冬のカフェからはじまる長いプロポーズ

藤井ことなり

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変動的不等辺三角形はじまる メグミ編

双丘への想い

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 アルキメデスはあの原理をお風呂で見つけたらしいが、僕は、というか僕たちは二人で入ると湯がすぐ溜まるという原理を発見した。

「一緒に入るの久しぶりだね」

「ああ」

 僕が湯船にもたれかかり、美恵が僕にもたれかかる。
 対面で座りたいのだが、風呂の栓とチェーンが邪魔なのとユニットバスではやはり狭いので同じ向きにして入るしかなかった。

 同棲したばかりの頃はしょっちゅう一緒に入っていたのだが、まあ大抵ただの入浴では終わらない。
 しかも夏の始まりだったから酸欠状態になったり脱水症状になったりしてしまったので、一緒に入るのはやめておこうという事になったのだ。

 後ろから覗き込むように美恵のおっぱいを見る。
 風呂の湖に狭い入江と丸く豊かな岬がふたつある、水中からその岬を持ち上げる。

「あん」

 元はといえばこのおっぱいをメグミが見たのが原因なのだ、お仕置とばかりに乱暴に揉みしだく。

「あん、ちょっといたいってば」

 だが今日もう一度メグミに会いに行こうと決心したというか文字どおり背中を押したのは、このおっぱいでもある。
 だから今度は御礼のつもりでやさしく揉みしだく。

「はぁん……もう……」

 ──揉みやすい、揉みやすい、揉みやすい。対面だと手首が疲れるけど、後ろからならいろんな揉み方ができる。
 下からすくい上げるように揉む。
 御手玉のようにぽんぽんと同時に上げる。
 次に左右交互に上げる。

「御手玉じゃないってばぁ」

 今度は包み込むように持ち、左右に広げたり近づけたりする。
 内回し、外回し、無限大軌道……

「圭一郎さん」

 僕の腕をとり、おっぱいから引き剥がすと美恵はこちらを向く。

「揉み過ぎ」

「ごめん」

 美恵の目でも顔でもなくおっぱいに謝る。ピンク色のトップがこちらに向かって責めてくる。
 生意気なおっぱいってよく聞くけど、美恵のはそう表現していいカタチだ。

「風引くといけないからあがろう」

「そうだね」

続きはベッドでだ。




 エアコンのおかげで部屋は暖かくなっていた。
 体を拭いてパジャマに着替えていたが、結局脱ぐ。
 ベッドに仰向けで寝そべっている僕に美恵がまたがる。形の良い乳房がそこにはあった。

 ふたりが身体を重ねるようになった頃、僕は美恵の乳房を褒めたことがある。それ以来、睦事の前に美恵が乳房を見せて褒めるというのがルーティーンとなっていた。

 わずかに左胸の方が大きいが、ほぼ均一のサイズ。上も下も丸みのあるお椀型で、乳首は挑戦的にこちらを向いているが、ちょっとだけ外向きになっている。それがまたいい。

 双丘の間は狭く、上の方が綺麗なYの字を浮き上がらせている。胸元の開いた服で出かけると、目のやり場に困る。いや、それよりも誰にも見せたくないから周りが気になる。だが僕もみたい、だが見せたくない、だがみたい、だがみせたくない、ダガミタイ、ダガミセタクナイ……。

 美恵が身体をひねったので双丘が揺れる。横からの形は丘の下の方の丸みが官能的だ。双丘は前からより、横から見るべきではなかろうか。トップから二の腕の下あたりまでの横腹に描く曲線は芸術と言ってよいくらい美しい……。

「どう」

 さわりたいの、もみたいの、もちあげたいの、もてあそびたいの、なめたいの、それともすいたいの……

 双丘がそう問いかける、いや詰問してきている。

 僕の手のひらが、そこに向かって宇宙船のドッキングみたいにゆっくりと向かっていく。
 しかしぎこちなくなる。僕は手首が固い、だから正面から双丘を触ろうとすると、いつも下から持ち上げるようなかたちになる。バレーボールのトスみたいな感じになる。

 さっきも思ったが、双丘というのは後ろから触るようにできているのではなかろうか。
 美恵を後ろから抱きしめて、双丘を持ち上げるかたちが一番しっくりとくる。

 だがそうすると見ることができない。
神がつくりたもうた神々しいほどの、この造形美を見ないなんてあり得るだろうか。いやない。

 視覚と触覚を同時に堪能するにはどうしたらよいのだろうか、手首を軟らかくするためストレッチを入念にするべきか、後ろから覗き込むために首を伸ばす努力をするべきだろうか……。

 今はストレッチしか選択肢は無い。風呂に入っている時に入念にすればよかったと後悔する。あと少しで触れるところまできて美恵が僕の手をとりいつもの位置へと誘う。



あああ、落ち着くぅぅぅぅ……



 乳房というのは、なにゆえこんなにも落ち着くのだろう……

 男だからなのか、僕がマザコンなのだからか、いや、マザコンではないはずだ、なのにこの双丘が好きだ、マザコンでもないのに好きなのはなぜだろう。

 双丘が好きなのはマザコンとなぜ考えた。
 それは赤ちゃんが母乳を飲むから、吸うからだ。そうだよ双丘はもともと赤ちゃんのものだよ、母が生まれた子のためにあるんだよ、だから男も女も関係なくみんな双丘が好きなんだよ、だから僕が好きなのはけっして恥ずかしいことじゃない、当たり前の事なんだよ。

 だから今、僕が美恵の双丘を触っているのは、けっしておかしくないんだ。

 いやしかしだ、それは赤ちゃんのためだろう。独身でまだ三十前とはいえ、男の子を卒業して、いちおうは大人である、成人男性である、いやだから双丘に興味あるんだが。

 いやいやそうじゃなくて、それは母乳目的で好きではなくて、違う目的で好きだということだ。ならばそれはなんだ。

 双丘は性器ではない、それは男女ともに腰のあたりにある。それを見て共に性的興奮をするのは変わらない。
 ならば双丘を見てそうなるのは何故だ、それも男だけなのは。

 うろ覚えの知識だが、たしか原始の人間は四足歩行的な姿勢だったから、オスはメスのお尻が視野に入りやすく、それで発情するとかなんとかいってたっけ。
 それが二足歩行になった時、お尻の代行的な進化で、双丘を見て興奮するようになったとかなんとか……

 つまり、オスが、男が、メスの、女の双丘を見て興奮するのは、発情するのは、大いなる進化の過程で育まれた当たり前の感情なんだ。だから僕が双丘を好きなのは決しておかしくない、うん、胸を張ってそう言える、胸だけに。

「圭一郎さん……」

 美恵の、じらさないではやくぅ的な甘えた声に、ごちゃごちゃ考えていたのが、すべて吹っ飛んだ。
 美恵の双丘の誘惑により欲望のまま、いつもどおり顔を埋めてさらに両端から熱く挟み込んだのだ。


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