『ダンジョンdeリゾート!!』ダンジョンマスターになった俺は、ダンジョンをリゾートに改造してのんびりする事にした。

竹山右之助

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第二章 エンドレスサマー

第二章4 〈カチ割りレモンゴ〉

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「もしかして驚かせちゃいましたか?」

 どうしよう……初めてのお客さんになる、記念すべき人達なのに。
 無茶苦茶警戒されちゃってるよ~。
 さっきからずっと武器向けられちゃってるし。
 どうしたものか……。

「ユウタは本当にダメだな。オイラに任せといてよ。やっぱモフモフの中のモフモフ……キングオブモフモフのオイラが行けば、警戒心なんて一発解除だよ!」

 ほう……タロよ、お手並拝見と行こうか。
 まあ、結果は目に見えてるけどな。

「待ちなさいタロ。アンタみたいな二足歩行する狼が出てきたらそれこそ腰抜かすわよ。ここはキューティーNO.1の私が行くわ」

 お!?タロじゃなくてリリルか……確かに可愛いから警戒心は薄れるかもね。


「いらっしゃいませ~! 驚かしてごめんなさい。私はリリル……ピクシーのリリルよ。アナタ達海は初めて?」

「ピクシー!? この辺じゃ珍しいのに……てかピクシーって喋るっけ!? なんなの!? どうなってんの!?」
「キャーー! モンスターが喋ってる~!! 怖い!
 」
「レナよ……こんな可愛い妖精さん捕まえてモンスターはないだろ」

「またモンスターって言われた……妖精なのに……」

 リリルの可愛さではダメだったか……。
 ションボリ帰って来たよ。


「リリルもダメダメじゃないか。やっぱりオイラに任せといてよ……モフモフこそ正義だって教えてあげるよ」

 えらい自信タップリだが本当に大丈夫なのか!?


「エンドレスサマーによく来たな! オイラはタロ! まあ、とりあえずカチ割りレモンゴでも食べて落ち着きなよ」

「うわぁ! 犬が喋ったぁぁ!!」
「カ、カワイイ……」
「バカヤロウ! 犬が喋って二足歩行するなんてあり得ない! コイツ……モンスターだぞ!!」

「……オイラ狼なのに……」

 やっぱりな、そうなると思ったよ。
 トボトボと戻ってきた。
 リリルもタロでもダメとなると……ジロはダメだろうな~。


「ったく仕方ね~な~。犬っころは引っ込んでやがれ」

 お? 行くのかジロ!?


「お前たちよく来たな! ここはダンジョン・リゾート、エンドレスサマー! 常夏の楽園だ。まあ、武器を置いて海でも楽しんでくれよ」

「うわぁ! ネズミのモンスターだぁ!!」
「こ…コイツ武器持ってるわ!」
「オメーちょっとでも変な動きしたら射抜くぞ!」

「……」

 一番まともなこと言ってたけども、やっぱりな……結果は見えてたぞジロ。


『……では、私の番ですね』
「いや……やっぱりここは人間の俺が話した方がいい
 と思う」

 すまんマスコ。
 今の彼らに、動いて喋る西洋人形が耐えられるとは、とてもじゃないが思えない。
 マスコが悪いわけじゃないんだ。
 人間にとって動く西洋人形はホラーなんだ。
 根源的恐怖を感じる対象なんだよ。


「オホン……改めて自己紹介しますね。僕の名前はユウタ。ユウタ・タケハラです。縁あってここのダンジョンマスターをやってます。決して敵対行動はしませんので安心してください」

「き……君は人間なんだよね!?」
「もちろん人間です。仲間はバラエティに富んでいますけど」

 うわぁ、綺麗な人だなぁ……女剣士かぁ、素晴らしい。


「なんで犬やピクシーが喋ってるの?」
「まあ簡単に言うと俺のスキルです。このダンジョン内では敵意のないモンスター達と喋れるようになってます」
「そんなスキルがあるんだ!?」

 いかにもパワータイプって感じのお兄さんが目を白黒させてる。


「……で、結局ここは何なんだ?」
「海型リゾートダンジョンです! つまり常夏の海です! いつ来ても最高の条件で海に入れますよ! しかもまだまだ発展させていくつもりです!!」

