現影少女

kinmokusei

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アスカの気持ち

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「ミリス?さっきの女は?」

サーヤの事は全然覚えてないんだな。

「あたしの知り合いよ?」

嘘が苦手なあたし。

声が上ずる。

まー嘘じゃないんだけど。

しかし。

ヘッポコ魔法使いサーヤ。

ファウストをごまかしてきたって言ったけど。

一体どうやって??

「ここにいたか。姫。」

え。

「ファ、ファウスト!?」

振り返ると慌てているサーヤと落ち着き払っているファウストがいた。


「誰だ?」

アスカは怪訝な顔。

「私はミリスの知り合いファウスト。ミリスを探しここへ来ました。」

「ミリスの知り合いか?」

「え、え。まーそうかな、、、ははは。」

あたしは作り笑い。

やはりサーヤじゃごまかせなかったか、、、。

「ミリスは母国に帰ることなった。今までどうもありがとう。」

笑っているが、、、。

目が笑っていない。

「お前、ミリスをどうするつもりだ?」

アスカは疑い深い。

簡単に人は信じないようだ。

「母国へ帰すだけだ。」

「ミリス?帰りたいか?」

え?

「い、いや、、、です。」

「ミリスは帰りたくないと言っているが?」

「ただのマリッジブルーでしょう?」

「嫌がっている女をみすみす渡す訳にはいかない。」

「関係のないものは口出ししないでもらおうか?」

まさに一触触発。

バチッと火花が飛んだ。






「ミリスの親から連れ戻すよう言われているんだ。関係ない奴は口出ししないでもらいたい。」

「政略結婚だろ?ミリスに会った時聞いた。でも本人が嫌がっているんだ。ミリスを渡す訳にはいかない。」

ファウストもアスカも一歩も引かない。

「ミリス、ちょっと、、、!!」

サーヤがあたしを呼ぶ。

「何?」

「魔法が何故か効かないの。あたしの魔法のせい。半日はダメだって。」

へ?

「ミリス!行くぞ!舞踏会はまだ終わっていない。」

「は、はい!」

魔法が使えるまで半日か、、、。

あたしの手を取り歩き出すアスカ。

ファウストは追って来ない。

きっと魔法が使えるようになるまで待つつもりだろう。

「ミリス?」

「へ?」

「お前は国に帰りたくないんだよな?」

「う、うん。」

「じゃあ、ずっとここにいろ!」

え。

「俺の側にいろ!」

へ?

ちょっと、どうしたの?

アスカ、、、?

「あいつじゃないみたいだな?」

「は?」

「結婚相手だよ!」

「は、はぁ?」

どうしたんだろう?

アスカが変だ。

なんか怒っているみたい。

「あ、あの、、、?ごめん、、、なさい。」

「何故謝る?」

「い、いや、、、怒っているみたいだから、、、。」


「怒ってない!!」


う。

怒ってるじゃない。

あたしは心の中で思うのだった。





「ミリス!!」

ジン王子とセクター王子。

「急に居なくなったから、、、っていうか俺達舞踏会に参加してたのに何故か寝ててなんだか分からないんだよ。」

う。

「つ、疲れてたんじゃない?よくあることよ。」

「そうかぁ?」

ジン王子とセクター王子はしきりに首をひねる。

「ミリスを迎えに来た男と女がいる。でもミリスは帰りたくないと言っている。守るぞ!!」

「え?あ、あぁ。」

アスカの強い口調にジン王子もセクター王子もうなづくが、、、。

「しかし、なんか変なんだよなぁ。なーんか変なんだよ。」

うう。

サーヤのことはすっかり忘れているけど。

「アスカ!!なんだ?その娘は?」

へ?

「父上、、、。」

あ。

アスカたちのお父さんか。

若いが、一国の王だ。

威厳が、、、ある。

「ジン、セクター、それにアスカ。この舞踏会はお前たちの婚約者を探すためのものだぞ?アスカはその娘がいいのか?」

こ、怖い。

が。

「ミリス。とりあえず俺の婚約者として紹介するからな。」

アスカが小声で言った。

え!!

こ、こ、婚約者?

