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完璧な見通し
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なんだそれ、と言う胡乱な二つの視線に見つめられながら、ドライアドの消滅演出を見届ける。
すると、ポンっと気の抜けるような音がして、ドライアドと入れ替わるように一人の少女が現れ、倒れ込んでくる。
ユグドラシアの追加住民である少女だ。
何でボスを倒したらこの少女が現れるのか、その謎を追うのがストーリーの始まりになる。
まあ全部知ってるからその辺は適当に流すけど。
「よいしょっと。」
「カイサ殿、その少女は知り合いなのか?」
当然のように担いで街に戻ろうとしている俺に、マールが質問を投げかけてくる。
知ってるかどうかで言えば、ものすごく知っているんだけど、現時点では知り合いではない。
「さあ?面識はないと思うけど。」
「今まで忘れてたけど、そう言えばカイサさんは記憶喪失なんだよね。その人、で良いのかな?起きたら何か記憶の手掛かりになるかもしれないね。」
ユネの台詞は正しく、カイサにとって重要キャラではあるんだけど…。
先に攻略を進める事で間のイベントはスキップ出来るから、ちょっと勿体無いけど仲良くはしないだろう。
「さあ、病院に連れて行こう。」
傍に抱えるように持ち上げ、帰路に着く。
「うん、気を失ってるだけだね。一日もあれば目が覚めると思うよ。」
今にも死にそうな目をしたイケメンな男性が手早く診療を行い、ベッドに寝かせる。
この街唯一の病院で、夫婦で営んでいるものの忙しさのあまりいつも寝不足という設定になっている。
奥さんも病院で働いているのだが、自分の時間を大切にして欲しいと言う願いから奥さんの勤務時間を短くして、その分働く愛妻家っぷり。
実際に動いているところを見たら今にも倒れそうで怖い。
「目が覚めるまでここで面倒を見るから、君達は帰っても大丈夫だよ。カイサくんはあまり無茶をしないように。」
「はい。」
睨む、と言うほど物騒では無いが、有無を言わせぬ圧力を感じる。
昨日、早々にお世話になった事で顔を覚えられてしまったみたいだ。
なるべく気を付けよう。
「気になるならまた明日おいで。歳の近そうな君達がいた方が安心するかもしれないからね。」
明日来い、は【フェアリアル】において良く使われる手法であり、面倒ではあるのだが、逆に言えば明日までにイベントフラグを立てればストーリーを省略する事もできる。
「まだこんな時間か。これからどうする?」
「私もまだ時間あるし、どこかに買い物でも行こっか?」
マールとユネが次の予定を話し合っている内にこっそりと離れる。
気が付いていないのか、今日は大丈夫と判断したのか、どうやら追ってくるつもりは無いらしい。
気持ち早足で再び街の外に出たところで本格的に走り出す。
目指すは【水没遺跡】、順当に進めば次に攻略するダンジョンだ。
「ほいほいっと」
【水没遺跡】にたどり着いた俺は記憶を頼りに仕掛けを作動させる。
至る所に水没していて通れない道があるのが特徴のダンジョンで、仕掛けをガチャガチャして良い感じにするのが大変なダンジョンなのだが、通い慣れている俺にとっては朝飯前だ。
特に苦労する事も無くスルスルとボス戦前まで来たが、このままでは攻撃力の不足で倒せないだろう。
と言うか、【水没遺跡】のボスは普通に戦ったらそれなりに強い。
「キーアイテムは回収済みだから、練習しておくか。」
ちょうど良く出現した魚型のモンスターに向かって、手に持ったアイテムを投げる。
狙い通りにモンスターの腹部にアイテムが当たった瞬間、悲鳴も無くモンスターが消滅した。
投擲のコントロールにいささか不安があったものの、狙い通りに真っ直ぐ飛んでいった事に安堵する。
「勝ったな。」
