現影少女

kinmokusei

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悲しみの王子

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もうダメ、、、。
ここにいてもアスカ王子は来なそうだ。

王宮に行っても門前払いだろう。

だってあたしは村娘みたいな格好をしている。

行くとこない。

あたしは途方に暮れていた。

もう夕日がかなり傾いている。

「今夜はここで野宿ね。」

1人呟きため息をつく。



次の日。

あれ、、、?

天井、、、?

柔らかいベッド。

なんで、、、?

そこへ。

コンコン。

ビクッとなる。

「お目覚めになられましたか?」

王子、、、?

でも。

アスカ王子ではない。

「驚きましたよ。狩りに行って倒れたあなたを見つけて。」

別に倒れていたわけではないんだけど、、、。

あたしは心の中で思う。

「朝食を用意しました。此方へ。」

アスカ王子じゃない。
誰?
この人間。
悪い奴だったらどうする?

かなり警戒しながらあたしはその王子の後に続く。

「俺はジン。君は?」

「ミリス、、、。」

「へぇ。」

そう言って笑う。

どうやら悪い人間ではないらしい。

でも、、、助けてもらうならアスカ王子の方がよかったな。

助けてもらって失礼かな、、、?

「セクター、アスカ気づいたぞ。」

え、、、?

今アスカって、、、?!





部屋に入るとアスカ王子がいた。

あたしは固まる。

「あの、、、!!ミリスって言います!」

「、、、。」

アスカ王子は何も答えない。

あれ、、、?
目合ったよね、、、?

「ミリスか、、、。可愛い名前だね。」

答えたのはもう1人の王子。
セクターだった。

あたしはアスカ王子を見て俯く。

「あぁ。アスカはちょっと変わってるんだ。気にしないで。」

セクターは苦笑いをした。

変わってる、、、?
あんなに優しい王子様なのに。

「それより朝食をとろう。」

ジン王子が言った。

どうやら悪い人間ではなさそう。
でもそれはあたしが人間の姿をしているせいだろう。

アスカ王子が気になってあたしはずっと見ていた。

「ミリス?食事は気に入らなかったかい?」

セクター王子が言った。

「あっ!いえ!!とても美味しいです。」

「それはよかった。昨日狩りで捕まえた鹿肉のスープだ。」

え。

ぶっ!!

あたしはいきよいよく吐き出した。

鹿?
食べちゃったよ。
それに狩りなんて、、、!!

やっぱり危険だ。






「大丈夫か?喉に詰まったのか?」

いきよいよく吐き出したので、ジン王子とセクター王子が心配そうにする。

「い、いえ。あたし肉はちょっと、、、。」

「なんだ、ベジタリアンか?」

べじ、、、?

「アスカと同じだな。」

よく見るとアスカ王子は野菜しか食べていない。

さっすがアスカ王子!

あたしは嬉しくなった。

べじなんとかって言うのは野菜しか食べないことなのね。

「そうなんです。すみません。人参がたべたいかな、、、?」

「へぇ。なんか馬みたいだな。」

え。

ギクリとした。

「せめてうさぎって言えよ。」

ジン王子とセクター王子は笑って言う。

「じゃあ狩りにも興味ないかな?」

「当たり前です!!」

あたしはついキツくなってしまう。

「アスカと同じだ。」

アスカ王子、、、。
狩りもしない。
やっぱり違うな、、、。

あたしはアスカ王子を見る。

アスカ王子はあたしを見ようともしない。

ちょっとだけ悲しくなったけど、きっと優しい王子様なんだ!

そう思った。





「じゃ、俺ら出掛けるから。ミリスはアスカと留守番な!」

ジンとセクターは猟銃を持って出掛けて行った。

狩りだとすぐ分かる。

「動物達大丈夫かしら、、、。」

つい独り言が出てしまった。

「お前、まだ居る気か?」

え。

「どこから来たんだ?親心配してんじゃね?」

ジンとセクターが居なくなってアスカ王子があたしに言った。

「い、いえ。あたし政略結婚されそうになって逃げて来て、、、それで帰る場所がないっていうか、、、。」

嘘じゃないもの。
アスカ王子なら分かってくれるはず。

「ふーん。気に入らないな。」

「え、、、?」

「お前がどうなろうが俺には関係ない。だいたい俺は女が嫌いだからな。サッサと帰れ!」

う、うう。

本当にあのアスカ王子、、、?

あの時助けてくれたアスカ王子の優しい物腰とは全く違う。

でも。

あたしには帰る場所なんかない。

あたしは涙が溢れて止まらなくなってしまった。





あたしの涙を見てもアスカ王子は出て行けの一点張り。

「分かりました。出て行きます、、、。」

あたし何しに人間界に来たんだろう?

もう戻れない。

あたしはとぼとぼとアスカ王子のいた城を後にした。

優しい人だなって思ったのに。

あたしの勘違いだったの、、、?

あたしは山道を歩いてアスカ王子と出会った場所に来た。

これからどうしよう。

行くあてもないし、ご飯もあまり食べてないからお腹空いたし。


「あらあら、やっと見つけた!」

え、、、?

「アスカ王子に頼まれ、、、あっ。秘密だったわ、、、どうしましょう、、、。」

見たところ40代くらいの女の人間。

でも、アスカ王子って、、、?

「こっちよ?来て。」

行くあてのないあたしは訳も分からず着いて行った。






「今日からここで暮らすのよ。」

「え、、、?」

「あんた行くとこないんですって?」

「はぁ、そうですけど」

見たところ結構住みやすそうな家だった。

「あたしはアネッサ。城で家政婦をやっているの。」

「ミリスです。」

「えぇ、えぇ。聞いてますよ。アスカ王子のこと嫌いにならないでね。仕方がないのよ。あの城は危険だから、、、。」

「危険?」

「王子達は腹違いの兄弟なのよ。昨日今日は王が居なかったから泊められたのよ。王様はとても厳格な人だから。アスカ王子はそれを心配してあたしに頼んだのよ。」

え、、、?

「素直じゃなく口下手だからね。でもジン王子やセクター王子よりもとても優しく素敵な方なの。」

「はぁ。そうですか、、、。」

「言わば悲しみの王子かしらね。王はアスカ王子には一番冷たいから、、、。」

アスカ王子、、、。

あの優しさは嘘ではないの、、、?

「明後日城で舞踏会があるの。ドレス用意しないといけないわ。」

「え?舞踏会?」

「アスカ王子が来るようにと。」

なんだか複雑だ。
アスカ王子の優しさと冷たさ。

あたしにはアスカ王子が分からない。

舞踏会なんて。

アスカ王子に会うのが少し怖かった。





「ジン王子とセクター王子は妾の子だから王も優しいんだけど、アスカ王子はお手伝いの女の人との間の子供なのよ。しかも狩りをしない。愛想は悪い。アスカ王子の気持ちも分からない訳じゃあないんだけど王に反抗ばかりしててね。」

「そうですか、、、。」

「気にしないで。アスカ王子も悪かったと思ったからこそ舞踏会に呼んだのよ、きっと。」

「、、、。」

舞踏会なんて、、、。

行ったところで何か変わるのかな?

きっと冷たく扱われるに違いない。

そんなところ行きたくないんだけど、、、。

「アスカ王子は動物にしか心を開かないのよ。だから肉も食べないし、狩りもしない。お優しい方よ。」

あぁ、、、わかった。
あたしがユニコーンの姿だったから優しかったんだ。

あたし人間の姿になる必要はなかったんだ。

なんだかどうでもよくなっちゃった。

100年の恋も冷めるってこういう事を言うのだろう。

お母さんたち心配してるだろうな。

あたしは勢いだけでここまで来てしまった事を後悔し始めていた。





「あらあら!とってもいいじやない!」

あたしはアネッサさんにドレスを着せてもらう。

高そう、、、。

あたしの第一印象だった。

「こんな高価なドレス、本当にいいんですか?」

「何言ってるの!城の舞踏会よ?これでも地味な方よ!」

「は、はぁ。でもあたし、、、。」

行きたくない、、、。

「アスカ王子が迎えをよこしてくれるそうよ?そろそろ来る頃ね!」

アネッサさんはなんだかとっても張り切っていて。

行きたくないとは言えなかった。

チリんっ!

「あ!!来たわ!楽しんで来てね。あたしも後から行くから!なんて言ってもあたしは裏方だけど。」

余計心細い、、、。

「ミリス様。お迎えにあがりました。」

「はいはい!今行きますよ!」

アネッサさんは嬉しそうに答えた。

馬車に乗り込むあたし。

ドレスが慣れないせいか落ち着かない。

城は馬車で直ぐだった。

気が重い。
またアスカ王子に冷たくされたら、、、。

そう考えるだけで胸が痛かった。





「ミリス様。この面をつけて城に入って下さい。」

「は、はい。」

仮面舞踏会か、、、。

城に入るときらびやかなドレスを着た女の人がたくさんいた。

男の人もタキシード姿。

みんな仮面を付けている。

「ミリス!!いやぁ、見違えたよ!」

え。

「あー俺だよ。セクター。」

「え、えぇ。」

「なんだよ、セクター。ミリスを1人締めするなよ!」

この声。
ジン王子だ。

「アスカ!来たぜ!」

アスカ王子がこっちを見る。

しかし、、、。

そっぽ向いて行ってしまった。

う、う、う。

だから来たくなかったのよ。

「気にしないで、ミリス。あいつ照れてるだけだから。」

あの態度が照れてるとは思えない。

「あたし、少し風にあたってきます。」

セクター王子やジン王子の止めも聞かずあたしは中庭に出た。


あーあ。
何しにあたし来たの、、、?

そこへ。

ハトが一羽やって来た。

「おいで、、、。」

ハトはあたしの肩に止まる。

「可愛い。ねぇ、あなたは何て名前?そう、パトラっていうのね?」

人間の姿でも不思議と動物の言葉が分かった。

すると、いきなりパトラは逃げてしまった。

「おまえ、動物の言葉が分かるのか?」

アスカ王子だった。





言葉が分かるのはきっとあたしがユニコーンだからだけど、、、。
それは言えないし、、、。

あたしは戸惑いながら答えた。

「独り言です、、、。」

アスカ王子の表情は仮面を付けているせいで分からないけど、、、。

きっと眉間にしわを寄せているんだろうと思う。

「動物が好きなのか?」

好きっていうか仲間だ。

「えぇ。」

「変わった奴だな。」

あんたにいわれたくない。

あたしはアスカ王子の言葉に自分で突っ込みを入れた。

「ダンスが始まる。ジンとセクターが待っている。」

「あたしダンスはちょっと、、、。」

「大丈夫だ。ジンとセクターがエスコートしてくれるだろう。」

「でも、、、。あたしは、、、。」

「いいから来い」

あたしは仕方なくうなづく。

きらびやかなシャンデリアがまぶしい。

「ミリス、一曲お相手を。」

この声はジン王子だ。

差し出された手を取ると、その手にジン王子はキスをする。

手を引かれあたしはジン王子と踊る。

セクター王子ともそうだった。

後はアスカ王子だけど、、、。

いないし。

あたしには踊れと言いながら自分は踊らないなんて。

なんかだんだん腹が立ってきた。






アスカ王子、、、。

一体どこ?

腹立ちながらも姿を探している自分が情けない。

ぐぅぅぅ。

お腹空いた。

「では皆さん!我が息子ジンとセクターが狩った鹿肉のディナーをどうぞ!」

あの人間は、、、アスカ王子たちのお父さん?

仮面を付けているから顔は分からないが、かなり若いと思う。

しかもまた鹿肉なんて、、、。

お腹空いたけど食べたいとは思えない。

人参ないかしら、、、?

「ミリスは人参がいいんだよな?」

ジン王子だった。

「え、えぇ。」

戸惑いながら答える。

「おい!来い!!」

え。

いきなり腕を引っ張られた。

「な、何?!」

「肉ダメなんだろ?こっちにサラダがある。」

「なんだよ?アスカ。ミリスを独り占めか?」

「悪いな。ジン。」

アスカ王子、、、?

連れて行かれた場所には多くの料理が並んでいた。

「どれも肉は入っていない。食べろ!」

「あの、、、?」

「いいから食え!」

仕方なくあたしは食べる。

!!

「おいしい!」

思わず声が出てしまった。

「俺が作った。」

「え、、、?」

「調理するとどうしても調味料として動物が入ってしまうからな。」

「あたしのために?」

「勘違いするな!」

あれ、、、?

もしかして照れてる、、、?






料理って言ってもサラダだが、みんな美味しかった。

「アスカ王子、、、ありがとう。」

あたしは真っ赤になって言った。

「別に。野菜しか食わない女は初めてだからな。」

ダンス、、、アスカ王子と踊りたいな、、、。

「ねぇ、アスカ王子、、、。」

「アスカでいい。」

「う、うん。アスカ、、、ダンスを、、、。」

あたしは思い切って言った。

「足踏むなよ?」

アスカはあたしの手をとり踊り出す。

夢のよう。

正直断わられると思っていから。

アスカの手、、、。

やっぱり口は悪いけど優しいんだ。

アスカは素直じゃないけど。

あたしはやっぱりアスカが好きだ。

そこへ。

「アスカ!」

ん?
女の人間。

「サーヤ。」

「あたしとも一曲」

「あぁ。わかった。」

え、、、?