 弓使いのお兄さんは警戒を一切緩めない。

「海!? これが海だと!? ……ん!? お前……メルヘンテイマーじゃねえか!」
「メルヘンテイマー?」
「ジョルジュ知ってるの!?」

「コイツら、2日前にアイラさんの屋台に並んでたんだよ! 俺のすぐ前にな」

 あのマルチナさんを紹介してもらった時か……俺たちの後ろに並んでたんだ、弓使いのお兄さん。
 やっぱり縁ってあるんだな。

「あの時からピクシーや犬っころと話してたから、頭のおかしくなった哀れなテイマーだと思ってたんだよ」

「ちょっとそれ酷くない!? それにユウタはテイマーじゃないわよ」
「オイラは狼だぞ!」

「どこの世界に二足歩行する狼がいるんだよ!?」


 うーん……話がとっ散らかって収集がつかないな。
 仕方ない。
 ジロ、やっちゃってください。

 目くばせでジロに合図を送ると、すぐ様ジロは俺の意図を理解して行動に移した。


「オマエら少し静かにしな!」

 そう言って魔力弾を上空に放つ。
 突然の銃声に俺とジロを除く全員が、ビクッとなって静かになった。


「とにかく落ち着いて下さい。僕達は敵ではありません。このピクシーも狼もヌートリアも、誰もあなた方を傷つけたりしません! ここはリゾート……遊ぶ場所であって、戦ったりするところじゃないんです」

 一旦全員が落ち着いたところで次の一手だ。

「リリル、タロ、カチ割りレモンゴを全員分用意してくれ」

「そ、それは何だ!?」

 弓使いのお兄さんが警戒心をMAXにしている。

「このエンドレスサマーの名物ですよ。……と言ってもまだ身内しか食べてないですが。とにかく変な物じゃないんで安心して下さい」

「安心してくれって言われる時が一番安心出来ないタチなんでね俺は」
「もうジョルジュは……この人達から少なくとも敵意は感じないと思うけど……」
「私もバンチと同意見よ。それにとにかく暑いわ……防具全部外して少し涼みたい気分」
「お前ら警戒心が無さすぎだぞ」

「は~いお待たせ~! カチ割りレモンゴよ。溶けちゃう前に食べてみて」
「コレはオイラの好物だぞ! ガリガリ噛みながら食べるとスッキリ爽やかだぞ!」

 リリルとタロがカチ割りレモンゴを作って持ってきた。
 俺はそれを冒険者の方々に配ってから、先に食べてみせる。
 毒なんか入ってないと信じてもらうためだ。


「うーんウマイ!」

 ガリガリと音を立てながら氷を噛み砕く。
 レモンゴの酸味と甘さが常夏のリゾートにピッタリだ。

 続いてリリルやタロ、ジロも食べている。

「私これ大好き」
「ウマウマ。喉越しがたまんないよ~」
「兄さん達も食べてみな……悪くないぜ?」

 食べるという行為が出来ないマスコを除いた、ダンジョンチームの全員がカチ割りレモンゴを食べてみせる。
 それプラス、エンドレスサマーの暑さも手伝って、剣士のお姉さんと大盾を持ったパワー型のお兄さんが、カチ割りレモンゴを口に運ぶ。

「──! お前らヤメ……」

「キャーー! 何コレ、冷たくて美味しい~!!」
「生き返る~! 正直鎧の中が蒸し風呂みたいでギブアップ寸前だったんだよ~。 この冷たさが体に染みる~」
「……ゴクリ……」

「我慢せずに食べてみなよ~」
「そうよ~。本当に美味しいから!」

 仲間に勧められたからなのか、エンドレスサマーの暑さのせいなのか、最後まで警戒し続けた弓使いのお兄さんが遂にカチ割りレモンゴを口に運んだ。

「え? ちょ……え? うっま。これうっま」

 凄まじい勢いで氷を噛み砕いている。
 弓使いのお兄さんにも相当気に入ってもらえたみたいだ。

「ふぅ……もう一杯貰えるか?」
「俺も!」
「わ…私も!」

 リリルとタロに急いで準備させる。
 一先ず最初の警戒は解いてくれたかな?

 運ばれて来たカチ割りレモンゴに全員が手を伸ばす。
 全員武器は収めてくれたみたいだ。


「食べながらでいいんで聞いてください。冒険者の兄さん達はここ、エンドレスサマーの初めてのお客さんになります。そんなお兄さん達に折り入ってお願いがあるんです」

 俺はこの3人に、ある事を頼もうと思っていた。
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