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第1部

その5

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喜んでいるハジメをよそに、千秋は蛍に寄り話しかける。

「ハジメの趣味の悪さ変わってないね」

体育会系のハジメは、あまりファッションに興味がない。なので学生時代、初めてのデートのコーディネートに2人がかりで協力したのを思い出した。

「まあまあ、本人が喜んでいるんだからいいんじゃない」

「でも心配」

「大丈夫よ、意外とそんなハジメが一番最初に結婚するかもね」

「まっさかぁ」

「なに2人でこそこそ話してんのよ。そういう訳で来月から名古屋に住むからね。千秋も会社は名古屋なんでしょ、今後は名古屋で集まろうね。千秋はいい店探しといてね」

「はいはい。ケイは大丈夫だった。なんか迷惑かけなかった」

もとの席に戻りながら蛍に話をふると、

「特にないわ、シフトを変わっただけだし、エステコースのお試しと宣伝でチャラかな」

「何それ、エステコースって」

蛍は会員用コースとして、エステと美容院とコーディネートのセットコースを考えているとの話をすると、ハジメが食いついた。

「いいなぁ、あたしもやってもらいたいぃ」

「そのうちね。それではメインイベント、千秋はどうだったの」

千秋は今日の朝からあった事を話した。

「はぁ、最初は部下がコンペに行って、千秋は会議という名の吊し上げをされる筈だったのが、コンペの時間がずれて行けると安心したところ、会議が思ったより長引いたと」

「横領の濡れ衣を着せられかけたけど、切り抜けて、お人好しにもそいつらを助けた為にコンペに遅れて、さらに渋滞につかまって間に合わないと思ったけど、例の舎弟に助けてもらい、たまたま聞けたニュースのおかげで負け確実のプレゼンを逆転して勝ち取ったと」

千秋の話を一通り聞いたあと、蛍とハジメは顔を見合わせて笑いだした。

「あはははは、何なのよあんた、まるっきりドラマみたいじゃない、今日一日だけでクライマックス何回やってんのよ」

「ほんとほんと、あたしは土曜の事がクライマックスだと思ってたのに、まだあるんだもん、どういう星の下に生まれてんのよ」

「知らないわよ、そっちは笑い事だけど、こっちは大変だったんだから」

笑いがとまらない2人に、千秋は膨れっ面をする。

「はぁ、可笑しかった。なんにしろ上手くいって良かったね。これでクビは避けられたんでしょ」

「たぶんね。どうなるか分かんないけど、少なくとも部下との約束は必ず守るわ、たとえクビになっても」

「それじゃ本末転倒でしょうが」
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