10 / 75
変わったのは
②
しおりを挟む
『こんにちは。私は変わりないです。風邪などに気をつけてください』
なんてそっけない文、と思いながら送信する。
彼は、広いマンションでひとり妻が毎日どう過ごしているかなど、興味もないのだろう。
(私だってそうだ)
交際を申し込まれた時、好きな異性もいなかったし、当時すでに岸の家に身を寄せていた自分は"立場的に断るわけにはいかない"と思った。
頭が良くハンサムな智也はもてた。周りの女子から羨ましがられたけれど、自分は特に彼を好きだったわけではないのかも知れない。
智也はいつも優しかった。好きだとか愛している、という甘い言葉を言われた覚えはないが、誕生日には花を買ってきてくれた。
彼に抱かれるのは嫌いではなかったが、行為の後一緒に眠る事はなかった。
終わると智也は一人でシャワーを浴びて、「お疲れ様。お休み」と、別の部屋に寝に行く。
智也以外の男は知らないし、それが当たり前なのだと思っていた。だから、あぐりから恋人とのセックスの話を聞いた時に、大きな衝撃を受けた。
「今の彼氏、しつこいから面倒なの」
「何が?」
「終わった後、"もう一度やろう"てさ」
――嘘でしょ、と喉まで出かかった。
「あーー男って何歳まで性欲あるの?面倒……早く枯れて欲しいんだけど」
冗談ではなく、あぐりは本当に面倒そうだった。
「うん……そ、そうだよね」
ほなみは適当に相槌を打つ。その後も、黒いストッキングを履いて来ないと彼氏が怒るとか、時間が長くて腰がもたないとか、色々と愚痴を聞かされた。
表面上はわかったようになずいておいたが、あぐりのぶっちゃけ話の一つ一つがほなみにとっては信じられない事ばかりだった。
世の中の恋人どうしって、皆そんな風なの?
セックスは体力を消耗するし、そんな事ばかりにかまけていたら怠惰な人間になってしまう。俺たちにはそんな暇はないよーーと、智也はいつも涼しい顔で言っているのに。
自信たっぷりに言う彼に、多少疑念もおぼえつつも、それほどまでにしたいとも思わないほなみは敢えて反論をしようとも思わなかった。
智也は、つまり、世間で言うところの"淡泊"に当てはまる……のだろうか?
ほなみは、唐突に、西本祐樹にとのキスを思い出し身震いした。
今でも感触が思い出せる。熱くて、湿っていて、甘くて、蕩けそうでーー
これ以上西君の事を考えていたら、またおかしな気持ちになってしまう。
ほなみは気持ちを切り替えようとパソコンを閉じると、昨日の自分の行動をふと思い返してみた。
あの時は一種の興奮状態で周囲の事など気にしていなかったが、はた目から見たら、随分とおかしな態度だったのかも知れない。
ーーそういえば浜田さんにチョコレートを渡していないし、挨拶もしないまま帰ってきちゃったんだっけ……今から、散歩しながら寄ってみようか。
昨日の今日であの場所へ行くのもばつが悪いような気もするが、西本祐樹との間にあった事は誰も知らないはずだ。多分。いや、そうだと信じたい。
近所なのだし、浜田とはいずれ顔を合わす事になるのだから、昨日のフォローをしておいた方が賢明だろう。
簡単に化粧をし、寝癖がついてしまった髪を、ゆるく2つに結んでごまかし、上着を羽織りマンションを出た。
今日は暖かい。澄んだ色の空を見上げ、智也もこうして空を見る事はあるのだろうか?と考えた。
"変わりはないですか"
メールの文面を思い出して、クスリと笑いそうになる。
――何も変わりないよ。西君に恋してしまった事のほかは……
なんてそっけない文、と思いながら送信する。
彼は、広いマンションでひとり妻が毎日どう過ごしているかなど、興味もないのだろう。
(私だってそうだ)
交際を申し込まれた時、好きな異性もいなかったし、当時すでに岸の家に身を寄せていた自分は"立場的に断るわけにはいかない"と思った。
頭が良くハンサムな智也はもてた。周りの女子から羨ましがられたけれど、自分は特に彼を好きだったわけではないのかも知れない。
