつま先ぴくぴくさせてみたりとかね。下手に大きく動いてどうにかなったら困るし。後ろに池とかあったりしないよな? 感じる限り、特に体に異常はない。痛みもないので傷などはないようだ。てか、死んだはずじゃないのかよ。なんで体があるんだ?天国か、ここ。
あれ?
起き上がろうと周りを手で探ったとき、違和感を覚えた。ちょんちょんって触れるぐらいしかできない。草に。地面に。気のせいか? 姿勢の問題か? いや、普通つくだろ。あまりにも違い過ぎる。それに、手が動かしづらい。肩が回らない。固くなったもんだ。運動不足か? いや、そんな感じでもないんだけどな・・・。
まあ後ろに池はないと確信できたので、違和感を払拭出来ないまま、立ち上がった。はずなのに・・・?
やたらと目線が低い。普段の膝立ちの高さもない。なのに、僕の足の裏はしっかりと地面についている。
何だ、この矛盾は?
体を見下ろした。すると。
腕はプニプニで、手はまんまる。足が短く、胴が長い。足も肉でむちむちだ。足がやたらと近くに見える。体も、つまめるくらいにどこも肉がついている。そして、前世の服がだぼだぼで体についていた。靴もすっかりぶかぶかだ。これじゃあまるで・・・幼児体型じゃないか。なんで気づかなかったんだろう。腕が短いわけだ。
ひょっとして・・・。
例のシャットダウンで、強制的に転移させられたのか?
それなら、辻褄が合う。こんな見たこともない訳が分からないところにいるのが。子供に戻ったのは訳がわからんが。いや、転移じゃなくて転生なのか? なら、子供に戻っているのも納得できる。たぶん。
辺りを見渡した。
はるか地平線まで、草原が続いている。さっき寝転がって見たのと同じ光景だ。若干視点は変わってるけども。僕の膝ぐらいまでしか伸びてないということは、割と草は短めな感じか。基準がよくわからないからなんとも言えないけど。ゴツゴツした岩が所々、地面から突き出している。ライオンが乗っていなかったことに安堵する。ここで肉食動物とか会っちゃったら終わりだな。
救いなのは、砂漠のようには暑くないこと。日差しは少し強いぐらいだが、気温はちょうどいい。これでもし暑かったら、熱中症などでポックリ逝ってしまう所だった。サバンナってやたらと暑いイメージがあるからな。なんとなく。転生したのにまた死んだとかいったら、本気でシャレにならないぞ。
いや、それ以前に。
どこだよ、ここ・・・?
そもそもサバンナってどこだ? アフリカっぽいイメージだけど、あってるのかどうか・・・。アメリカとか? ロシアとか? カナダとか? とりあえず広いとこしか思いつかない。高校の卒業旅行でアメリカ一周の旅に行ったが、こんな所はなかった。ロシアは知らない。行ったことがないから。カナダも同期は出張で行ってたが、僕は行かなかったから知らない。
というか、このままずっとここにいたら、飢え死にしてしまうのではないか? 見渡す限りに食べ物もなく、水もない。僕の目の届く限りだけど。適温とはいえ、体からは確実に水分が奪われているはず。人や家を探して、歩いた方が得策かもしれない。こんなところに家がある気もしないけどな。どこかでばったり誰かに出くわすかもしれないじゃないか。
よし。
僕はとりあえず適当に方角を定め、歩き始めた。まあ決めようがないから、その場でぐるぐる回ってなんとなく止まった方向にするっていう、適度じゃなくて手抜きの方の適当なわけだが。
歩いているうちに、奇妙なことに気づいた。
この荒野では、全く音がしないのだ。風は吹いているのに、草や木も確実に揺れているのに、こそりとも音がしない。葉が擦れ合っているのも見える。なのになぜか、音だけがない。
まだまだ謎が多いな。いや、もう謎しかないか。
てくてく、てくてく。
荒野を歩き続ける僕と対照的に、沈んでいく太陽。別に対照でもないか? 言ってみたかっただけだ。それより、ここの時間の過ぎるスピードが尋常じゃない。子供は時間を長く感じるんじゃなかったのか? 別に夢中になってたわけでもないんだが・・・。確か起きたときすでに昼を越えていた。それでも2時とかそこらだ。なのに、1時間も経った気がしないのにもう日が暮れる。また1つ、謎が増えた。
そんなことを考えながら歩く中でも、明るい空と夕焼けのコントラストは、小さな幸せを久しぶりに僕に与えてくれた。
日がすっかり沈み、辺りが薄暗くなってきた頃に、僕は小さな泉を見つけた。ぱっと見不純物も混じっていないし、触ってみる感じでは冷たくて綺麗な感じだ。飲めるかどうか?
ええいと勢いで手を丸めてコップのようにし、水をすくった。指の間からすり抜ける前に、ごくりと飲む。
あ、美味しい。
喉を通る久しぶりの水は、まるで神からの恵みのようだった。冷たく、涼やかに僕の喉を滑り落ちていく。思ったより体は水を欲していたようだ。このまま歩き続けていたら脱水症状とか危なかったかもしれないな。ギリギリセーフ。今も頭は冷静に考えているのに、手は別物のように動き続けている。体が本当に欲していた証拠だ。僕は貪るように、水を飲み続けた。
水だけで満腹になってから。
僕は、改めて考えた。ここはどこなのか、本当に転生したのか、音がない訳はどうなのか、時間が早いのはなぜか。
まず1つ目から行くと、ここがどこかはまだ不明。ひょっとしたら異世界かもしれないけど、今はまだ何もわからない。というか、異世界説に期待してるあたり僕にもちゃんと『男の浪漫』っていえる感じの思いがあるんだな。よかったよかった。いや、今の状況は全くよくないけども。まるでマンガか小説みたいだな。
2つ目、転生してしまったんだろうな。おそらく。死んだのに、今更元の環境に戻ったとか、そんな都合のいい話がある訳がない。そんな簡単に戻れるなら、機械に答えられない質問を投げて、みんながみんな戻っているだろう。第一日本にサバンナなんてないし。こんな土地があったらもっとマンションとか建てられて開拓されてるだろ。赤ちゃんからじゃないのはちょっと謎だけど。
3つ目、これが僕にとって一番の謎かもしれない。普通の小説はそこそこ読む方だった。でも、音がない世界など、読んだことも聞いたこともない。障害者の方々と一緒・・・ってわけでもなさそうなんだよな。勘だけど。友達に薦められた本の中にも、この事例はなかった。しばらく保留だな。おいおい明らかになってくるのを待つしかないだろう。
4つ目、もうわけがわからない。あまりにも非科学的すぎる。僕の体感速度の問題かもしれない。慣れなすぎる環境だから早く感じるとか。なんとでも言える。というわけで、本当かもわからないのでこれも保留。
分かるやつは分かるが、分かんないのは本当に分かんないな。
そういえば、今夜はたまたま泉に辿り着けたけれど、明日からはどうすべきか?人間は淡水だけでは1週間ほどしか生きられないらしい。塩があれば、また別らしいが。ここを動かないという選択肢もある。だがその場合、里や村を発見出来る可能性はなくなる。でもその分、生命線の水は保証される。どっちを取るかだな。人に発見して貰えば、飲み物だけでなく食べ物にもありつけるかもしれない。
どうしようか。迷いどころだな。
考えていると、急に強烈な眠気が襲ってきた。やはり子供の体だと、夜は眠くなるものなのだろう。単純に体力の消耗のせいかもしれないが。効率の悪い体だ、まったく。
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