最後のボス部屋に関係する仕掛けをガチャンと操作して、ボス戦への扉を開く。
目の前には一段窪んだ決戦フィールドと、その真ん中で身動ぎする巨大なタコ型モンスター。
「ブオオオオオオ!!!」
「おらよ、食いな。」
大きく吠えるタコ型モンスターの口に、【千本針】と呼ばれる、固定ダメージを与えるアイテムを両手で八本投擲する。
【千本針】は【水没遺跡】に生息しているスピアーフィッシュというモンスターのドロップアイテムだ。道中で手に入れた。
当然序盤のモンスターが落とすアイテムであるため、大きなダメージにはならないのだが、ここでクリティカルの仕様が輝く。
ドライアド戦でも弱点を攻撃したが、あれで大ダメージが入る仕組みはクリティカルにある。
弱点部位を攻撃したら確定でクリティカルとなり、ある程度振れ幅はあるものの平均で10倍の火力となる。
まさにぶっ壊れ火力なのだが、普通に攻撃していたらクリティカルなんてほぼ発生しないし、弱点も最初はわからない&攻撃し難い部位である事がほとんど。
「念の為追加!」
更に続けて二本の【千本針】を投げる。
【千本針】は、固定ダメージのくせにクリティカル補正がきっちり乗る。
タコ型ボスモンスター、キングクラーパスの弱点である口内にヒットした合計十本の【千本針】は、いくら序盤の火力といえどクリティカル判定が乗ればボスくらい倒せる。
簡単に事が運んだが本来であれば、ボス部屋は半分水没している。
プレイヤー側の足場が制限されている状態で、水中の高速移動と何故か背負っている硬い甲羅の防御力によりダメージを与え難く、長い触腕による攻撃が厄介なボスである。
ボス部屋の仕掛けを操作して水抜きしなければ厄介なキングクラーパスも、攻略法を知ってさえいればあっさりしたものだ。
「ぉぉぉ…」
ドライアド同様に、少々派手な消滅エフェクトを残しながら消えていく。
そして今度も入れ替わるように現れた人影が倒れ込んでくる。
「ん!結構重い…。」
長髪がクルクルとパーマのように広がり、何処となくタコっぽいシルエットの男性を支えながら、帰路に着く。
予定通り、二体討伐だ。
すると、ポンっと気の抜けるような音がして、ドライアドと入れ替わるように一人の少女が現れ、倒れ込んでくる。
ユグドラシアの追加住民である少女だ。
何でボスを倒したらこの少女が現れるのか、その謎を追うのがストーリーの始まりになる。
まあ全部知ってるからその辺は適当に流すけど。
「よいしょっと。」
「カイサ殿、その少女は知り合いなのか?」
当然のように担いで街に戻ろうとしている俺に、マールが質問を投げかけてくる。
知ってるかどうかで言えば、ものすごく知っているんだけど、現時点では知り合いではない。
「さあ?面識はないと思うけど。」
「今まで忘れてたけど、そう言えばカイサさんは記憶喪失なんだよね。その人、で良いのかな?起きたら何か記憶の手掛かりになるかもしれないね。」
ユネの台詞は正しく、カイサにとって重要キャラではあるんだけど…。
先に攻略を進める事で間のイベントはスキップ出来るから、ちょっと勿体無いけど仲良くはしないだろう。
「さあ、病院に連れて行こう。」
傍に抱えるように持ち上げ、帰路に着く。
「うん、気を失ってるだけだね。一日もあれば目が覚めると思うよ。」
今にも死にそうな目をしたイケメンな男性が手早く診療を行い、ベッドに寝かせる。
この街唯一の病院で、夫婦で営んでいるものの忙しさのあまりいつも寝不足という設定になっている。
奥さんも病院で働いているのだが、自分の時間を大切にして欲しいと言う願いから奥さんの勤務時間を短くして、その分働く愛妻家っぷり。
実際に動いているところを見たら今にも倒れそうで怖い。
「目が覚めるまでここで面倒を見るから、君達は帰っても大丈夫だよ。カイサくんはあまり無茶をしないように。」
「はい。」
睨む、と言うほど物騒では無いが、有無を言わせぬ圧力を感じる。
昨日、早々にお世話になった事で顔を覚えられてしまったみたいだ。