サーヤ?
誰?

仮面で分からないが、かなりの美人。

あたしの手を離しアスカはサーヤと踊り出す。

やっぱりこういうとこ王子だ。

でも、、、。

アスカは女の人間は嫌いだってジン王子とセクター王子が言ってたのに。

あたしは悲しげに2人を見つめる。

「サーヤはアスカの婚約者だ。」

え。

いつの間にかセクター王子が隣にいた。





「こん、、やく、、、?」

「そう、そう。」

あたしは頭の中が真っ白になった。

婚約者、、、?

考えてもみなかった。

王子だもの、あり得る話だ。

「政略結婚?」

あたしはすがるような想いでセクター王子に聞いた。

「違うよ。アスカがそんなの受けるはずがないだろ?アスカが父上に婚約したいって言って決まった事だよ。」

あたしは、何のためにユニコーンの世界を捨てたんだろう、、、。

婚約者がいて、アスカがそれを望んだなんて。

あたしの入る余地はないじゃない。

楽しそうに踊る2人。

あたしは馬鹿だ。

大馬鹿だ。

いくら人間になっても、意味はなかった。

「少し風にあたってきます。」

あたしはまた中庭に出た。

瞳には涙がたまり、仮面があって良かったと思った。

家に帰る方法もない。

アスカがあたしを見てくれる可能性もない。

「ごきげんいかが?」

ふと、話しかけられた。

「アスカとお知り合いなのかしら?」

サーヤだった。

「い、いえ。ちょっと助けていただいて、、、。それだけです。」

「そう、、、。アスカは口や態度は悪いけれど優しいのよ。」

「そうですね、、、。」

「あなた名前は?」

「ミリスです。」

仮面が邪魔してサーヤの表情は分からない。

あたしは戸惑いながら答えた。





「ミリス、、、。アスカの事好き?」

「え、、、?」

いきなりの言葉に心臓が飛び出るかと思った。

「い、いえ。そんなことは、、、。」

「そう。良かったわ。あたしはサーヤ。アスカの婚約者よ?」

「えぇ。知って、、、ます。」

「アスカがあなたと踊る姿を見てあたしちょっとショックだったわ。」

あたしだってショックだったよ。

心の中で思う。

「あなた、野菜しか食べないらしいわね?」

「えぇ。」

あたしの顔は引きつる。

仮面があって本当に良かった。

「アスカは動物がとても好きなの。だから動物を食べないあなたに興味を持っただけよ。」

「え、、、?」

「失礼だけれどどこの王国の方かしら?」

「あ、あた、あたしは、、、ただの村娘です。」

「そう。もうアスカに近づかないでくれないかしら?」

「、、、!!」

え。

「婚約をしたばかりなの。アスカは女嫌いで有名だったからとても嬉しかったわ。だから今あなたのことを聞いて不安になってしまいましたの。」

「あ、あた、あたしは何もしません!!」

「アスカはあたしの婚約者よ。そんなの当たり前ですわ。ただアスカとこれ以上仲良くされては困るのよ。」

「何故、、、?」

「アスカのお父様の目があるからよ。」

、、、?

あたしは訳がわからなかった。





アスカのお父さん、、、?

「とても厳格な方だから。頼みましたわよ?ではごきげんよう。」

サーヤはあたしの元から去って行く。

あたしはその姿を呆然と見送る。

仲良くも、、、ダメ、、、?

きっと話すことも。

アスカに会うためにユニコーンの世界を捨て、帰ることもできないあたしはただ呆然とするしかなかった。

アスカ、、、。

あの人のどこが良かったの?

あたしはただ呆然と立ち尽くしていた。

「ミリス!」

え?