あたしは頭が真っ白になる。

あたしが、、、。

アスカの、、、。

婚約者、、、?


アスカは一体何考えてるの、、、?





「アネッサの遠い親戚にあたるミリスという姫です。私の婚約者にしたいと考えております。」

う。

顔から火が出そう。

「ミリス。挨拶を。」

「は、はい。ミリスと言います!」

あたしは深くお辞儀をする。

「アネッサの、、、?ほぅ。まあいいだろう。」

ふぅ。

なんとかなるものだな。

「ジンは?」

「私は、、、まだ、、、。」

ジン王子があたしを見ている。

なんだろう?

「そうか。セクターはどうだ?」

「私もまだ。」

セクター王子もあたしを見る。

「舞踏会はまだまだ長い。早く見つけろ!」

国王の言葉にジン王子とセクター王子はお辞儀をする。


「ミリス。こっちに来い。」

え。

ジン王子はあたしの手を取る。

「おい!俺とダンスしてからだ!」

セクター王子がそれを止める。

「ミリス。さっき採ってきた野菜がある。食べるだろ?」

アスカはムッとした顔で言う。

「あ、あの、、、?一度に言われても、、、」

「ジン、セクター。ミリスは俺の婚約者だぞ?なんで、、、。」

「俺もミリスがいい。」

「俺も。」

へ?

ジン王子とセクター王子の言葉に驚くあたし。

「それに婚約者はミリスが決めることだろ?」

あ、あの、、、?

なんかややこしくなってきた。

あたしの何がよかったんだろう?






それに、ジン王子やセクター王子はあたしがアスカを好きなことを知っているはずじゃ、、、?

サーヤはいつジン王子やセクター王子を鳩と入れ替えたのだろう?

つじつまが合ってないのはそのせいだろうか?

「ジンやセクターはいつも人のものを欲しがる。今度はミリスか?」

アスカは怒っている。

「ミリスが気に入っただけのことだ。」

セクターは微笑みを浮かべているが、目は笑っていない。

「ミリス。誰がいい?」

ジン王子やセクター王子はあたしに詰め寄る。

そりゃもちろんアスカに決まっている。

でも、、、。

ジン王子やセクター王子に言える雰囲気ではない。

「あの、、、?あたしのどこが良かったのでしょう?」

あたしの質問にジン王子やセクター王子は答えに詰まる。

しかし、アスカは、、、。

「動物に好かれてるところがいい。動物は人間を見る。」

そう答えた。

「ジン王子、セクター王子。あたしは、、、アスカが好きです。ごめんなさい。」

あたしがきっぱりと言うと。

「分かったよ。」

「仕方ないだろう。2人で話せば?」

ジン王子とセクター王子はあっさりと引き下がった。

ふとそんな2人を見て思った。

2人はあたしを試したんじゃないかと。


夕日が沈みかけている。

そろそろファウストの魔法が使えるようになるだろう。

大切な人。

別れが近い。





その頃サーヤとファウストはと言うと。


「まだ魔法が効かない!!サーヤ。一体全体どんな魔法をかけたらこうなるんだよ!」

「ファウスト、、、。ただ時間を止める魔法をかけただけで、、、。」

サーヤはうつむき、涙ぐむ。

「結構時間がかかるかもしれないな。魔法が使えないから魔法使い界に帰って応援を呼ぶこともできないし。」

「ごめん、、、なさい、、、。でもミリスは、、、。」

「ユニコーン界に連れ戻さなければならない。これは俺の任務だ。」

ミリスは、、、。

アスカが好きなのよ?

サーヤは言葉を飲み込む。

「せめてテレパシーが使えれば、、、。しかしどうして魔法が使えない状態に、、、。」

ミリス、、、。

魔法が使えるようになればあなたは間違いなくユニコーン界に連れ戻される。

それまでどうか思い出をたくさん作ってね。

サーヤにはそう願うことしか出来ない。

「ファウスト。誰かを好きになるって分かる?」

「はぁ?そんなくだらないこと、、、」

「くだらなくなんかない!!誰かを大切に想うことはとても素敵で、たまに辛いけど、でも、、、。」

気づくとサーヤは泣いていた。

「サーヤ、、、。お前は好きな奴いるのか?」

う。

「それは、、、。」

サーヤは言葉を詰まらせた。





「さて、宴もたけなわだ!!」

王様が言った。

「ジン、セクター、いい婚約者は見つかったか?」

「父上、申し訳ございません。見つかりませんでした。」

ジン王子とセクター王子は頭を下げてひざまずく。

「アスカだけか、、、。まぁいい。アスカ!!ミリス姫には今日泊まってもらいなさい。早く孫が見たい。」

へ?
ま、孫?

