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変動的不等辺三角形はじまる メグミ編

メグミ編 エピローグ

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 翌朝、つまり大晦日の今日、僕たちはまったりとした午前を過ごしていた。

 掃除好きで普段からマンションにいる美恵のおかけで大掃除しなくてすんでいる。
 お節料理なんかも節約料理バージョンで簡単に済ませた。それに今どきは元旦から開いている飲食店やスーパーはあるから慌てなくていいだろう。

 年賀状は僕の判断で廃止している。取引先には会社から出しているし、班のメンバーにはメールでするように伝えてある。

「美恵は年賀状を出すのかい」

「ううん、メールですましてる。師匠もそういうのめんどくさがるから」

 リビングで並んでソファに座り、一挙放送のドラマをなんとなく観ながらとりとめのない会話。ふと幸せだなと感じる。

 長年心の隅に引っかかっていた恵二郎との関係が解決したことのせいだろう、それも美恵のおかげだ。
 だから美恵に対して恋愛感情だけでなく親愛、家族のような情も感じている。
 僕たちはやはり結婚して夫婦に、そして家族になるのだろう。

「圭一郎さん、今日はどうする」

「そうだな……、夜に真清田神社に二年参りするとして、年越し蕎麦は出かける前にウチで食べるだろ、それ以外はとくにないかなぁ」

──あ、ひとつやり忘れてたことがあった。

「美恵ん家は年越し蕎麦はどういうやつなの」

「うちはえび天が入ってるやつ」

「おお豪華だな」

「そうでもないよ。スーパーで売ってる惣菜のえび天と小松菜の刻んだの、それと一番安い生ソバとめんつゆでつくったのだから。圭一郎さんのところはどういうのだったの」

「うちは旅籠だったから忙しい合間をぬって食べてたなあ、かけそばにまかないの具が乗っていた気がする」

「そうなんだ」

「うん、美恵の話聞いてたらえび天のヤツ食べたくなったな。買いに行こうか」 

「うーん……、ごめん、作業場の整理をしたいから」

「まだやるのかい」

「うん、ちょっとね」

「それならひとりで行ってくるよ。昼までには帰るから」

 マンションからすぐそばにあるエム鉄百貨店の地下売り場にならあるだろう。ボサボサ頭を整えて昨日とは別のセーターと綿パンに着替えて出かける。

 壱ノ宮総合駅のコンコースまで来ると、先に忘れていた用件を済ませることにするため電話をかけた。

──はい

「おはよう、蓮池さん。今いいかな」

──おはようございます班長、はい、大丈夫ですよ

「昨日はありがとう。おかげでメグミと和解できたよ」

──そうなんですかー、よかったー 

「うん、今後は弟ではなく妹としてみることにした」

──そうですか。どうなってそうなったんですか

「それがさ……」

 僕は昨夜の変な顛末を話す。
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