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雷鳴と
①
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外は風が強まり雪が激しく舞っている。
雷も何処かで鳴っていて、地響きの度にほなみは不安げなまなざしを窓の方へ向けた。
スープを煮込みながら、部屋の中を片付ける。
パソコンの側に飾ってある智也と一緒に映る写真をぱたりと伏せ、大きな溜息を吐いた。
(私――西君を部屋へ入れてしまった――)
あの後ふたりはエントランスの前で暫し抱き合っていた。彼の身体が恐ろしく冷えきっていて、甘える様に
「俺、帰りたくないなあ……て、普通は女の子が言う台詞かな?」と言われてしまい、突き放す事が出来なかった。
エレベーターの中でも西本はほなみを抱き締め、何度も口付けた。
夜中とはいえ、いつ誰が乗ってくるかわからない。
ハラハラするほなみは、必死に振りほどこうとしたが、結局、がっちり抱き締められたまま最上階に着いた。
部屋に入るなり、後ろからぎゅっと羽交い締めにされ、首筋に唇をはわせられ、身体の芯が柔らかく蕩けそうになる。
「ま、待って……」
ガウンを脱がしにかかろうとする手から逃れ、ほなみは後ずさる。
「この期に及んで待てなんて、鬼だな……」
西本は微笑しながら、じりじりと近付いて来る。
「とにかく待って!お風呂に入って!温まらなきゃ!」
つかまえようとする彼の手から逃げながら、クローゼットから新品の男物のパジャマと下着を素早く出して渡した。
「凄く用意がいいね……ていうか、男物のパジャマが常に家にあるの?」
彼は目を丸くしてパジャマと下着を受け取ると、少し考え込む。
ほなみは、質問には答えず、彼の背中を押してバスルームまで連れていった。
「お湯は溜めてあるから、ちゃんと中で温まってね?」
出ていこうとすると腕をつかまれる。
「一緒に入らないの……?身体が冷たいよ?」
抱き寄せられ頬に素早くキスされて、ほなみは真っ赤になった。
「わ、私はいいの!」
「う――ん残念。まあ、後で俺が温めてあげるから……いいか」
西本は意味ありげな視線でほなみを見つめながら脱ぎ始め、ほなみは慌てて後ろを向いて叫ぶ。
「で、では、ごゆっくり!」
ほなみの声は、気が動転して裏返っていた。
ドアをバターンと閉めると、向こうで彼が可笑しそうに笑っているのが聞こえる。
( 西君が私のマンションでお風呂に入っていて、私はスープを煮込んでいるなんて……)
現実感が無くて不思議だ。
昨日までは、彼の存在さえ知らなかったのに。
結婚してから、智也以外の男性とふたりきりになる事など初めてだ。
(私は一体どうするつもりなのだろう……)
室内が稲光にカッと照らされ、考え事は中断される。
ブラインドを指で恐る恐る開けると、遠くで稲妻が墜ちるのが見えた。
「遠くから見れば綺麗なのに……」
「雷、綺麗だよね」
いつの間にか、彼が真後ろに居て、ほなみは小さく叫ぶ。
「お風呂気持ちよかったよ。ありがとう。」
彼は石鹸の香りを漂わせている。濡れた髪から水が頬に滴っていた。
ほなみはタオルで彼の濡れた髪を拭った。
「まだ濡れてるじゃない。ちゃんと拭かないと……」
「お母さんみたいだな」
「こんな悪い子のお母さんになった覚えはありません」
「酷いなあ」
髪を拭きながら、意外と太い首周りや突き出た喉仏が目に入りドギマギした。
彼も、じっとほなみを見ている。
雷も何処かで鳴っていて、地響きの度にほなみは不安げなまなざしを窓の方へ向けた。
スープを煮込みながら、部屋の中を片付ける。
パソコンの側に飾ってある智也と一緒に映る写真をぱたりと伏せ、大きな溜息を吐いた。
(私――西君を部屋へ入れてしまった――)
あの後ふたりはエントランスの前で暫し抱き合っていた。彼の身体が恐ろしく冷えきっていて、甘える様に
「俺、帰りたくないなあ……て、普通は女の子が言う台詞かな?」と言われてしまい、突き放す事が出来なかった。
エレベーターの中でも西本はほなみを抱き締め、何度も口付けた。
夜中とはいえ、いつ誰が乗ってくるかわからない。
ハラハラするほなみは、必死に振りほどこうとしたが、結局、がっちり抱き締められたまま最上階に着いた。
部屋に入るなり、後ろからぎゅっと羽交い締めにされ、首筋に唇をはわせられ、身体の芯が柔らかく蕩けそうになる。
「ま、待って……」
ガウンを脱がしにかかろうとする手から逃れ、ほなみは後ずさる。
「この期に及んで待てなんて、鬼だな……」
西本は微笑しながら、じりじりと近付いて来る。
「とにかく待って!お風呂に入って!温まらなきゃ!」
つかまえようとする彼の手から逃げながら、クローゼットから新品の男物のパジャマと下着を素早く出して渡した。
「凄く用意がいいね……ていうか、男物のパジャマが常に家にあるの?」
彼は目を丸くしてパジャマと下着を受け取ると、少し考え込む。
ほなみは、質問には答えず、彼の背中を押してバスルームまで連れていった。
「お湯は溜めてあるから、ちゃんと中で温まってね?」
出ていこうとすると腕をつかまれる。
「一緒に入らないの……?身体が冷たいよ?」
抱き寄せられ頬に素早くキスされて、ほなみは真っ赤になった。
「わ、私はいいの!」
「う――ん残念。まあ、後で俺が温めてあげるから……いいか」
西本は意味ありげな視線でほなみを見つめながら脱ぎ始め、ほなみは慌てて後ろを向いて叫ぶ。
「で、では、ごゆっくり!」
ほなみの声は、気が動転して裏返っていた。
ドアをバターンと閉めると、向こうで彼が可笑しそうに笑っているのが聞こえる。
( 西君が私のマンションでお風呂に入っていて、私はスープを煮込んでいるなんて……)
現実感が無くて不思議だ。
昨日までは、彼の存在さえ知らなかったのに。
結婚してから、智也以外の男性とふたりきりになる事など初めてだ。
(私は一体どうするつもりなのだろう……)
室内が稲光にカッと照らされ、考え事は中断される。
ブラインドを指で恐る恐る開けると、遠くで稲妻が墜ちるのが見えた。
「遠くから見れば綺麗なのに……」
「雷、綺麗だよね」
いつの間にか、彼が真後ろに居て、ほなみは小さく叫ぶ。
「お風呂気持ちよかったよ。ありがとう。」
彼は石鹸の香りを漂わせている。濡れた髪から水が頬に滴っていた。
ほなみはタオルで彼の濡れた髪を拭った。
「まだ濡れてるじゃない。ちゃんと拭かないと……」
「お母さんみたいだな」
「こんな悪い子のお母さんになった覚えはありません」
「酷いなあ」
髪を拭きながら、意外と太い首周りや突き出た喉仏が目に入りドギマギした。
彼も、じっとほなみを見ている。
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