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百万ユグの対価
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「ようやく解放された…。」
軽く身体を伸ばすと、ポキポキと骨が鳴る。
すっかり日も暮れ、疲労感が半端では無い。
無事にマールからも解放されたが、流石に今から街の外に出る気分では無いな。
「まあ、成果はあったし、悪く無いか?」
多額の借金を背負ってしまったものの、本来は資金不足で中々入れない温泉に無理して入れた事でかなりのスキル経験値を稼がせてもらった。
「いや~、怒られた甲斐もあったもんだな。」
メニューから確認出来るスキルレベルを見てにやける。
ストーリーの進行こそ出鼻を挫かれたものの、スキルレベルは上々の戦果だと言えるだろう。
意気揚々と自宅の扉を開けると、今日の成果であるショートソードが所狭しと並んでいた。
温泉に行く前に行っていた『準備』とはこれの事だ。
ゲームで良くある鍛治の環境を整えていた。
鍛治道具と素材を購入したため、正真正銘の無一文にはなってしまったが、余りある利益を得る事が出来た。
鍛治はスキルレベルに応じて作成出来るものの難易度や消費APが変わってくる。
ステータスに与える影響は微々たるものだが、武器改造の幅が広がるのは大きい。
「序盤にしては良い武器になったしな。」
初期装備のショートソードに改造を施し、僅かに強くなった相棒を撫でる。
改造により武器は大きく変貌を遂げる。
例えば武器に属性や追加効果を付与出来るし、装備するだけでステータスが上昇する効果を付ける事もできる。挙げ句の果てには、武器の見た目以上に攻撃範囲を伸ばす事まで出来るのだ。
強力な効果にはそれ相応のスキルレベルと素材が必要になるが、これが無ければフェアリアルは始まらない。
現状はステータスを微増させる程度の改造しか出来ないが、夢が広がる。
今後も鍛治のスキルレベル上げは優先していきたいが、ネックとなるのは消費APだ。
兎に角、試行回数が物を言うスキルレベル上げには膨大なAPが必要になる。
現在のレベルに対して作成難易度が低いものだと消費APは少なくとも経験値は雀の涙。
逆に高いと消費APが法外で最大値まで回復していてもAP不足により作成不可。
スキルレベルに見合った難易度の武器作成や改造をひたすらに繰り返す他無いのだ。
ちなみに、何故かきのこ回復は対策されている。状態異常中は鍛治や錬金、料理と言ったクリエイティブな作業は軒並み使用不可になる仕様だ。
「今日は温泉周回でAP回復しまくったおかげで鍛治が捗ったな。欲を言えば閉店時間まで周回したかったけど…。」
ユネの顔を思い出し、ブルリと震える。
明日はサクッとボスを倒して、出来れば次のダンジョンもクリアしておきたい。
早起きしようと心に決めて、瞼を閉じた。
「でさ、何でこんな状況になってるんだっけ。」
【微風の森】のボス戦手前で、何故か同行者がいる状況に頭を抱えつつ二人に聞いてみる。
【微風の森】のボスはさっさと倒そうと、早朝から出掛けた俺を出迎えたのはコスプレ騎士ことマールと鬼看板娘と勝手に命名したユネの二人だった。
まさか自宅の前で出待ちしてるとは思わないじゃん。普通にビビった。
「今日もやらかすと確信があったからな。逃げられないように早起きしたんだ。」
「マールちゃんだけ朝から待ってるのも辛いだろうから、午前中だけ付き合う事にしたんだよ。」
「あ、はい。」
やらかすという言葉はいささか遺憾だが、まあ心当たりが無くもない。
実際、今日中にボスを二体倒す予定だし、そうなったら『やらかし』に該当する可能性が大いにあり得る。
難易度的には街の住民の方がレベルが圧倒的に高いため、ボスを倒した事があるかもしれない。
でも、『カイサが倒す』というのが物語において重大な意味を持つのだ。
「まあ良いか、この二人なら危険も無いだろうし。」
「危険なのはカイサ殿だ。」
「関係ないけど、今日お金が手に入ったら支払いは忘れずにきてね。」
ユネの一言にやる気が大きく削がれながらも、ボス戦に突入する。
大きな花の蕾が開き始め、中から出てきたのは人間の女性を模った植物モンスター。
「ドライアド……。そこらのモンスターとは格が違うぞ、気を付けるんだカイサ殿。」
「厄介なのは蔦を鞭のように打ち付けてくる攻撃だよ。弱ってきたら毒も吐くから注意してね。」
苦虫を噛み潰したような顔をしながら解説をする二人の気持ちは、まあ、わからなくはない。
初めに戦うボスであるドライアドだが、実は中々に強い。
広く避け難い広範囲攻撃と状態異常で苦戦したプレイヤーも多いとか。
でもそれも初見ならば、の話だ。
「ほい。」
ドライアドのボス演出直後、これで攻撃するぜ!とプレイヤーに見せつけんばかりに伸ばされた蔦の先端がドライアドの弱点部位。
本来は動き回る蔦の先端など捉えられるものではないが、登場演出直後ならば話は別。
目の前で揺れる弱点をつつくだけで、初期ステータスでもボスが瀕死になる程のダメージが通る。
本来であれば、瀕死になると怒りモード、いわゆる発狂状態になり厄介なのだが──
金策の狩りで僅かながら上がったレベルに、強化された相棒の力も合わされば結果は当然。
「ァァァァァァァァァァ!!!」
「ボス、撃破!」
「「ええぇ~……。」」
これが百万ユグを犠牲にした力だ!