なるべく気を付けよう。
「気になるならまた明日おいで。歳の近そうな君達がいた方が安心するかもしれないからね。」
明日来い、は【フェアリアル】において良く使われる手法であり、面倒ではあるのだが、逆に言えば明日までにイベントフラグを立てればストーリーを省略する事もできる。
「まだこんな時間か。これからどうする?」
「私もまだ時間あるし、どこかに買い物でも行こっか?」
マールとユネが次の予定を話し合っている内にこっそりと離れる。
気が付いていないのか、今日は大丈夫と判断したのか、どうやら追ってくるつもりは無いらしい。
気持ち早足で再び街の外に出たところで本格的に走り出す。
目指すは【水没遺跡】、順当に進めば次に攻略するダンジョンだ。
「ほいほいっと」
【水没遺跡】にたどり着いた俺は記憶を頼りに仕掛けを作動させる。
至る所に水没していて通れない道があるのが特徴のダンジョンで、仕掛けをガチャガチャして良い感じにするのが大変なダンジョンなのだが、通い慣れている俺にとっては朝飯前だ。
特に苦労する事も無くスルスルとボス戦前まで来たが、このままでは攻撃力の不足で倒せないだろう。
と言うか、【水没遺跡】のボスは普通に戦ったらそれなりに強い。
「キーアイテムは回収済みだから、練習しておくか。」
ちょうど良く出現した魚型のモンスターに向かって、手に持ったアイテムを投げる。
狙い通りにモンスターの腹部にアイテムが当たった瞬間、悲鳴も無くモンスターが消滅した。
投擲のコントロールにいささか不安があったものの、狙い通りに真っ直ぐ飛んでいった事に安堵する。
「勝ったな。」
最後のボス部屋に関係する仕掛けをガチャンと操作して、ボス戦への扉を開く。
目の前には一段窪んだ決戦フィールドと、その真ん中で身動ぎする巨大なタコ型モンスター。
「ブオオオオオオ!!!」
「おらよ、食いな。」
大きく吠えるタコ型モンスターの口に、【千本針】と呼ばれる、固定ダメージを与えるアイテムを両手で八本投擲する。
【千本針】は【水没遺跡】に生息しているスピアーフィッシュというモンスターのドロップアイテムだ。道中で手に入れた。
当然序盤のモンスターが落とすアイテムであるため、大きなダメージにはならないのだが、ここでクリティカルの仕様が輝く。
ドライアド戦でも弱点を攻撃したが、あれで大ダメージが入る仕組みはクリティカルにある。
弱点部位を攻撃したら確定でクリティカルとなり、ある程度振れ幅はあるものの平均で10倍の火力となる。
まさにぶっ壊れ火力なのだが、普通に攻撃していたらクリティカルなんてほぼ発生しないし、弱点も最初はわからない&攻撃し難い部位である事がほとんど。
「念の為追加!」
更に続けて二本の【千本針】を投げる。
【千本針】は、固定ダメージのくせにクリティカル補正がきっちり乗る。
タコ型ボスモンスター、キングクラーパスの弱点である口内にヒットした合計十本の【千本針】は、いくら序盤の火力といえどクリティカル判定が乗ればボスくらい倒せる。
簡単に事が運んだが本来であれば、ボス部屋は半分水没している。
プレイヤー側の足場が制限されている状態で、水中の高速移動と何故か背負っている硬い甲羅の防御力によりダメージを与え難く、長い触腕による攻撃が厄介なボスである。
ボス部屋の仕掛けを操作して水抜きしなければ厄介なキングクラーパスも、攻略法を知ってさえいればあっさりしたものだ。
「ぉぉぉ…」
ドライアド同様に、少々派手な消滅エフェクトを残しながら消えていく。
そして今度も入れ替わるように現れた人影が倒れ込んでくる。
「ん!結構重い…。」
長髪がクルクルとパーマのように広がり、何処となくタコっぽいシルエットの男性を支えながら、帰路に着く。
予定通り、二体討伐だ。
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