「はっ!!」

ちょっと待って。

孫って、、、。

「ミリス。部屋へ案内する。」

「ちょ、、、。」

あたしはアスカに手を掴まれ歩き出す。


そりゃアスカのことは好きだけど。

泊まって孫って、、、。

いくらなんでも早すぎる。

そんなこんなで部屋に到着してしまった。

「ゆっくりしてていい。それとも風呂に入るか?」

ふ、風呂??

まさかとは思うけど。

「あ、あの、、、。あたしはまだ15歳でもうちょっと時間をかけて、、、。」

「、、、ふっ、、、。」

ん?
今笑った?

「俺だって15歳だよ。」

は?

「まだそういうことは早いんじゃないかと。」

「俺の母は15で俺を産んだ。怖いか?」

「?!」

あたしに子供産めと?

「も、もっとお互いを知り合ってからにしましょうよ。」

あたしは慌てた。

アスカは、、、?





「サーヤ。もしかしたらその恋心のせいで魔法が使えなくなったのかもしれない。」

「え?」

「ミリスはアスカを好きなんだろ?そしてアスカにキスをして止まった時間が動き出した。サーヤが好きなのはアスカか?キスをすれば魔法が使えるようになるかもしれない。」


「、、、!!」

「行くぞ!」

ファウストはそう言うと城に向かって歩き出した。

「ま、待って!!あたしの好きな人はアスカじゃないよ!」

「そう言って時間を稼ぐつもりか?その手には乗らない。」

サーヤは鈍いファウストに苛立ちをあらわにした。

「違うって言ってるじゃない!!あたしが好きなのは、、、。」

サーヤはファウストを見つめる。

「好きなのは、、、魔法使い界の人よ!!」

「アスカじゃないのか?」

「そうよ!」

ファウストは眉間にシワを寄せる。

「困ったな、、、。魔法を解く方法をなんとか見つけなければならない。」


ファウストはどこまで鈍感なの?

あたしにまるで興味がないみたいだし。

サーヤは悲しくなる。

ミリス。

あたしとファウストがキスをすることはない。

悲しくなるけどミリスのためにはいいのかもしれない。

このままミリスが連れ戻されなければ、ミリスは助かるんだ。


サーヤは一粒の涙をこぼした。






「遅い。いくらなんでも遅すぎる。」

場所は魔法使い界。

「またサーヤが何かやらかしたんじゃないか?」

「ありうるな。テレパシーもとどいてないようだ。」


「大変です!!ファウストの応援に行った者たちが今帰ってきて、、、。」

「何事だ?」

「はっ!!それが何かバリア見たいのに阻まれて人間界へ行けないとの事です!」

「間違いなくサーヤだな。今度はどんな魔法を使ったんだ?」

「分かりません!ユニコーン界からも何度もクレームが来ています!どうしましょう?」

「どうするもこうするもファウストに任せるしかないだろが!!」

「はっ!失礼しました!」



一方でユニコーン界では。

「花嫁は人間に捕まったのか?」

ミリスの結婚相手が言った。

「は、はい!今魔法使い界に応援を頼んで助けに行っているところでございます!」

「そうか。まさかとは思うが花嫁は結婚が嫌な訳ではあるまいな?」

睨むようにミリスの両親を見つめる男のユニコーン。

「め、めっそうもございません。ミリスはテディ様に夢中でございます!」

「そうか。ならいいが。」

テディ。
ユニコーンは妖艶な動物であるが、テディは薄紫色のオーラを放っていてすさまじいまでの妖艶さである。

しかし、テディは何故ミリスを結婚相手に選んだのか?

