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君の愛は甘い毒①
しおりを挟むカーテンの間から金色の月明かりが射し込み、白いシーツを照らす。
静かな夜に響くのは、熱く、甘い吐息と時折小さく呟く愛の言葉。
――真夜中のマンション。
愛の褥(しとね)で狂おしく抱き合うのは、永遠を誓い合った二人。
時折、愛する動きに耐えきれずベッドが悲鳴を上げるが、次第に二人の息遣いと甘い叫びでそれは掻き消される。
「ほなみ……
好きだよ……」
「んっ……西く……んっ」
祐樹の腰の律動は規則的に、時に激しくなり、ほなみを啼かせた。
祐樹の瞳が意地悪な色を帯び、腰の動きを止めると、ほなみは思わず咎める様に見詰める。
彼のしなやかな指が、ほなみの唇を勿体振る様に撫でた。
「ねえ……俺は、ほなみの何?」
熱くたぎった獣を秘蕾に沈み込ませたまま聞かれ、ほなみは恥ずかしさに戸惑った。
「え……それは……」
「ちゃんと答えてごらん?」
祐樹は突然に大きく腰を振ったかと思えば、また直ぐに焦らす様に動きを止めた。
「ああっ」
ほなみの身体が跳ねる。
目を潤み、泣きそうな表情で見詰めるほなみだが、祐樹はその様を楽しんでいた。
「今まで沢山抱き合ったのに……まだ恥ずかしいの?」
ピアノを奏でる音楽家の指はとても繊細な動きでほなみの首筋を撫で、鎖骨から双丘へとトレモロを奏でる様に愛撫する。
「あん……だって……んんっ」
祐樹は柔丘を揉みしだきながらほなみの唇を激しく奪うが、蕾の中の獣がビクリと反応して、動かさずに居るのが我慢出来なくなる。
唇を離すと、祐樹は指でほなみの胸の突起をそっと摘まんだ。
「や……!」
ほなみは喘ぎ、祐樹にしがみつく。
「ねえ……俺は、ほなみの旦那様だろ?」
「ん……んっ……」
祐樹に巧みに胸をまさぐられ、彼女はまともに会話が出来ない程乱れ、その妖艶さに祐樹の獣が耐えられなくなり、遂には再び腰を大きく動かし始める。
「く……っ」
「いやあっダメ――!」
言葉とは裏腹に、秘蕾は蜜を溢れさせ、祐樹をきつく締め上げた。
「ほなみっ……」
愛しい気持ちと堪らない突き上げる快感に狂い、もう正気で居られない。
祐樹は狂った様に腰を動かしてほなみを啼かせる。
「に、西君――っ!」
無意識にほなみも腰を上下に動かして祐樹の獣を限界に導こうとしていた。
「くっ……駄目だもうっ」
口走ると同時に、獣は愛する妻の最奥で爆ぜて、熱い欲望が流れ出す。
痙攣した様にまだ獣はビクンと微かに動いていた。
「ふっ……はあっ」
激しく息が上がり、祐樹はほなみの胸に顔を埋め、ほなみは指で彼の真っ直ぐな髪を撫でる。
「凄く……良かったよ」
祐樹が微笑み囁くと、ほなみは紅くなった。
「う、うん……」
「……それだけ?ほなみの感想は?……ん?」
長い指で頬を軽くつねって意地悪そうに聞く祐樹をほなみは睨んだ。
「知らない……」
「ほなみ?」
先程まで熱く燃えていたのに、ほなみは機嫌が良くなさそうだ。
祐樹はそっぽを向く妻の顎を掴むと強引に口付けた。
「ん……」
ほなみは小さく吐息を漏らして祐樹のなすがままになる。
つい今しがた見せた一瞬の頑なさは消え、甘く身体を蕩けさせ、祐樹の背中に腕を回し――
その仕草に又、祐樹の欲望が目覚めていく。
ほなみが安定期に入ってから、ほぼ毎日身体を重ねて居るが、二度抱く事は避けていた。
安定期とはいえ、今は普通の身体では無いのだ。
(欲望に任せ、ほなみに無理をさせてはいけない……)
理性で自分を押し止めようとしたか、今夜のほなみは様子が違った。
祐樹の背中に触れていた手をするりと猛りに伸ばして握ると上下に動かして挑発してきた。
「ほ、ほなみ」
戸惑って、その手を押し止めようとするが、強烈な快感に抗う事が出来ずに顔を歪め、夢中でほなみの柔らかい胸をまさぐった。
妊娠したほなみの身体は以前にも増して祐樹を甘く挑発する。
乳房は一回り大きくなり、服の上からでもその存在を主張して時折視線が釘付けになった。
下腹部は少し丸みを帯びて肉感的になり、後ろ姿を見ているとすぐさま腰を掴み突き上げたくなる。
愛するほなみと一緒の空間に居て、欲のままに抱けないのは祐樹にとって一種の拷問に近かった。
バンド活動で忙しくしている時には気が紛れるが、部屋に帰って来た瞬間からほなみに何もかもが奪われる。
