深見小夜子のいかがお過ごしですか?

花柳 都子

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親父ギャグは頭がいい

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 さて、今日は〇月〇日。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。朝晩の冷え込みもだいぶ落ち着いてきた今日この頃ですが、これからどんどん暑くなっていくと、冬の寒さのほうが恋しくなったりするものですよね。日本の四季って本当に不思議で、暑さと寒さが大体同じ振り幅でやって来て、「夏と冬を足して2で割ったらちょうどいいのに」「あぁそれが春と秋か~」なんて、自問自答してしまうことも一度や二度じゃありません。その分たくさん季節ごとの風物詩を楽しめるのですから、実は意識していないだけ、それが特別と感じていないだけで、いろんな思い出を作れる私たちは幸せなのかもしれませんね。
 私はどちらかというと寒いより暑いほうが苦手なので、また夏が来るなぁなんて思うのですが、皆さんはいかがでしょう? 暑い時はどんなふうに過ごしますか? もちろん冷房をつけるとか薄着になるとか、あとは水浴びや冷たい飲み物で喉を潤すとかでしょうか。逆に寒いなぁと思う時は暖房をつけるとか厚着をするとか、あったかい飲み物を飲むとか、布団やこたつで丸くなるなんて方も多いかもしれません。
 でも、なんだか夏のほうができることに限界がある気がしますよね。冷房だってキンキンに冷やせば今度は寒いし、薄着も水浴びも時と場所が限られるし、冷たい飲み物では体全体が暑さから解放されることはないし。特に私は、冷房の風に弱いのか、外に出た時の温度差にやられてしまうのか、夏でも風邪をひいてしまうんです。夏風邪をひくのは馬鹿だからなんて昔聞いた記憶がありますが、決してそんなことはありません。「私は馬鹿ではないから」が証拠ではもちろんなく、このことわざはそもそも「風邪をひいたことにも気づかないから」というような意味なので、風邪をひいていることに気づけている私は、馬鹿ではない、むしろ頭がいいはずという理論ですね。
 「暑いのに風邪をひく」という矛盾からこんなことわざが生まれたのか、それともこんなことわざがあるから「暑いのに風邪をひく」のはおかしいという認識なのか、いわば卵が先か鶏が先かみたいな、ああ言えばこう言うみたいな屁理屈に聞こえるかもしれませんが、世の中実はそんなことに溢れているんですよね。
 たとえば『親父ギャグ』。皆さんは聞いたら寒いと思うかもしれませんね。それこそ怖い話と並んで夏に聞くと涼しくなる話かもしれません。
 でも、よく考えてみてください。『親父ギャグ』って頭がいいですよね? 私は『親父ギャグ』を言ってくる本人から『これ言える奴は頭がいいから』なんて子どもの頃に聞いたから、当時は「何言ってるんだろ。自分を正当化したいのかな? 自分は頭がいいってこと?」なんて考えていましたが、大人になってわかります。
 もう少し正確に言うと『頭の回転が早い』でしょうか。2つの言葉の音の繋がりに気づいて、それを繋げてまた新たな言葉を作る。皆さんも咄嗟に言われると『親父ギャグ』だって気づかないこともありませんか? ラップとも似ていると思うのですが、ラップ好きの方には「一緒にするな」と怒られてしまうでしょうか。
 まぁ頭がいいからこそ、そういう一聞するとくだらない一文が、余計に聞くほうを呆れさせてしまうのかもしれませんが。うーん、ラジオでこれは伝わりませんかね。
 それはさておき、私が物語を書くうえで一番大事にしていることは『文章のリズム』と自負しているので、言葉の音を重視する『親父ギャグ』には昔から惹かれるものがあります。学校の先生が授業中に放った親父ギャグ、教室はしんと静まり返っていましたが、私はその『親父ギャグは寒い』という共通認識が生んだ沈黙が面白くて、ついつい笑ってしまっていました。
 『親父ギャグ』そのものの内容が実にくだらなくて面白くなくても、奥が深いものだと私は常々思います。だって『親父』ギャグですよ? 親父にしか与えられていない権利なんです。これは私の持論ですが、決して『親父』のセンスという意味ではなく、『親父』くらい年齢と経験を重ねないと深みが出ないギャグという意味かと。それなりの知識や語彙力がないと、『親父ギャグ』なんて咄嗟には思いつかないものです。言葉を知っていないといけないし、その意味についても詳しくないといけない。皆さんも言おうと思って言える人は、なかなかいないんじゃないでしょうか。『親父』というからには、男の人に限定されているところも気になります。これまた持論ですが、女性よりも男性のほうが直感的というか本能的というか、まぁもっと言うと単純なのかもしれませんが、あまり深く考えない分、パッと思いつくことができるのかもしれません。大喜利や漫才に男性が多いのは、お笑いに対する意識もさながら、きっとそういう本質的なものが関わっているのではないでしょうか。
 だから、女性の芸人さんはそんな男性たちが溢れる中で、自分たちの武器を胸に日々お笑いと向き合っているわけで。女性と男性では話の展開の仕方も違うし、思考回路も全く違うと思います。男性とは違うお笑いの形を見つけられるのも、女性芸人さんの醍醐味かも。
 とはいえ、この時代に男と女で一概に括るものではないのかもしれません。男の人でも乙女心に共感してくれたり、逆に女の人でも親父ギャグや大喜利が得意だったり、結局はそれが人それぞれの個性なんですね。
 今度皆さんが『親父ギャグ』を聞いたら、あぁこの人はいろんなことを経験してきたのかもしれないななんて、その人の人生にちょっとだけ思いを馳せてみてください。きっと面白いはずです。『親父ギャグ』を言った時の周りの反応を期待する、あのちょっとお間抜けに見える表情を見ながらだと余計にね。あれ、意外とお茶目かも、なんて。本人に言うと調子に乗っちゃうかもしれませんし、笑ってしまうと『親父ギャグ』がウケたと勘違いされるかもしれません。が、それも一つのコミュニケーションの形だと私は思います。
 さあ、そろそろお別れの時間です。『親父ギャグ』でなくとも、皆さんは皆さんの得意なことで、平和な日常を楽しんでくださいね。では、また来週お会いしましょう。深見小夜子でした。
 






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