智也はいつも優しかった。好きだとか愛している、という甘い言葉を言われた覚えはないが、誕生日には花を買ってきてくれた。
彼に抱かれるのは嫌いではなかったが、行為の後一緒に眠る事はなかった。
終わると智也は一人でシャワーを浴びて、「お疲れ様。お休み」と、別の部屋に寝に行く。
智也以外の男は知らないし、それが当たり前なのだと思っていた。だから、あぐりから恋人とのセックスの話を聞いた時に、大きな衝撃を受けた。
「今の彼氏、しつこいから面倒なの」
「何が?」
「終わった後、"もう一度やろう"てさ」
――嘘でしょ、と喉まで出かかった。
「あーー男って何歳まで性欲あるの?面倒……早く枯れて欲しいんだけど」
冗談ではなく、あぐりは本当に面倒そうだった。
「うん……そ、そうだよね」
ほなみは適当に相槌を打つ。その後も、黒いストッキングを履いて来ないと彼氏が怒るとか、時間が長くて腰がもたないとか、色々と愚痴を聞かされた。
表面上はわかったようになずいておいたが、あぐりのぶっちゃけ話の一つ一つがほなみにとっては信じられない事ばかりだった。
世の中の恋人どうしって、皆そんな風なの?
セックスは体力を消耗するし、そんな事ばかりにかまけていたら怠惰な人間になってしまう。俺たちにはそんな暇はないよーーと、智也はいつも涼しい顔で言っているのに。
自信たっぷりに言う彼に、多少疑念もおぼえつつも、それほどまでにしたいとも思わないほなみは敢えて反論をしようとも思わなかった。
智也は、つまり、世間で言うところの"淡泊"に当てはまる……のだろうか?
ほなみは、唐突に、西本祐樹にとのキスを思い出し身震いした。
今でも感触が思い出せる。熱くて、湿っていて、甘くて、蕩けそうでーー
これ以上西君の事を考えていたら、またおかしな気持ちになってしまう。
ほなみは気持ちを切り替えようとパソコンを閉じると、昨日の自分の行動をふと思い返してみた。
あの時は一種の興奮状態で周囲の事など気にしていなかったが、はた目から見たら、随分とおかしな態度だったのかも知れない。
ーーそういえば浜田さんにチョコレートを渡していないし、挨拶もしないまま帰ってきちゃったんだっけ……今から、散歩しながら寄ってみようか。
昨日の今日であの場所へ行くのもばつが悪いような気もするが、西本祐樹との間にあった事は誰も知らないはずだ。多分。いや、そうだと信じたい。
近所なのだし、浜田とはいずれ顔を合わす事になるのだから、昨日のフォローをしておいた方が賢明だろう。
簡単に化粧をし、寝癖がついてしまった髪を、ゆるく2つに結んでごまかし、上着を羽織りマンションを出た。
今日は暖かい。澄んだ色の空を見上げ、智也もこうして空を見る事はあるのだろうか?と考えた。
"変わりはないですか"
メールの文面を思い出して、クスリと笑いそうになる。
――何も変わりないよ。西君に恋してしまった事のほかは……
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
背徳のミラールージュ(母と子 それぞれが年の差恋愛にのめり込んでいく鏡写し)
MisakiNonagase
恋愛
24歳の市役所職員・中村洋平には、自慢の恋人がいた。2歳年上の小学校教師、夏海。誰もが羨む「正解」の幸せの中にいたはずだった。
しかし、50歳になる母・美鈴が21歳の青年・翔吾と恋に落ちたとき、歯車は狂い出す。
母の恋路を「不潔だ」と蔑んでいた洋平だったが、気づけば自分もまた、抗えない引力に引き寄せられていた。
その相手は、母の恋人の母親であり、二回りも年上の柳田悦子。
純愛か、背徳か。4年付き合った恋人を捨ててまで、なぜ僕は「彼女」を求めてしまうのか。
交差する二組の親子。歪な四角関係の果てに、彼らが見つける愛の形とは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる