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雷続きの村
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「これはどうしたことか、、、。」
「雷神様が怒ってらっしゃるのだ。」
山々に囲まれた村でのことだった。
雷が鳴り止まず、村では雷神様の祟りだと騒がれ始めた。
それもそのはず。
雷は2週間くらい続いていたのだ。
「生贄じゃ。生贄が必要じゃ。」
村一番の長寿である大婆様が言い出した。
*
そして選ばれたのがあたしだった。
「大婆!何故ですか?何故うちの娘が生贄にならなければならないのです?!」
お父さんは怒りを露わに大婆様に詰め寄る。
「お父さん。あたしは巫女よ?大丈夫!きっと雷神様の怒りを鎮めて帰ってくるから。」
あたしはお父さんをなだめる。
「まどか。お前は自分の定めを分かっておる。頼んだぞ。」
大婆様はそれだけ言うと、あたしに大婆家に代々受け継がれている数珠を渡す。
「なんでなんだ、、、。」
お父さんはうなだれ、その場にしゃがみ込んだまま、床を何度も手で叩く。
「大婆様、お父さん、それでは行ってまいります!」
「まどか。行く場所は分かっておるか?」
「はい。大婆様。」
*
それは誰も立ち入らない、雷神様の滝。
雷は一層激しくなり、あたしは着てきた巫女装束で、滝の中に入る。
大婆様からもらった数珠を持ち、一心不乱に祈りをささげる。
*
祈りを何時間ささげただろう?
とてつもなく大きな雷が鳴った。
「誰だ?」
大きな雷と共に頭に直接語りかけてくる声。
「雷神様でございますか?」
あたしは滝にうたれながらも大声を出した。
「何用だ?ここは聖地。人間が入っていい場所ではない。」
ドスの効いた低い声。
あたしは少し恐怖を覚える。
「早々に立ち去れ。」
あたしは震えてる。
でも帰る訳にはいかないのだ。
「雷をお鎮めください。村人が怖がっております。」
すると雷鳴が轟いた。
「おまに俺の悲しみは分かるまい。早々に立ち去れ!!でなければお前めがけて雷を落とすぞ?」
すると大婆様からもらった数珠が光り出した。
あたしの意識は飛び、何かが見える。
『黒滝、、、!』
龍が死にそうだ。
それを3人の男たちが狼狽しながら見ている映像だった。
再びあたしの意識は呼び戻される。
「黒滝が病気なのですか?」
「き、きさま?!何故分かる?」
雷神様はだいぶ驚かれたようだった。
「黒滝の元へあたしを連れて行ってください。必ず助けます!」
「なんだと?助けられるのか?」
「はい。」
するとまた雷鳴がとどろいた。
*
「お前、本当に助けられるのか?」
目に入ってきた男。
ドスの効いた声。
この人が雷神様?
思っていたよりも華奢な体。
ツノがあるが、人間とさほど変わらない容姿。
ま、イケメンの部類には入るだろうけど、今はそれどころじゃないか。
「黒滝はどこです?」
雷神様はじっとあたしを見てから、こっちだと黒滝の元へ案内してくれた。
数珠で見た光景ではかなり苦しそうだったという事しか分からない。
死にそうだと判断したのは数珠が教えてくれたようだった。
そして黒滝を治す手段も数珠が教えてくれるような気がする。
なんて不思議な数珠なのだろう?
「おい?何を考えている?」
雷神様は歩きながら聞いて振り返る。
「黒滝を治す方法でございます。」
雷神様はまたあたしをじっと見つめる。
「不思議な人間だ。その装束からして俺の怒りを止めるために贄となって来たのだろう?」
雷神様の唇が弧を描いた。
「確かにそうでございますが、、、。」
「贄なら俺がどうしようと勝手だな?」
「今は黒滝の手当てが先でございます!」
雷神様の視線が熱い。
生贄となって来たあたしをどうしようというのだろうか?
雷神様がどことなく機嫌が良く見えるのはあたしの気のせいだろうか?
そう思いながら雷神様の住処(だと思う)について歩くあたしは複雑な心境でいた。
*
「雷神か?天への祈りはどうした?黒滝が苦しみもがいているんだぞ?」
雷神様は髪の色は金だが、着いた洞窟から出て来た男は銀髪だった。
そしてその後緑色の長い髪の男が出て来た。
(あの雷は天への祈りだったのか?)
雷神様は嬉しそうに言う。
「風神、竜神!天への祈りは通じた。この女が黒滝を治してくれるそうだ。」
きっと銀髪の男の人が風神様で、緑色の長い髪の男の人が竜神様だ。
2人はあたしを上から下まで舐めるように見る。
「見たところ人間ではないか?人間たちが贄として送り込んできたか?」
風神様は人間なんかに何が出来るとでも言いたそうだ。
「まぁいいじゃないか?試しにやってもらおう。出来なければ黒滝の餌にする。もしかしたらそれが一番の薬かもしれないからな。」
竜神様は恐ろしいことを言う。
「娘、着いて来い。」
雷神様は風神様と竜神様の後に続いて歩き出した。
あたしは雷神様に続いて歩く。
洞窟の奥から異様な鳴き声が聞こえる。
「雷神様が怒ってらっしゃるのだ。」
山々に囲まれた村でのことだった。
雷が鳴り止まず、村では雷神様の祟りだと騒がれ始めた。
それもそのはず。
雷は2週間くらい続いていたのだ。
「生贄じゃ。生贄が必要じゃ。」
村一番の長寿である大婆様が言い出した。
*
そして選ばれたのがあたしだった。
「大婆!何故ですか?何故うちの娘が生贄にならなければならないのです?!」
お父さんは怒りを露わに大婆様に詰め寄る。
「お父さん。あたしは巫女よ?大丈夫!きっと雷神様の怒りを鎮めて帰ってくるから。」
あたしはお父さんをなだめる。
「まどか。お前は自分の定めを分かっておる。頼んだぞ。」
大婆様はそれだけ言うと、あたしに大婆家に代々受け継がれている数珠を渡す。
「なんでなんだ、、、。」
お父さんはうなだれ、その場にしゃがみ込んだまま、床を何度も手で叩く。
「大婆様、お父さん、それでは行ってまいります!」
「まどか。行く場所は分かっておるか?」
「はい。大婆様。」
*
それは誰も立ち入らない、雷神様の滝。
雷は一層激しくなり、あたしは着てきた巫女装束で、滝の中に入る。
大婆様からもらった数珠を持ち、一心不乱に祈りをささげる。
*
祈りを何時間ささげただろう?
とてつもなく大きな雷が鳴った。
「誰だ?」
大きな雷と共に頭に直接語りかけてくる声。
「雷神様でございますか?」
あたしは滝にうたれながらも大声を出した。
「何用だ?ここは聖地。人間が入っていい場所ではない。」
ドスの効いた低い声。
あたしは少し恐怖を覚える。
「早々に立ち去れ。」
あたしは震えてる。
でも帰る訳にはいかないのだ。
「雷をお鎮めください。村人が怖がっております。」
すると雷鳴が轟いた。
「おまに俺の悲しみは分かるまい。早々に立ち去れ!!でなければお前めがけて雷を落とすぞ?」
すると大婆様からもらった数珠が光り出した。
あたしの意識は飛び、何かが見える。
『黒滝、、、!』
龍が死にそうだ。
それを3人の男たちが狼狽しながら見ている映像だった。
再びあたしの意識は呼び戻される。
「黒滝が病気なのですか?」
「き、きさま?!何故分かる?」
雷神様はだいぶ驚かれたようだった。
「黒滝の元へあたしを連れて行ってください。必ず助けます!」
「なんだと?助けられるのか?」
「はい。」
するとまた雷鳴がとどろいた。
*
「お前、本当に助けられるのか?」
目に入ってきた男。
ドスの効いた声。
この人が雷神様?
思っていたよりも華奢な体。
ツノがあるが、人間とさほど変わらない容姿。
ま、イケメンの部類には入るだろうけど、今はそれどころじゃないか。
「黒滝はどこです?」
雷神様はじっとあたしを見てから、こっちだと黒滝の元へ案内してくれた。
数珠で見た光景ではかなり苦しそうだったという事しか分からない。
死にそうだと判断したのは数珠が教えてくれたようだった。
そして黒滝を治す手段も数珠が教えてくれるような気がする。
なんて不思議な数珠なのだろう?
「おい?何を考えている?」
雷神様は歩きながら聞いて振り返る。
「黒滝を治す方法でございます。」
雷神様はまたあたしをじっと見つめる。
「不思議な人間だ。その装束からして俺の怒りを止めるために贄となって来たのだろう?」
雷神様の唇が弧を描いた。
「確かにそうでございますが、、、。」
「贄なら俺がどうしようと勝手だな?」
「今は黒滝の手当てが先でございます!」
雷神様の視線が熱い。
生贄となって来たあたしをどうしようというのだろうか?
雷神様がどことなく機嫌が良く見えるのはあたしの気のせいだろうか?
そう思いながら雷神様の住処(だと思う)について歩くあたしは複雑な心境でいた。
*
「雷神か?天への祈りはどうした?黒滝が苦しみもがいているんだぞ?」
雷神様は髪の色は金だが、着いた洞窟から出て来た男は銀髪だった。
そしてその後緑色の長い髪の男が出て来た。
(あの雷は天への祈りだったのか?)
雷神様は嬉しそうに言う。
「風神、竜神!天への祈りは通じた。この女が黒滝を治してくれるそうだ。」
きっと銀髪の男の人が風神様で、緑色の長い髪の男の人が竜神様だ。
2人はあたしを上から下まで舐めるように見る。
「見たところ人間ではないか?人間たちが贄として送り込んできたか?」
風神様は人間なんかに何が出来るとでも言いたそうだ。
「まぁいいじゃないか?試しにやってもらおう。出来なければ黒滝の餌にする。もしかしたらそれが一番の薬かもしれないからな。」
竜神様は恐ろしいことを言う。
「娘、着いて来い。」
雷神様は風神様と竜神様の後に続いて歩き出した。
あたしは雷神様に続いて歩く。
洞窟の奥から異様な鳴き声が聞こえる。
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