ミリスの両親でさえ不思議に思うのであった。






「ミリス?」

「はっはい?」

「もう少し力を抜けないか?」

そんなことできないよー。

「やっぱりまだ早いんじゃ、、、?」

アスカに抱きしめられたままあたしは硬直していた。

「ミリス、今日はやめておくよ。」

アスカがあたしから離れて言った。

もうとっくに半日は過ぎている。

サーヤたち来ないな。

ユニコーン界に戻る前にアスカと契りを結べば、一層寂しくなるだろう。

最初はあんなに冷たくあしらわれたけど、今は違う。

アスカがあたしを求めている。

「あたしはアスカが好き。アスカは?」

あたしは顔を赤くして言った。

「好きな女だから抱きたいと思うんじゃないか。」

あたしの心臓がドクンとなった。


「あたしのどこが好き?」

「さっき言っただろうが。動物に好かれてるところだ。」

「そう、、、。」

あたしはユニコーン。

動物だ。

好かれるっていうより仲間なのだ。

「ほかには?」

「うーん。分からない。」

寂しさ半分、嬉しさ半分。

なんだか悲しいけど、あたしをもっと知って欲しい。

「あたしのことをもっと知ってもらいたかった。」

あたしはポツリと呟いた。

「なんで過去形なんだよ。これから先もずっと一緒にいて欲しい。」

アスカの瞳に見つめられ戸惑う。

あたしはユニコーンなんだよ?

影を人間に見せているいわば現影少女なんだよ?

それを知ったらアスカはどうするんだろう。

あたしは不安だった。





「お腹空いた。」

「サーヤ!今そんなことを言っている場合か?」

「魔法がこれ以上使えなければ困るでしょ?腹が減っては戦は出来ぬっていうじゃない?」

これからどうするか、、、。

確かに飲まず食わずは困るな。

ファウストは考え込む。

と。

「やっぱりまだ魔法使えないのね?」

あたしは笑った。

「ミリス!?どうして?」

「お腹空いただろうと思って食料持ってきた。」

サーヤは嬉し泣き。

ファウストはバツの悪そうな顔をした。

時刻は夜。

城をそっと抜け出して来たのだ。

「ミリス、ありがとう!!」

サーヤは食べながら言う。

「ほら、ファウストも。」

あたしはファウストにも勧める。

ファウストは仕方なく受け取る。



食べ終えてから。

「お前変わってるな?」

ファウストは言った。

「なにが?」

あたしは答える。

「俺たちはお前を、、、」

「いいのよ。魔法が使えなければあたしは安全だもの。」

ファウストはあたしをまじまじと見る。

「やっぱり変わってる。」

サーヤは、、、。

「ミリスって魅力のある女の子よね?」

そう言いながら寂しそうな目をする。

ファウストもミリスの良さが分かったに違いない。

へっぽこのあたしよりミリスの方が、、、。

サーヤは1人悩むのであった。






「これからどうするかよね?野宿とかあり得ない。」

「サーヤ!贅沢言うな!飯を食べられだだけでもありがたいと思えよ!」

ファウストが怒鳴る。

サーヤは寂しそうな顔をする。

その表情にあたしは、、、。

「いい人がいるの。あたしはこれから城で暮らすから頼めばもしかしたら大丈夫かも。」

「それって、、、?」

「アネッサさんよ。」

「やっぱり。あたし嫌われものだから無理だと思うよ?」

「記憶が消えてしまったんだから平気よ。」

「あ、そか。」

「急ぎましょう!」

あたしは2人を連れてアネッサさんの家に向かった。



「まぁ、ミリス。どうしたの?こんな夜遅くに。」

アネッサさんは驚いたが、、、。

「道に迷ったの。あたしを連れ戻しに来たんだけどね。」

苦しい言い訳だがアネッサさんは心良く受け入れてくれた。

「連れ戻しに来て帰れなくなったなんてねぇ。でもあたしはミリスが好きだからいいわ。もちろん王子たちには内緒ね。」

「ありがとうございます!」

サーヤは涙目。

ファウストは軽く会釈をする。

「じゃああたしは城に戻るから。」

「本当にいるんだな、お人好しって。」

ファウストはポツリと言ったが、あたしは聞こえないフリをして城に戻った。






城にコッソリもどる。

よし!