ずっと触れて居たくなってしまうのだ。
余りの自分の溺れ様に、呆れてしまう。
もう、恋人同士という不安定な関係では無いのだ。
夫婦になり、しかも新しい命も生まれる。
だから、ここまでがっつく必要はない、という言い方も変かも知れないが、もう安心してもいい頃なのに。
時間が許すならほなみをずっと離したくない、という祐樹の欲望は日に日に強くなっていった。
ベッドに入りお互い身に纏う物を脱ぎ去った状態で理性を働かせるのは難しかった。
腕の中で、美しい身体を晒したほなみが潤んだ目で見詰めて居るのに、獣を宥める事など出来ない。
獣は先程よりも硬く熱く大きくなり、祐樹を苛む。
ほなみの柔らかい指の動きは、止まらず獣を刺激する。
淫らな情欲が今にも溢れそうで、祐樹は堪らず呻いた。
「うっ……だ、駄目だほなみ」
「何故……?」
彼女の紅みを差した頬と胸元が綺麗で、祐樹は快感に震えながら見とれ、身体を震わせる。
「く……我慢……
出来なく……なるだろ」
「西君……このまま……また……ああっ」
ほなみがねだる前に、祐樹はその腰を掴み自分を沈み込ませた。
秘蕾の中は溢れ、少し動かしただけで獣を締め上げる。
「く……ほなみっ……そんなに締めないで……っ」
潤んだ愛しい瞳が祐樹の身も心も甘い毒で侵していく。
ほなみの柔らかな指が背中をさ迷い、時に行き場を失って痙攣した。
「ああっ……西くんっ……凄い……」
「俺も……どうにかなりそうだ……っ」
祐樹は、押し寄せる快感を貪欲に貪る様に腰を動かし、溜め息を吐く。
ベッドの軋む音と振動が最高潮に大きくなり、やがてほなみは甘く切ない声を上げた。
祐樹も同時に達して、ほなみの柔らかい身体に崩れ落ちる。
「はあっ……」
息を整えようともせず、祐樹はほなみに口付けた。
「んん……」
ほなみも唇と舌で祐樹に応え、彼の首に腕を絡み付ける。
「うっ……」
「んん……」
ほなみの甘い髪の香りが鼻腔から脳天を刺激して、次の行為をせよと命令が下されるが、祐樹は躊躇う。
もう二度も激しくしているのに、これ以上ほなみに無理をさせられない。
むくむくと勃つ自身をもて余しながら、しがみついて来るほなみから無理矢理離れる。
ほなみは裸の身体を隠そうともしないで、背を向けた祐樹を見詰めて声を詰まらせた。
「西くん……私に……飽きたの?」
祐樹が驚いて振り返るとほなみは肩を震わせて泣いていた。
はらはらと流れる涙が宝石の様にほなみを更に美しく見せている。
そして窓から漏れる月明かりが彫刻の様な曲線を照らし、身体の窪みは影になる。
その美しさを間近で見せ付けられて、祐樹はほなみに再び触れずにはいられなくなった。
泣きじゃくるその唇を塞ぐと涙の味がする。
唇の次は頬に、その次は首筋に触れていくと、その度に目の前で美しい身体がビクリと悩ましく反応をした。
見ているだけで堪らなくなり、祐樹は柔らかで豊かな二つの膨らみを掴み唇で貪る。
ほなみの腕が首に絡み付き、耳元で小さく喘ぎ声を上げられてカッと身体に火が付いた。
「いいの……ほなみ……そんなに煽ったら……うっ」
ほなみは積極的に腰を押し付けて来て、猛りに当たる。
祐樹は快感に呻きほなみの腰を掴むとそのまま廻す様に動いた。
中には入らず、触れて居るだけだがお互いに激しく感じているのが分かる。
秘蕾は濡れ、猛りの先端からも熱く滴って来た。
「ダメだ……また我慢出来なくなる」
祐樹は柔らかい蕀の様に絡み付く細腕を無理矢理振りほどくと、ほなみにシーツをバフッと被せた。
「西君……」
その甘い声を聞いただけで、また身体が疼く。
思わず祐樹は髪を掻きむしり叫んだ。
「ああ――っもう!」
ほなみがビクリと身体を震わせ、少し脅えた様に祐樹を見詰めるが、祐樹はその視線から逃げる様にベッドから降りた。
「……身体に障る。もう寝た方がいい……」
「待って……」
祐樹を追って、ほなみがベッドから降りて抱き着いた時に身体に巻き付いたシーツがパラリと落ちた。
柔らかい感触が背中や腕に当たり、押し止め様とした欲望はいとも容易く決壊した。
振り返り、ほなみを抱き上げるとベッドへ倒して、直ぐ様腰を掴み自分を沈み込ませる。
それを待ち望んでいたかの様に、ほなみの秘蕾は獣を締め上げた。
直ぐに爆発してしまいそうな獣は秘蕾の最奥で快感に悲鳴を上げている。
祐樹はほなみと指を絡み合わせながら、狂った様な口付けを交わす。
