愛しのお兄ちゃん

kinmokusei

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お兄ちゃんの真の狙い

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今日は何もない日曜日。


いつものようにお兄ちゃんと2人の朝食。


いつもだったらどこかに2人で行くのだが、今日は違った。


「かんな、わるいな。今日は俺用事があるんだ。」


すまなそうに言うお兄ちゃん。


「用事って何?」


「あぁ。ちょっとな。」


怪しい、、、!


「いいわよ。行ってらっしゃい。」


「なんだ?今日はヤケに物分かりがいいな?」


「別に。あたしも今日は用事があるの。」


「へー?」


お兄ちゃんの口元が緩む。


「何よ?なんか文句あるの?」


「いや。別に。」


お兄ちゃんフッと笑った。


なんか見透かされているな。


でも、それも今日までよ!


あたしの用事、、、。


それはお兄ちゃんを尾行すること!!







「じゃあ、行ってくる。」


ふん。


その余裕も今日までよ!


乗っ取りの証拠を掴んで、お父様に言うんだから!!


あたしはお兄ちゃんが出かけるのを見送った後、お兄ちゃんを追うように家を出た。






どこに行くつもりなんだろう?


涙の運転で車で行くと思い込んでいたあたしは今歩いているお兄ちゃんを追っている。


近くだよね?


途中でタクシーにでも乗るのかしら?


そうだったら尾行は失敗に終わる。


だってあたしお金持って来てないもの。


お兄ちゃんの秘密を探る訳だから、エミには頼めないし。


どうか近くでありますように。


あたしは願っていた。


あっ!?



どうやら本当に近くだったらしい。



お墓、、、?


お兄ちゃんが入って行ったのは墓地だった。


そう言えばさっき花を買っていた。


コンビニにも寄っていたし。


多分お線香を買ったのだと思う。


お兄ちゃんはあるお墓の前に立ち止まり、しゃがみ込む。


誰のお墓なんだろう?


あたしは見つからないようにそっとお兄ちゃんを見ていた。






お兄ちゃんはしきりにお墓に向かって話しかけている。


何言ってるんだろう?


もう少し近くに行きたいけど、これ以上近くに行ったらバレちゃう。



しかもトイレ行きたいし。


こういうときに限って、、、!


もう!!


まだ居るわよね?


我慢出来ない!!


あたしはそっとトイレに向かって走り出した。






「よかった。間に合った。」


トイレでホッと一息。


そしてもう一度お兄ちゃんのいた場所に向かって走り出す。


あれ?


お兄ちゃんはいなくなっていた。


最悪。


今日の尾行は失敗だった。


お線香がまだ消えきっていない。


あたしはそのお墓の前に立つ。


暮石には、、、。


「小野寺?」


小野寺家の墓と書かれてあった。


確かお兄ちゃんが名乗っている名前だよね?


もしかして、、、!


偽名じゃなくて本名??


ますますお兄ちゃんの謎が深まる。


お兄ちゃんの狙いは何なのだろうか?


あたしは頭を抱えてしまった。






あたしは暮石に刻まれている名前をメモった。


光代と和幸と刻まれていた。


死んだ日付けも刻まれていて、多分お兄ちゃんの実の親だと思われた。


「今から10年前だ。」


とするとお兄ちゃんがまだ9歳の時。


苦労したのかな?


あたしはなんだか自分が嫌になってしまった。


乗っ取りかもしれないけど、それはあたしが家を継がないと言ったから、お父様がお兄ちゃんを養子にした訳で。


つまりは家を継ぐのを断わってるのに家のお金で生きようとしている。


あたしは自分勝手だ。


お兄ちゃんの目にあたしがすねかじりの娘に見えても仕方ないことだなと思った。


「もうやめよう。」


あたしはそう呟き、お墓に手を合わすとその場から去った。






あたしが帰るともうお昼だった。


お兄ちゃんと雑談しながら食べる昼食。


なんだかお兄ちゃんをまともに見れなかった。






その夜。


あたしはなかなか寝付けなかった。


(喉乾いたな、、、。)


あたしはホットミルクでも飲もうと自分の部屋を出た。


すると、お父様の部屋から声が聞こえてきて。


なんだろう?


不思議に思いお父様の部屋の前に立った。


だって今夜中の1時よ?


するとお父様の部屋の扉が少し開いていた。


「お義父さん。かんなは頑張っていますよ。」


ん?


お兄ちゃんの声?


あたしは聞き耳を立てた。


「そうか。彩音にはすまないと思っている。神崎グループを背負ってもらうためとはいえ妻と親交のあったお前に憎まれ役をやらせることになって。」


「いいんですよ。私もかんなのお母さんには世話になったので。きっとかんなをこの神崎グループを継ぐことのできる人物に育ててみせます。」


あたしは2人の会話に耳を疑った。


お兄ちゃんは、あたしのために?


お兄ちゃんが、あたしのために、、、。



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