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04 昔の恋の夢
その3
しおりを挟むカーテンの隙間から洩れ入る光の剣が痛い。
いったい何時になったのだろう?
こんな夢を見てしまったのは、数日前に似た姿を見かけたからだろうか。
こんなところにいるはずないのだから彼のわけないのに、似たその姿に心臓が跳ね上がった。
胸の中でかってに飛び回る蝶を抑えながら、被っていた帽子を目の上までグッと下げた。
そして似ている後ろ姿をこっそり目で追った。
もし本当に彼だとしても私には気付かないだろうと思いながら。
お化粧もしていない私。
白髪も染めていない私。
目尻へ皺が刻まれた私。
躰へ脂肪をまとった私。
日が暮れてくると玄関を開ける音がした。
「ただいま」
リビングの扉から夫が顔を出す。
「おかえりなさい」
「お風呂入れる?」
「まだお湯を張っていないわ」
「シャワー浴びながら、お湯を張って入ってくる」
「夕食の支度をしておくわね」
「ゆっくりでいいよ」
バタンと扉が閉まる音がすると、廊下で響く足音が遠のいてゆく。
リビングへ入ってくる前に匂いを落としておこうという気遣いはまだあるようだ。
あなたはどこでどんな夢を見てきたの?
ずっと仕舞い込んでいたリップスティックの桜色をのせた唇を指先でそっとなぞった。
寝室へ入ると広い背中がつくる藍色の山が静かに沈んだり膨らんだりを繰り返している。
灯を落として、私も自分のベッドへ入った。
平安時代の人は、『夢へ現れるのは、その人が自分を想ってくれているから』と信じていたらしい。
もちろんそんな自惚れた思いは無いのだけど、そう思うことで玉響でも心が華やぐのならばいいような気がする。
家の外の世界で夢を見つづける夫。
ベッドの中の世界で夢を見はじめる私。
「おやすみなさい」と瞼を閉じた。
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