転生悪役令嬢は悪魔王子をスルーしてカフェオーナーになりたい

和気 藹

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領都フルネンディク

24 ライバル令嬢登場!?いらんわ、そんなモノ

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 突然ですが、ウチの領の生産品に「亜麻(リネン)」があるんですよ。
 この亜麻の繊維を漉いた紙を利用した紙巻きタバコが近年発明されて需要が急増しているとか。蝋引き紙もその途中で開発されていてお菓子作りに重宝しております。
 で、タバコと塩は昔の日本のように専売制で王族の直接管理で生産販売されているので景気不景気なく安定した需要が見込まれています。

 亜麻紙を少し厚めに漉いてもらえば、試験紙にも本にもできますよ! まだインクも没食子インクが主流なので、BOOKカフェに置けるような本はまだないのですが、近いうちにきっと誰かがやってくれるでしょう。ガリ版印刷(謄写印刷。捺染、スクリーン印刷とも呼ばれる)の開発。どっかに本好きのドワーフとか、インクに魔力を込めた魔法陣を開発するエルフとかいませんかね……いないですよねぇ……やっぱりローに相談かな。まぁカフェオープンに間に合わなければ、おいおいね……。
 没食子インクはガリ版印刷に向かないので顔料インクや墨の開発が先かな? 墨の原料は菜種油の煤と膠。セイヨウアブラナはそこいらに生えているんですが、照明には魔法が使われているので灯油としての需要がなく雑草扱い。勿体ないですよね。膠は見たことないので調査が必要ですね。まぁ皮製品の副産物だから在るところにはあるんでしょうが……。

 そんなことをつらつら考えつつ、また厨房で大量にメレンゲを作っています。横ではノート兄様が魔導書を広げお勉強中。

 厨房の窓から射す麗らかな春の日差しに、ぽやっとした気分になってきます。お昼はこの間作ったヒッコリーペストでパスタでも作りましょうか?
 今日は来客予定もないし、たまにはこういう日も良いですね……。






 ……






 ……ぐぅ





 カクっ!?
 あっ!?
 立ったまま気をやってしまいましたわ。恥ずかしい。



 ?
 なんだか階下が騒がしいですね?


 ノート兄様の方を見ると壁にもたれおやすみ中のようです。起こさないようにそっと様子を見てきましょうか。


 この領主館は、玄関エントランスの真ん中に踊り場のあるT字の大階段があり、折り返して二階に上がります。パリのオペラ座の玄関ホールの縮小版みたいなイメージです。彫刻の施された手すりの隙間から来客に見えないように様子を伺う事ができるようになっているのです。防犯上の理由ですよ。
 周辺に配置された壷や彫像で相手の身長・年齢を推測したり、武器を所持しているかどうかを確認するのです。決してかくれんぼして遊んでいるわけではないのですよ?

 玄関ホールには、年の頃は十二、三歳くらいの私より年上で、ノート兄様より背の低い金髪の少女が騒いでいました。しかし少女の背後には誰もいません。一人で来たのでしょうか? 執事のディーデリックが応対しているようです。

「だから! マリアンネとやらに会わせなさい!」
「申し訳ございません、お嬢様は外出しておりまして、在宅ではございません」
「じゃあ、待たせてもらうわよ」
「失礼ですが、お約束はございますか?」
「ないわよ!」
「申し訳ございません、お嬢様は外出しておりまして、在宅ではございません」
「ワタクシは、ジュネスト公爵家のシーラよ! 呼び戻してきなさい! 公爵令嬢のワタクシがこんな田舎に態々来てあげたのだから、伏して待ってお出迎えするのが当然よ!」
「恐縮ですが、お連れの方がいらっしゃらないようですが?」
「独りで来たのだから、当然よ!」
「ジュネスト公爵家のお嬢様がお独りで! こんなお美しいお嬢様が護衛もつけずにお独りでいらっしゃるとは! こんな片田舎では危のうございます! 馬車をご用意いたしますのでご滞在先までお送りさせていただきます!」
「えっ……」
「こんなお美しいお嬢様をお独りで外に出すなど! ハンス!」
 黒髪イケメンでメイドに人気のファースト・フットマンのハンスが大階段の後ろから姿を現します。最敬礼をしてからゆっくりと顔を上げます。
「お呼びでしょうか?」
「ハンス、お嬢様をご滞在先までお送りしなさい」
「かしこまりました」
 ハンスは自称お嬢様にもう一度最敬礼すると、にっこりと笑います。百戦錬磨の誑し笑顔ですね。これを目の前にして言う事を聞かない女性を私は見たことがありません。
「失礼致します、お嬢様。外に馬車がご用意してありますのでご案内致します」
「え、ええ解ったわ」
「お気を付けてお帰りくださいませ」ディーデリックが最敬礼で送り出します。

 私は私でイケメンに誘導されておずおずと帰って行く公爵令嬢を二階から唖然と見送ります。

 おいおい、執事カフェかよ! 行ったことなかったけど。
 従者もつけないで独りで乗り込んで来た自称公爵令嬢を追い返す対応としては最上の部類のモノでした。ウチの使用人はよくできてるわ。関心するわ。

 ……しかし、公爵令嬢! 従者を連れて来るという事は、自分の身分を証明するものなんだから独りでアポなしで来るなよ! そしてうちの執事とイケメンに丸め込まれてるよ。チョロいよ! チョロすぎるよ! チョ令嬢だよ!

「お嬢様」
「ディーデリック、お疲れ様」
「ジュネスト公爵家のシーラ様という事は、お嬢様と同じ第一王子の婚約者候補の方です」
「トラブルが向こうからやってきたって事ね」
「はい、次にお越しになった場合は如何致しますか?」
「迷惑だから、適当にあしらっておきましょう。会います」
「はい、かしこまりました」
 にっこり笑ったディーデリックの笑みはハンスのそれと同じで、昔はさぞモテたのだろうなと思わせる笑みでした。
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