腰の律動はそのままに。
「んんん……ん」
苦しそうに顔を歪めるほなみの頬に指で触れると、祐樹はようやく唇を離す。
「ふう……んっ……あああっ!」
呼吸を確保したのも束の間、激しく突き上げられてほなみは甘く叫んだ。
自分の責めに淫らに反応する愛しい女の妖艶な姿に、祐樹は益々興奮し律動を速めた。
動きを速める程、秘蕾は溢れて獣をきつく締め上げる。
このままずっと繰り返して目眩く快感と愛しさの世界に沈んでいたい。
しかし、身体が限界を迎えようとしていた。
ズン、と深く突くと、目の前で豊かな丸い膨らみが大きく揺れた。
美しい、と思った瞬間、獣は爆ぜた。
「うっ……」
精を吐き出す堪らない快感に祐樹は顔を歪めながら、ほなみの肩先にキスした。
「西くん……好き」
その声で囁かれると、何を言われても蕩けそうに感じる。
祐樹は目を潤ませるほなみの額にそっと唇を付けた。
そして軽く咳払いする。
「処で、ほなみさん?思うに、俺ら結婚してるのに呼び名が『西くん』じゃあ……おかしくないかな?」
「……ダメ?」
ほなみが唇を尖らせる。
祐樹はその唇を指でなぞりながら時に優しく摘まんだ。
「そろそろ、名前で呼ばない?」
ほなみの頬が紅く染まる。
その反応が堪らなく可愛くて、意地悪をしたくなって来た。
「祐樹、て呼んでごらん」
「……っ……」
口を開きかけるが、また閉じて目を逸らす。
顎を掴みこちらを向かせると、低い声でほなみに問う。
「智也の事は、いつから名前呼びしてたのさ」
ほなみの顔色が変わる。
祐樹は、その素直な反応に満足していた。
だが顔には出さず、詰問する様にほなみを見詰める。
「……」
ほなみは唇を噛むと、シーツを頭から被ってしまった。
「ほなみ?」
シーツを被り、震えていたが、やがて嗚咽が聴こえてきて祐樹は面喰らう。
「……ひっ……く」
「ほなみ!」
無理矢理シーツを剥がし腕を掴むと、ほなみの顔は涙でぐちゃぐちゃだった。
「……智也……の事は……っ言わないで……」
途切れ途切れに、苦しそうに呟くその様に心が痛んだ。
そうだった……
綾波にも、注意されてたのに。
『妊娠中は、女はいつもにも増して感情的になる。大体が女ってのは元からが感情的な生き物さ。そこへホルモンが作用する訳だから、通常では反応しない些細な事にも激しく反応する可能性がある……
お前、くれぐれもおかしな事をいってほなみをからかうなよ?大変な事になるぞ』
今日、リハーサルの帰りに呼び止められて説教されたばかりなのだ。
「ごめん……ゴメンね?
もう変な意地悪言わないから……
ほら、そんなに泣くと、お腹の赤ちゃんも泣いちゃうだろ?」
祐樹は精一杯の優しい声で囁きながら、ほなみからシーツを剥がそうとするが、彼女はギュッと指に力を込めて離さない。
祐樹は溜め息を吐いた。
「ほなみ……可愛い顔を見せてよ……ね?」
「……ない」
「え?」
「可愛くなんかないもん……」
微かに震えるその声は、拗ねて居るというよりは、何処かに怒りが潜んでいるかの様に聴こえて、祐樹は眉をひそめる。
「どうしたんだよ……
ほなみは可愛いよ?……このシーツが邪魔でキスも出来ないだろう?出てきてごらん?」
「可愛くない!」
ほなみは突然強い調子で叫び、シーツから顔を出して祐樹を睨む。
「ほ、ほなみ?」
呆気に取られる祐樹の胸を拳でポカッと叩くと、ほなみは大粒の涙を流した。
「私……私なんかより可愛いくて綺麗な人は、西くんのまわりには沢山いるでしょう?」
更に拳を振り上げるほなみの腕を、祐樹は間一髪で掴む。
「何言ってるんだよ。ほなみより綺麗な女の子なんか居ないよ」
「そんな事あるわけないでしょ――?嘘つき!西くんの嘘つき!」
ほなみは子供みたいに泣きじゃくり、手を掴まれながらもじたばたする。
祐樹はほなみの背中に腕を回し、強く強く抱き締めた。
「西くんの……バカあ……っ……ひっ」
「いや……何でバカまで言われなきゃならないのか、俺わかんないんだけど……」
「……もう、いい」
ほなみは膨れて、祐樹の胸を押し戻した。
「え?もういいって……何が?」
「綾波さんに相談するから!西くんとはもう話さない!」
やけ気味のその叫びに、祐樹の胸は一気にざわめいた。
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