軽く身体を伸ばすと、ポキポキと骨が鳴る。
すっかり日も暮れ、疲労感が半端では無い。
無事にマールからも解放されたが、流石に今から街の外に出る気分では無いな。
「まあ、成果はあったし、悪く無いか?」
多額の借金を背負ってしまったものの、本来は資金不足で中々入れない温泉に無理して入れた事でかなりのスキル経験値を稼がせてもらった。
「いや~、怒られた甲斐もあったもんだな。」
メニューから確認出来るスキルレベルを見てにやける。
ストーリーの進行こそ出鼻を挫かれたものの、スキルレベルは上々の戦果だと言えるだろう。
意気揚々と自宅の扉を開けると、今日の成果であるショートソードが所狭しと並んでいた。
温泉に行く前に行っていた『準備』とはこれの事だ。
ゲームで良くある鍛治の環境を整えていた。
鍛治道具と素材を購入したため、正真正銘の無一文にはなってしまったが、余りある利益を得る事が出来た。
鍛治はスキルレベルに応じて作成出来るものの難易度や消費APが変わってくる。
ステータスに与える影響は微々たるものだが、武器改造の幅が広がるのは大きい。
「序盤にしては良い武器になったしな。」
初期装備のショートソードに改造を施し、僅かに強くなった相棒を撫でる。
改造により武器は大きく変貌を遂げる。
例えば武器に属性や追加効果を付与出来るし、装備するだけでステータスが上昇する効果を付ける事もできる。挙げ句の果てには、武器の見た目以上に攻撃範囲を伸ばす事まで出来るのだ。
強力な効果にはそれ相応のスキルレベルと素材が必要になるが、これが無ければフェアリアルは始まらない。
現状はステータスを微増させる程度の改造しか出来ないが、夢が広がる。
今後も鍛治のスキルレベル上げは優先していきたいが、ネックとなるのは消費APだ。
兎に角、試行回数が物を言うスキルレベル上げには膨大なAPが必要になる。
現在のレベルに対して作成難易度が低いものだと消費APは少なくとも経験値は雀の涙。
逆に高いと消費APが法外で最大値まで回復していてもAP不足により作成不可。
スキルレベルに見合った難易度の武器作成や改造をひたすらに繰り返す他無いのだ。
ちなみに、何故かきのこ回復は対策されている。状態異常中は鍛治や錬金、料理と言ったクリエイティブな作業は軒並み使用不可になる仕様だ。
「今日は温泉周回でAP回復しまくったおかげで鍛治が捗ったな。欲を言えば閉店時間まで周回したかったけど…。」
ユネの顔を思い出し、ブルリと震える。
明日はサクッとボスを倒して、出来れば次のダンジョンもクリアしておきたい。
早起きしようと心に決めて、瞼を閉じた。
「でさ、何でこんな状況になってるんだっけ。」
【微風の森】のボス戦手前で、何故か同行者がいる状況に頭を抱えつつ二人に聞いてみる。
【微風の森】のボスはさっさと倒そうと、早朝から出掛けた俺を出迎えたのはコスプレ騎士ことマールと鬼看板娘と勝手に命名したユネの二人だった。
まさか自宅の前で出待ちしてるとは思わないじゃん。普通にビビった。
「今日もやらかすと確信があったからな。逃げられないように早起きしたんだ。」
「マールちゃんだけ朝から待ってるのも辛いだろうから、午前中だけ付き合う事にしたんだよ。」
「あ、はい。」
やらかすという言葉はいささか遺憾だが、まあ心当たりが無くもない。
実際、今日中にボスを二体倒す予定だし、そうなったら『やらかし』に該当する可能性が大いにあり得る。
難易度的には街の住民の方がレベルが圧倒的に高いため、ボスを倒した事があるかもしれない。
でも、『カイサが倒す』というのが物語において重大な意味を持つのだ。
「まあ良いか、この二人なら危険も無いだろうし。」
「危険なのはカイサ殿だ。」
「関係ないけど、今日お金が手に入ったら支払いは忘れずにきてね。」
ユネの一言にやる気が大きく削がれながらも、ボス戦に突入する。
大きな花の蕾が開き始め、中から出てきたのは人間の女性を模った植物モンスター。
「ドライアド……。そこらのモンスターとは格が違うぞ、気を付けるんだカイサ殿。」
「厄介なのは蔦を鞭のように打ち付けてくる攻撃だよ。弱ってきたら毒も吐くから注意してね。」
苦虫を噛み潰したような顔をしながら解説をする二人の気持ちは、まあ、わからなくはない。
初めに戦うボスであるドライアドだが、実は中々に強い。
広く避け難い広範囲攻撃と状態異常で苦戦したプレイヤーも多いとか。
でもそれも初見ならば、の話だ。
「ほい。」
ドライアドのボス演出直後、これで攻撃するぜ!とプレイヤーに見せつけんばかりに伸ばされた蔦の先端がドライアドの弱点部位。
本来は動き回る蔦の先端など捉えられるものではないが、登場演出直後ならば話は別。
目の前で揺れる弱点をつつくだけで、初期ステータスでもボスが瀕死になる程のダメージが通る。
本来であれば、瀕死になると怒りモード、いわゆる発狂状態になり厄介なのだが──
金策の狩りで僅かながら上がったレベルに、強化された相棒の力も合わされば結果は当然。
「ァァァァァァァァァァ!!!」
「ボス、撃破!」
「「ええぇ~……。」」
これが百万ユグを犠牲にした力だ!
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