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01章ユーリ・アッシュ・エルフネッド
主人公、修行中 その頃まわりでは…
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本体のある聖域庭園に戻る途中、ユーリと出くわした。
木漏れ日が艷やかな腰まである金髪を輝かせ、白い肌と緑を基調とした狩人のような姿はたしかに森の妖精のようだ。
だがその美しい顔には長寿族として何百年も生きた叡智が宿った落ち着いた表情をしている。前世のイメージでいうと北欧系知的美人という感じだろうか。
「こんなところにいたのか、探したぞ」
「ユーリ、ちょうど良かった。頼みがあるんだが」
「ほほう、世界樹様が一介のエルフ如きに頼みごととは、身に余る光栄だな」
「茶化すなよ。そういうこと言うんなら、叡智と美貌を兼ね備えたそなたにしか頼めないことだ、って言うぞ」
「ふうん、本当にそう思っているのか」
金髪を撫でながらまんざらでもなさそうな顔を近づける。続けて気の利いたセリフが思いつかないうえに、美女が目の前にいるのでどぎまぎしてしまった。なんか負けた気分だ。
それをごまかす為にモーリとの話を努めて事務的にユーリに話す。
「ふむ、そういう状況か。わたしとしてもヒト族の政治には興味は無いが、世界樹の森が関与しているならそうも言ってられないな。わかった、クッキーがいない間はモーリと協力して森を守るとしよう」
「ありがたい、助かるよ」
「御礼はいらない、自分の家を守るのは当然だろう」
そう言ったユーリの目に少し影がさした。
幼い頃、エルフの村を襲われて全滅したことを思い出させたかもしれない。そんな思いがつい口に出てしまった。
「もし、危なくなったら何をおいても逃げてくれ」
ユーリが大事だから心配だから、そんなつもりで言ったのだが顔を曇らせてしまった。
「それは──ああ、そうだな、それよりはそうならない様にするよ」
ユーリにしては歯切れの悪い返事をして、モーリのところに行くと言って、その場を離れていった。
追いかけて話を続けるべきか迷ったが、その間にだいぶ離れてしまったので諦めて本体の方へ向かうことにした。
※ ※ ※ ※ ※
聖域庭園に戻り、地下空洞に入るとペッターとアディが飽きもせずにもめていた、このふたりはもめないと話せないのだろうかと思う。
「今度は何でもめているんだい」
「あ、クッキー、きいてよ、このハーフドワーフ全然アタシの言うこときかないのよ、高位樹木精霊のアタシの言うことをよ」
まるで駄々っ子のようにアディがオレに文句を言うと、ペッターはペッターでうんざりした表情でオレにうったえる。
「クッキーからも言ってやってくれ、お前の仕事がすまないと次がやれないって。それなのにこのバカ精霊はそこをすっ飛ばして造ればいいなんて言うんだよ、そんなもんただの役立たずアーマーにしかならないって、何度も、何度も言ってるのに聞かないんだよ、このバカ精霊が」
「誰がバカ精霊よ」
また揉めそうになったので、アディに今後の方針を説明して、しばらく本体の未整理だった前世の記憶をアルバムや日記のように整理して、思い出してくると伝えた。
「というわけで、10日ほど不在にする。なるだけ早く済ませるつもりだ、ペッターもしばらく頼むよ」
「ああ、それなら気分転換にそのマリオネットをメンテナンスしておく」
モノ作りの気分転換に別のモノ作りか。ペッターらしいな。
「それじゃ行ってくる」
それだけ言うと、精霊体となり世界樹に戻った。
※ ※ ※ ※ ※
世界樹はミスマ世界と精霊界を繋ぐ門であり、そこはイメージでいくらでも風景が変わるところだ。
オレはココを生前住んでいたアパートの部屋と同じデザインにして、データは本として本棚に並べているカタチで記録してある。
「生前の記憶は、このゴチャゴチャした未整理の積ん読のところか。さて、始めるか」
生まれてから大学生になるまでは、まあいいか。普通の人生をおくってたと思う。
親父は早逝したので母子家庭だったから、学費を稼ぐためにバイトしまくって、早くから就職を視野に入れてたからつきあいの悪いマジメなヤツと言われてたっけ。
このあたりの記憶を整理してプログラミングの基礎を思い出す。
それから社会に出て、小さなIT会社に勤めた。
小さいだけあって顧客も商店や零細企業を相手にしており、細やかなシステム作りをウリにして頑張ったっけ。
おかげで様々な業種を広く浅く知らなければやれなかったな。
そうそう、ここら辺がいま必要な知識と経験なんだ。しっかり思いだなければ。
思い出すと当時と同じ仕事をこなしてみよう、当時の感覚が身につくまで。
なんだが修行みたいだな、いや、チュートリアルか。どっちでもいい、ユーリのためにもしっかりと身につくまで何度もやるぞ。
