女子高生達と俺

saikororo

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三日目

♯1

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快晴だった。

逃げ場所を作らせてくれない温風に撫でられながら、駅からバスに、バスから徒歩で向かった先は旅館だった。

山奥で構えるそこまでくれば、風も涼やかで、三人の談笑に混ざれる程には余裕が出来ていた。

避暑地で有名であるにも関わらず、立地上人気が少ない温泉地であると地元の人から聞いた。

確かに、家族連れがちらほら見える程度で、周囲の目が気になる身分としては助かった。

茅葺き屋根の歴史を感じる佇まい。落ち着いた年代の中居さん達。風と共に送られる硫黄の香り。

正直、好みだった。

海できゃっきゃとされてもと思っていた手前、この状況に胸を打たれていた。

部屋が一部屋のみであった事を除けば理想系である。ちなみに受付の際には親戚の子達であるとしつこめに匂わせておいた。

「三人同時に買われたんですぅ。とか言えば良かったですか?」

中居さんに部屋へ案内をされる最中、彼女がそんな事を耳打ちするものだから、盛大に咳き込んでしまった。

社会的に死んでから立ち直れる程甘い世間ではない。

中居さんが視界から消えるまで、俺は三度程、女子高生からのからかいで死の際を見た。

「いい感じだね。選んで正解だったかも」

「ねー!なんかエロいね!」

「え、なんで?」

「お座敷、芸者、お止めになってー!みたいなやつ!」

「知識の偏りが凄い。さすが帰国子女」

彼女と麦が言う様に、室内も申し分なかった。

広さもある。開かれた襖を締めれば二間にも出来る。就寝の際には必ず仕切ろう。そう決めた。

何より露天風呂付きなのが良い。

景色は一望できないが、管理された庭が美しい。

三人のせいで恐らく利用出来ないだろうが、雰囲気だけでも楽しみたい。

・・・最近、危険予測と諦めが良くなった気がする。
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