誰も気づいてないな!

「ミリス!!」

「は、はい!?」

「どこへ行ってた?」

アスカだった。

「あ、あのですねー。どこかな?ちょっと散歩を、、、。」

「散歩?こんな夜遅くに?」

アスカの眉間にシワがよる。

「ほ、ほしが綺麗で、、、」

我ながら苦しい言い訳だ。

「星を見たいならそう言えばいい。着いて来い。」

なんとかごまかせた。

アスカはあたしを屋根裏に連れ込み窓から星を見せてくれた。

「綺麗!!」

あたしは思わず言った。

「俺の一番好きな場所だ。」

「うん。素敵!!」

「ここをお前の部屋にしてやる。」

あたしが喜ぶのを見てアスカが言った。

「で、でも、、、。」

「夜道は危険だ。もう黙って出かけるなよ?」

アスカは満足げに言う。

結構束縛する方なのかな?

「アスカ。ありがとう。」

束縛が嬉しいと思うのはやっぱり好きだからだ。

「ミリス。お前は俺の大切な女だ。ずっと側にいてほしい。」

アスカは照れ隠しか、目をそらす。

「はい。」

あたしは真っ赤になって答える。

最初は冷たくされたけど、もしかしたら人見知りなだけ?

考えるが、今が幸せだからそれはそれでいいんじゃないか、、、。

まさか想いが伝わるとは思わなかった。

しかし、いきなり変わったな、、、アスカ。

あのキスをしてからだ。

それがサーヤの魔法のせいであることにあたしはまだ気づいていなかった。






屋根裏部屋が綺麗に掃除され、あたしの新しい部屋に生まれ変わった。

サーヤとファウストのことは気にはかかったが、あたしはそれどころじゃなくて。

「親父が世継ぎが見たいと言う。ミリスその気になってくれたか?」

この質問屋根裏の掃除が始まった頃からだから、3日経ったから3回目。

何故そう急ぐ必要が、、、?

ジン王子とセクター王子はアスカのお父さんはとりわけアスカに厳しくてと言っていたが。

怖そうな人だったが、そんなにアスカに厳しかっただろうかと疑問だ。

それにあたしは大問題に気付いていて。

あたしはユニコーン。

もし子供がユニコーンとして生まれてきたらどうしよう。

そんなこんなでアスカからの誘いを断り続けている。

後先考えずにいた自分が情けない。

「ミリス。食事だ。親父もいるがあんまり気負うな。」

アスカはそういうけど。

あたしは毎朝用意されたドレスを着て食事に向かう。

それだけでも食事が喉を通らないのに。

今日はアスカのお父さんも一緒なんて。

昨日と一昨日はいなかった。

王様は忙しいのだろうななんてノー天気な事を考えている場合ではない。

だいたいあたしは野菜しか食べないと知っているのだろうか?

食事の席で世継ぎの話をされたらどうすれば?

「ミリス?急げ。」

「は、はい!」

考えても出ない答えはあたしを不安にさせる。



「ミリスと言ったか?城の暮らしには慣れたか?」

ゔ、ゔ。

やっぱ威厳があって怖い。

あたしの前にはサラダが置いてあった。

どうやら野菜しか食べないことは伝わっているみたいだ。

「はい。今慣れてきたところです。」

「世継ぎのことだが、、、。」

来た!

この質問。

あたしはどう答えようが、、、出ない答えを探すのだった。





あたしが困った顔をしていると。

「アスカはできそこないだからな。1番先に婚約者を見つけるとは思わなかった。まー早いにこしたことはないが、アスカに飽きたらジンやセクターでもいいんだぞ?あははは!」


ちょっと待って。

今の笑い事じゃないと思うけど。

あたしはアスカのことをないがしろに言う王様に少し苛立ちを覚えた。

「王様。わたくしはアスカ王子を本気で愛しております。アスカ王子を悪く言うのはやめてください。」

あたしの言葉にジン王子やセクター王子、アスカまでが驚いた顔をした。


王様は眉間に皺を寄せてあたしをジロリと睨む。

「さすがアスカの選んだ女だ。変わっているな。」

どこが変わっているのかあたしには分からない。

婚約者を悪く言われれば誰だって怒るだろう。

当たり前のことだと思うけど。



それから王様は無言だった。


「ミリス。まずいよ。」

後からジン王子に聞いた話。

「親父はアスカには冷たいんだって言っておいただろ?親父に逆らえば婚約取り消しにもなりかねない。」


でも。

愛してるアスカを悪く言われるのは我慢出来ない。

それに。

アスカたちのお母さんはどこにいるんだろうか?