ふと声をかけられた。

ジン王子だった。

「サーヤに何か言われたか?」

仮面のせいで表情は分からない。

ただ心配してくれていることはわかった。

「いえ。何も、、、。」

「本当か?サーヤは俺あんまり好きじゃないだよ。アスカもどこが良かったんだか。」

「、、、あたし、、、帰ります、、、。」

「え?」

「気分が優れないので、、、。」

「なんだよ、ミリス。まだ舞踏会は始まったばかりだぜ?」

「、、、。」

こんな舞踏会いたって仕方がない。

「どうしたんだ?」

セクター王子だった。

「ミリスが帰るって言うんだよ。」

ジン王子が言う。

「え?なんで?」

「気分が悪いらしい。」

「なら奥で休めばいいよ」

あたしは城の奥に通された。





「いえ。あたしは帰ります。」

あたしは声が震えていた。

「サーヤに何か言われたんだろう?」

ジン王子はまた言った。

「サーヤか、、、。全く。仕方ないな。」

セクター王子も言った。

あたし、、、。
この先どう生きればいいんだろう。

「アスカが父上にサーヤを紹介したのは事実だが、好きだとは思わないよ?」

ジン王子が言った。

「え、、、?」

「何かあるんだきっと。だから元気出せよ。」

「、、、!!」

どうやらあたしの気持ちはバレバレのようだ。

「アスカは口は悪いし、愛想は悪いけど人を見る目はある奴だからなぁ。」

セクター王子も言った。

「特に女。一応王子だからな。いろんな女が寄ってくるんだよ。その中でサーヤを選んだ理由、俺達も知らないけど。サーヤは性格に問題ありすぎだからな。はっきり言っておかしい。」

「そう、、、。」

「そこいくとミリスはいい奴だし、アスカもミリスのために料理作るくらいだから。」

「え、、、?」

「姿見えないと思って探したらアネッサと料理作ってた。感情表現が上手く出来なくて言葉足らずだからミリスを無理矢理アネッサに任せた事への謝罪だと思うよ。アスカはミリスを気に入っている。安心しろよ。」

「そう、、、かしら?」

あたしの声はまだ震えていた。






「ミリス!」

「え、、、?」

「こんなとこで何してる?」

「アスカ、、、?何って、、、別に、、、」

「せっかく作ったんだ!料理気に入らないのか?」

アスカ王子はいきなりつかつかとあたしのところへ来て腕を引っ張って会場へ歩みを進める。

「アスカ、、、!!サーヤさんが、、、」

会場に戻るとサーヤさんがいた。

「ミリス!まずかったのか?」

「え、、、?」

話が見えなかった。

「サーヤにそう言ったんだろう?」

「へ?」

「料理気に入らないと言ったんだろう?」

え。

あたしは頭が真っ白になった。

「そんな、、、!!言って、、、」

「あら?さっき帰る話をしていたから。てっきり料理が気に入らないものだと思いましたわ?」

あたしの言葉を遮るようにサーヤさんは言った。

あたしは黙る。

「どんな味が好みだ?好みを聞いてなかった。作り直す。言え!」

「あ、あたしは、、、。」

得意げにわらうサーヤさん。

「生が好きなんです。」

「生?分かった!今作ってくる。待ってろ!」

アスカはそう言うとその場を離れた。

「ミリス?何か言いたげね?」

「どうして嘘をつくのかと、、、。」

「嘘?帰る話をしていたから。あたしは嘘はついてないわ。」

一触即発のあたしとサーヤさん。

ジン王子とセクター王子は顔を見合わせた。






「あたしは、、、あたしは、、、料理まずいなんて言ってません!!」

半分涙声だった。

「あら?生が良かったんじゃなくて?さっきそう言いましたわよね?」

「それは、、、!!」

こんな事をされながらサーヤさんを気遣っていた自分が情けない。

「ただの村娘の分際でよくバーティーに来れたものね?アスカは野菜しか食べないからあなたを気にかけたにすぎないわ。帰るならとっとと帰って下さらないかしら?気分が悪いのでしょう?」

サーヤさんの嫌味。
はっきり言って聞いてられない。

そこへ。

「ミリス!これならいいだろう?」

アスカが戻ってきた。

生の人参にドレッシングがかけられている。

「さぁ!食え!」

あたしは一つ口に運ぶ。

「どうだ?」

「おいしいです。」

「本当か?」

「はい。とてもおいしいです。」

あたしは涙がこぼれた。

仮面で周りには分からないようだった。

「よかった!好みを聞き忘れて悪かった。」

「ありがとうございます。」

「帰るなんて言うなよな?」

「はい。」

サーヤさんの顔は仮面で分からないが、すごく苛立っている様子だ。

「アスカ!踊りましょう!」

「サーヤ、、、。あぁ。分かった。」

アスカとサーヤさんはその場を離れる。

「やっぱり分かんねー。どこが良かったんだ?」

ジン王子とセクター王子は言葉をハモらせた。






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