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変動的不等辺三角形はじまる メグミ編

その5

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 ぱっと見はスレンダーな、それも美人な女性にしか見えなかった。思わず胸と股間を見る。男であるのを確認してホッとする。

 恵二郎は元の席に座ると僕の目を見つめる、その目には意志が感じられた。

「けいちゃん、途中から聴こえてたからアタシからもはっきり言うね。アタシはもうメグミなの。もう恵二郎って呼ばないで」

「な」

言葉が出なかった。
 先程までの気弱な弟でもなく、昨夜までのハイテンションなメグミでもない。こんな恵二郎を見たことがない……、いや、あった。大学時代の、自信を持ったばかりの頃の恵二郎だ。
 どういうことだ、性格がこんなにころころ変わるなんて。

「さっきのアタシを見たでしょ、あれが昔のアタシ。自信が無くて打たれ弱くすぐに泣き出してしまう恵二郎なの。でも化粧をしてメグミになれば強気になれるの、自信が持てるの、アタシはずっとメグミで生きていきたい」

 言葉強く、自分の考えと意志を言える。姿勢も腰が引けてない。隣で見ていた朝日くんもよく言ったという顔をしている。何も言い返せなかった……。

「どうしても許せないというなら兄弟の縁を切ってもいい、アタシはメグミなの」

そこまでかと思い、とどめを刺された……、ただ「わかった」とだけしか言えなくて席を立ち店を出た。




 半分放心状態であてもなく歩いていると小さな公園に着いたので、そこのベンチに座り込む。
 考えがまとまらなかった、何がどうしてこうなったんだろう。
 朝日くんも恵二郎も美恵も蓮池さんも、みんなメグミだという。僕だけが恵二郎だといっている。僕がおかしいのだろうか。僕だけがおかしいのだろうか。

 誰かに話したい、誰かと話したい、どうすればいいか聞きたい、教えてほしい、僕はどうすればよかったのだろうか。

 ポケットに入ってたスマホが震えた、通話着信だ。ドキリとした。
 美恵だろうか、恵二郎ともめないと約束したのに破ってしまった。
 北今くんか玉野くんだろうか、お店に連れて行く約束したのにどうしよう。
 恐る恐る相手を見ると蓮池さんだった。

 半分ほっとしながら通話に出る。

「あ、班長、昨日はお疲れさまでした。今いいですか」

「ああ。蓮池さんもお疲れさま。どうしたの」

「昨日の帰り際に約束したじゃないですか、話をしましょうって。それとももう解決しましたか」

──絶妙なタイミングだな。福音ってこういうことを言うんだろうなきっと。

「いや、そうだね。覚えているよ。いつ会う? どこで会う?」

 大須にいることを伝えると、名古屋駅で落ち合うことを約束して通話が切れる。

 勢いよく立ち上がると、名古屋駅へと向かった。
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