7 / 24
6
「それで、決意は固まりましたか? 」
男はアリーチェに問いかけた。
アリーチェが俯いて答えずにいると、男は言葉を重ねた。
「ここに止まる理由はないでしょうに。幸せな勇者の結婚生活まで見届けて、ご自分の首を絞めるおつもりで? 」
半笑いでそう問われれば、昨日見た光景が瞼に浮かび、気づけばかぶりを振っていた。
でも、それでもルッツが自分の人生から消えることは想像できない。
「自分でも、そうすればいいのか分からないの。ルッツのことを思えばこのまま消えた方がいいに決まってる。みんなにとってもきっとそう。でも・・・」
アリーチェは正直に答えた。
「また随分と絆されてしまったようで」
男はわざとらしく目を丸める。
「お望みとあれば、あなたから勇者の記憶を消しましょうか? 丁度、それを得意とした者を知っていましね。ご紹介しますよ」
やっぱり一発は殴っておくべきだったかとアリーチェは思ったが、あまりにタチの悪い冗談には付き合う気にはなれない。
再び黙り込んだリーチェを見て、男はにこりと笑った。
「まぁ、あなたがここに残るにしても出るにしても決断は早くした方がいいでしょう。ぐるぐる悩むだけ、最悪の結果になることだけはお約束してあげましょう」
男はアリーチェの感情になど興味なさそうに言いながら、決断を誤るなと釘を刺してきた。
「でも、もし、記憶が戻ったら・・・」
「戻ったとして、それがいつなのかも分からない。方法もない。まず、あなたは彼に近づけない」
そう、頑張ってあれだった。
「それで、他に言い訳は? 」
あるわけないよなと微笑む男の顔が迫ってきた。
アリーチェは口を尖らして、その圧に立ち向かう。
「まずは、お腹が空いたので、お説教は後にして下さい」
ついでにいーっと威嚇も付け加えた。
*
「あぁ~やっぱり、ここのご飯が一番美味しいぃ~」
満腹になったアリーチェはぽっこりと出てきそうなお腹をさすった。
失恋しようとも腹は減り、食べたらそれなりの幸福感が抱ける。
けれど、やっぱり頭の端にはルッツの姿がちらついている。
「では、どうせ今日は王都を出られないようなので、こちらをお願いできますか? 」
神父が満面の笑みでアリーチェの目の前に洗濯物の山を置いた。
「あなたは、ここの水なら大丈夫ですもの、断りませにんよね。それに、どうせこちらも持ち帰るのでしょ? 」
そう言って、ポーションの瓶の箱を指差した。
アリーチェはごくりと喉を鳴らし、懇願するように男を見つめた。
けれど、そんなものこの男に通用するわけがない。
「誰がタダ飯だと言いましたか? 」
悪魔が笑ってアリーチェの腹を指差す。
「あと、防壁の修繕の方もよろしくお願いしますね」
「こんなのが神父になれるだなんて・・・」
「おや、私の忠誠心は神もひれ伏すほどですよ」
その通りなので、アリーチェは何も言い返せなかった。
男はアリーチェに問いかけた。
アリーチェが俯いて答えずにいると、男は言葉を重ねた。
「ここに止まる理由はないでしょうに。幸せな勇者の結婚生活まで見届けて、ご自分の首を絞めるおつもりで? 」
半笑いでそう問われれば、昨日見た光景が瞼に浮かび、気づけばかぶりを振っていた。
でも、それでもルッツが自分の人生から消えることは想像できない。
「自分でも、そうすればいいのか分からないの。ルッツのことを思えばこのまま消えた方がいいに決まってる。みんなにとってもきっとそう。でも・・・」
アリーチェは正直に答えた。
「また随分と絆されてしまったようで」
男はわざとらしく目を丸める。
「お望みとあれば、あなたから勇者の記憶を消しましょうか? 丁度、それを得意とした者を知っていましね。ご紹介しますよ」
やっぱり一発は殴っておくべきだったかとアリーチェは思ったが、あまりにタチの悪い冗談には付き合う気にはなれない。
再び黙り込んだリーチェを見て、男はにこりと笑った。
「まぁ、あなたがここに残るにしても出るにしても決断は早くした方がいいでしょう。ぐるぐる悩むだけ、最悪の結果になることだけはお約束してあげましょう」
男はアリーチェの感情になど興味なさそうに言いながら、決断を誤るなと釘を刺してきた。
「でも、もし、記憶が戻ったら・・・」
「戻ったとして、それがいつなのかも分からない。方法もない。まず、あなたは彼に近づけない」
そう、頑張ってあれだった。
「それで、他に言い訳は? 」
あるわけないよなと微笑む男の顔が迫ってきた。
アリーチェは口を尖らして、その圧に立ち向かう。
「まずは、お腹が空いたので、お説教は後にして下さい」
ついでにいーっと威嚇も付け加えた。
*
「あぁ~やっぱり、ここのご飯が一番美味しいぃ~」
満腹になったアリーチェはぽっこりと出てきそうなお腹をさすった。
失恋しようとも腹は減り、食べたらそれなりの幸福感が抱ける。
けれど、やっぱり頭の端にはルッツの姿がちらついている。
「では、どうせ今日は王都を出られないようなので、こちらをお願いできますか? 」
神父が満面の笑みでアリーチェの目の前に洗濯物の山を置いた。
「あなたは、ここの水なら大丈夫ですもの、断りませにんよね。それに、どうせこちらも持ち帰るのでしょ? 」
そう言って、ポーションの瓶の箱を指差した。
アリーチェはごくりと喉を鳴らし、懇願するように男を見つめた。
けれど、そんなものこの男に通用するわけがない。
「誰がタダ飯だと言いましたか? 」
悪魔が笑ってアリーチェの腹を指差す。
