「帰ったら、結婚しよう」と言った幼馴染みの勇者は、私ではなく王女と結婚するようです

しーしび

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「それで、決意は固まりましたか? 」

 男はアリーチェに問いかけた。
 アリーチェが俯いて答えずにいると、男は言葉を重ねた。

「ここに止まる理由はないでしょうに。幸せな勇者の結婚生活まで見届けて、ご自分の首を絞めるおつもりで? 」

 半笑いでそう問われれば、昨日見た光景が瞼に浮かび、気づけばかぶりを振っていた。
 でも、それでもルッツが自分の人生から消えることは想像できない。

「自分でも、そうすればいいのか分からないの。ルッツのことを思えばこのまま消えた方がいいに決まってる。みんなにとってもきっとそう。でも・・・」

 アリーチェは正直に答えた。

「また随分と絆されてしまったようで」

 男はわざとらしく目を丸める。

「お望みとあれば、あなたから勇者の記憶を消しましょうか? 丁度、それを得意とした者を知っていましね。ご紹介しますよ」

 やっぱり一発は殴っておくべきだったかとアリーチェは思ったが、あまりにタチの悪い冗談には付き合う気にはなれない。
 再び黙り込んだリーチェを見て、男はにこりと笑った。

「まぁ、あなたがここに残るにしても出るにしても決断は早くした方がいいでしょう。ぐるぐる悩むだけ、最悪の結果になることだけはお約束してあげましょう」

 男はアリーチェの感情になど興味なさそうに言いながら、決断を誤るなと釘を刺してきた。

「でも、もし、記憶が戻ったら・・・」
「戻ったとして、それがいつなのかも分からない。方法もない。まず、あなたは彼に近づけない」

 そう、頑張ってあれだった。

「それで、他に言い訳は? 」

 あるわけないよなと微笑む男の顔が迫ってきた。
 アリーチェは口を尖らして、その圧に立ち向かう。

「まずは、お腹が空いたので、お説教は後にして下さい」

 ついでにいーっと威嚇も付け加えた。





「あぁ~やっぱり、ここのご飯が一番美味しいぃ~」

 満腹になったアリーチェはぽっこりと出てきそうなお腹をさすった。
 失恋しようとも腹は減り、食べたらそれなりの幸福感が抱ける。
 けれど、やっぱり頭の端にはルッツの姿がちらついている。

「では、どうせ今日は王都を出られないようなので、こちらをお願いできますか? 」

 神父が満面の笑みでアリーチェの目の前に洗濯物の山を置いた。

「あなたは、ここの水なら大丈夫ですもの、断りませにんよね。それに、どうせこちらも持ち帰るのでしょ? 」

 そう言って、ポーションの瓶の箱を指差した。
 アリーチェはごくりと喉を鳴らし、懇願するように男を見つめた。
 けれど、そんなものこの男に通用するわけがない。

「誰がタダ飯だと言いましたか? 」

 悪魔が笑ってアリーチェの腹を指差す。

「あと、防壁の修繕の方もよろしくお願いしますね」
「こんなのが神父になれるだなんて・・・」
「おや、私の忠誠心は神もひれ伏すほどですよ」

 その通りなので、アリーチェは何も言い返せなかった。
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