いろいろありすぎてまわらなかった頭がやっとそこまでまわるようになった。

ジン王子やセクター王子とアスカの母親はみんな違うってアネッサさんが言ってたけど。

城にいる様子はない。

なんかそのことは禁句になっているようでおしゃべりのジン王子ですらその話はしない。

アスカに聞いてみようか?

あたしは心に決め夜を待った。





「今日は来ないのかな?」

屋根裏であたしはアスカを待つ。

いつもだったらもう来ている時間だ。

ソワソワしていると部屋のドアを叩く音がした。

でも、アスカではない。

ドアの叩き方が違う。

部屋のドアを開けるとジン王子とセクター王子だった。

「こんな時間にどうしたの?」

「アスカからの言付け。今日は行けないってさ。」

なんで?

あたしの表情を読み取ったのか、ジン王子は笑いながら話し出した。

「ミリスさー。まだアスカと寝てないようだな?」

あたしはその言葉に顔を熱くする。

「アスカはそのことで親父に呼ばれている。」

ゔ、ゔ。

「ミリスはアスカのことが好きなんだろ?何故やらない?」

セクター王子は屋根裏の星を見上げながら笑い出した。

「みんな始めは怖いものさ。好きなら後悔する前にやっておいた方がいい。」

あたしだって、、、。

ただユニコーンのあたしじゃそんなことは無理なのだ。

そういえばサーヤとファウストはどうしたかな?

迎えに来ないと言うことはまだ魔法が使えないんだろう。

物思いにふけっていると、ジン王子はあたしを見ながら笑って言った。

「ま、後悔しないようにな。」

セクター王子も笑っている。

ジン王子とセクター王子が去った後、あたしは考えていた。

魔法が使えるようになればあたしは強制的にユニコーン界に連れ戻されてしまう。

人見知りの王子様。

動物好きの、、、。

アスカ、、、。

両想いなんだよね?

アスカにあたしの初めてをプレゼントして、離れてしまったら寂しすぎて、、、。

でもユニコーン界に戻る前にと言う考えもあるんだ。


あたしは悩みの中にいた。






「今日はいい天気だ。だから散歩に行こう。」

あれから半月くらいが経った。

アスカはあたしに何もしてこない。

キスすらも。

サーヤやファウストからも何もない。

キスなどしなくてもあたしは毎日が楽しかった。

アスカは愛情を注いでくれるし。

だいぶ距離も近づいて、、、。

「ミリス、、、。」

「うん?」

「愛してる。」

あたしは思わず赤面する。

「あ、あたしも、、、。」

キス、、、したいな、、、。

「アスカ。あたしの愛よ、、、。」

そう言うとあたしはアスカにキスをした。

すると、、、。

ドドーン。

いきなり雷鳴が轟いた。

あたしはびっくりして、アスカにしがみつく。

「あれ、、、?俺は、、、?」

「アスカ。凄いカミナリだったね!」

「ミリス?舞踏会は?」

「え?」

「サーヤは?」

「え、、、。」

アスカの様子がおかしい。

周りの様子も。

あたしはあの時の舞踏会のドレスを着ているし。

あたしはハッとした。

魔法が解けた??

時間が戻っている??

「アスカ?あたしのこと分かる?」

「ミリスだろ?でもサーヤがいない。」

あたしは頭が混乱する。

アスカ、、、まさか魔法であたしのこと好きになってた?

そう思った瞬間にピカっと光った。

あれ、、、?

「時間を止めた。」

ファウストだった。

「さぁ、姫。ユニコーン界へ戻りましょう!」

え?

え??

「サーヤの魔法でアスカはお前を好きになってたにすぎない。帰るんだ。」

あたしは愕然とした。









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