「あと、防壁の修繕の方もよろしくお願いしますね」
「こんなのが神父になれるだなんて・・・」
「おや、私の忠誠心は神もひれ伏すほどですよ」
その通りなので、アリーチェは何も言い返せなかった。
あなたにおすすめの小説
【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから
よどら文鳥
恋愛
私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。
五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。
私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。
だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。
「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」
この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。
あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。
婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。
両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。
だが、それでも私の心の中には……。
※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。
※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。
最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。
佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。
幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。
一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。
ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
嘘つきな婚約者を愛する方法
キムラましゅろう
恋愛
わたしの婚約者は嘘つきです。
本当はわたしの事を愛していないのに愛していると囁きます。
でもわたしは平気。だってそんな彼を愛する方法を知っているから。
それはね、わたしが彼の分まで愛して愛して愛しまくる事!!
だって昔から大好きなんだもん!
諦めていた初恋をなんとか叶えようとするヒロインが奮闘する物語です。
いつもながらの完全ご都合主義。
ノーリアリティノークオリティなお話です。
誤字脱字も大変多く、ご自身の脳内で「多分こうだろう」と変換して頂きながら読む事になると神のお告げが出ている作品です。
菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。
作者はモトサヤハピエン至上主義者です。
何がなんでもモトサヤハピエンに持って行く作風となります。
あ、合わないなと思われた方は回れ右をお勧めいたします。
※性別に関わるセンシティブな内容があります。地雷の方は全力で回れ右をお願い申し上げます。
小説家になろうさんでも投稿します。
勇者様がお望みなのはどうやら王女様ではないようです
ララ
恋愛
大好きな幼馴染で恋人のアレン。
彼は5年ほど前に神託によって勇者に選ばれた。
先日、ようやく魔王討伐を終えて帰ってきた。
帰還を祝うパーティーで見た彼は以前よりもさらにかっこよく、魅力的になっていた。
ずっと待ってた。
帰ってくるって言った言葉を信じて。
あの日のプロポーズを信じて。
でも帰ってきた彼からはなんの連絡もない。
それどころか街中勇者と王女の密やかな恋の話で大盛り上がり。
なんで‥‥どうして?
【完結】愛くるしい彼女。
たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。
2023.3.15
HOTランキング35位/24hランキング63位
ありがとうございました!
(完結)婚約者の勇者に忘れられた王女様――行方不明になった勇者は妻と子供を伴い戻って来た
青空一夏
恋愛
私はジョージア王国の王女でレイラ・ジョージア。護衛騎士のアルフィーは私の憧れの男性だった。彼はローガンナ男爵家の三男で到底私とは結婚できる身分ではない。
それでも私は彼にお嫁さんにしてほしいと告白し勇者になってくれるようにお願いした。勇者は望めば王女とも婚姻できるからだ。
彼は私の為に勇者になり私と婚約。その後、魔物討伐に向かった。
ところが彼は行方不明となりおよそ2年後やっと戻って来た。しかし、彼の横には子供を抱いた見知らぬ女性が立っており・・・・・・
ハッピーエンドではない悲恋になるかもしれません。もやもやエンドの追記あり。ちょっとしたざまぁになっています。
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。