こうしてオレの前世を思い出して身につける間、外の世界とは完全シャットアウトした。
外界がどうなっているかそれなり気になるが、ユーリに任せておけば大丈夫だろう。頼むぞユーリ。
木漏れ日が艷やかな腰まである金髪を輝かせ、白い肌と緑を基調とした狩人のような姿はたしかに森の妖精のようだ。
だがその美しい顔には長寿族として何百年も生きた叡智が宿った落ち着いた表情をしている。前世のイメージでいうと北欧系知的美人という感じだろうか。
「こんなところにいたのか、探したぞ」
「ユーリ、ちょうど良かった。頼みがあるんだが」
「ほほう、世界樹様が一介のエルフ如きに頼みごととは、身に余る光栄だな」
「茶化すなよ。そういうこと言うんなら、叡智と美貌を兼ね備えたそなたにしか頼めないことだ、って言うぞ」
「ふうん、本当にそう思っているのか」
金髪を撫でながらまんざらでもなさそうな顔を近づける。続けて気の利いたセリフが思いつかないうえに、美女が目の前にいるのでどぎまぎしてしまった。なんか負けた気分だ。
それをごまかす為にモーリとの話を努めて事務的にユーリに話す。
「ふむ、そういう状況か。わたしとしてもヒト族の政治には興味は無いが、世界樹の森が関与しているならそうも言ってられないな。わかった、クッキーがいない間はモーリと協力して森を守るとしよう」
「ありがたい、助かるよ」
「御礼はいらない、自分の家を守るのは当然だろう」
そう言ったユーリの目に少し影がさした。
幼い頃、エルフの村を襲われて全滅したことを思い出させたかもしれない。そんな思いがつい口に出てしまった。
「もし、危なくなったら何をおいても逃げてくれ」
ユーリが大事だから心配だから、そんなつもりで言ったのだが顔を曇らせてしまった。
「それは──ああ、そうだな、それよりはそうならない様にするよ」
ユーリにしては歯切れの悪い返事をして、モーリのところに行くと言って、その場を離れていった。
追いかけて話を続けるべきか迷ったが、その間にだいぶ離れてしまったので諦めて本体の方へ向かうことにした。
※ ※ ※ ※ ※
聖域庭園に戻り、地下空洞に入るとペッターとアディが飽きもせずにもめていた、このふたりはもめないと話せないのだろうかと思う。
「今度は何でもめているんだい」
「あ、クッキー、きいてよ、このハーフドワーフ全然アタシの言うこときかないのよ、高位樹木精霊のアタシの言うことをよ」
まるで駄々っ子のようにアディがオレに文句を言うと、ペッターはペッターでうんざりした表情でオレにうったえる。
「クッキーからも言ってやってくれ、お前の仕事がすまないと次がやれないって。それなのにこのバカ精霊はそこをすっ飛ばして造ればいいなんて言うんだよ、そんなもんただの役立たずアーマーにしかならないって、何度も、何度も言ってるのに聞かないんだよ、このバカ精霊が」
「誰がバカ精霊よ」
また揉めそうになったので、アディに今後の方針を説明して、しばらく本体の未整理だった前世の記憶をアルバムや日記のように整理して、思い出してくると伝えた。
「というわけで、10日ほど不在にする。なるだけ早く済ませるつもりだ、ペッターもしばらく頼むよ」
「ああ、それなら気分転換にそのマリオネットをメンテナンスしておく」
モノ作りの気分転換に別のモノ作りか。ペッターらしいな。
「それじゃ行ってくる」
それだけ言うと、精霊体となり世界樹に戻った。
※ ※ ※ ※ ※
世界樹はミスマ世界と精霊界を繋ぐ門であり、そこはイメージでいくらでも風景が変わるところだ。
オレはココを生前住んでいたアパートの部屋と同じデザインにして、データは本として本棚に並べているカタチで記録してある。
「生前の記憶は、このゴチャゴチャした未整理の積ん読のところか。さて、始めるか」
生まれてから大学生になるまでは、まあいいか。普通の人生をおくってたと思う。
親父は早逝したので母子家庭だったから、学費を稼ぐためにバイトしまくって、早くから就職を視野に入れてたからつきあいの悪いマジメなヤツと言われてたっけ。
このあたりの記憶を整理してプログラミングの基礎を思い出す。
それから社会に出て、小さなIT会社に勤めた。
小さいだけあって顧客も商店や零細企業を相手にしており、細やかなシステム作りをウリにして頑張ったっけ。
おかげで様々な業種を広く浅く知らなければやれなかったな。
そうそう、ここら辺がいま必要な知識と経験なんだ。しっかり思いだなければ。
思い出すと当時と同じ仕事をこなしてみよう、当時の感覚が身につくまで。
なんだが修行みたいだな、いや、チュートリアルか。どっちでもいい、ユーリのためにもしっかりと身につくまで何度もやるぞ。
こうしてオレの前世を思い出して身につける間、外の世界とは完全シャットアウトした。
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