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第二章 エンドレスサマー
第二章7-1 〈ウンディーネ〉
しおりを挟む『また貴方ですか……人間ユウタよ。今回は望んでこの私を召喚したようですが、何用ですか?』
改めて精霊ウンディーネ様と対峙すると、その存在感、その存在としての大きさに圧倒される。
「ウンディーネ様、お呼び立てして申し訳ありません。今回は転移魔法について教えてもらいたくて召喚させていただきました」
『え? そんな理由で私を呼び出したのですか?』
ヤベ……これ怒られる流れか!?
そりゃそうだよな~、精霊様だもんな~。
『……フフフ……悠久の時を生き、召喚された事も数あれど、そんな理由でこの私を召喚する者が出てこようとは……生きていれば何があるか分からないものですね』
セーーーーフ!!
こりゃ今回は運が良かったけど、気軽に精霊は呼び出すもんじゃないな。
「ウンディーネ様ーーーー!!」
ウンディーネ様の気配を感じたからなのか、遠くから見た事も無い満面の笑みで、ジロが走って来た。
『ジラルディーノ……元気そうで何よりです。ちゃんと皆さんの言う事を聞いて、仲良くしていますか?』
「モチロンです。皆さん僕にとても良くしてくれています」
……一体オマエは誰だ。
これが豹変と言うのか……。
ジロが俺たちと話す時と態度が全然違う……まあ飼い主の前だと多少は態度が変わるのも分かりはするが。
幾らなんでも違いすぎやしないか!?
「ウンディーネ様は今日はどうしてここに!?」
ウンディーネ様がジロに事の顚末を話した。
すると、笑顔のジロが俺を見て笑顔のまま、後でゆっくり話そうかと言ってきた。
俺は魔力弾で撃たれるんじゃないだろうか!?
『それで転移魔法についてでしたね?転移魔法は少々特殊な時空間魔法で、才覚のある者が転移石に触れたり使用したりすると使えるようになる事があるのです。要は転移石というキッカケがあって初めて可能性が出てくるのです』
なるほど……でも俺ってダンジョン内をサブコアで移動しているけど、これはノーカウントなんだろうか?
『それは転移石ではないのですよ。ダンジョン内でのみ使えるスキルを、誰にでも使えるようにした魔導具と言ったところでしょうか』
て事は転移魔法使えるようにするにしても、結局転移石がいるのかぁ。
こりゃ本格的に商業都市国家グローブ遠征も視野に入れなきゃならんかもだな。
でも今すぐは無理だし悩む。
うーん……堂々巡りだな。
「ユウタく~ん、ウンディーネ様はお忙しい方だから、あまりお引き留めしては迷惑になりますよ」
ジロよ……その引きつった笑顔をやめて下さい。
『構いませんよジラルディーノ。人間と直に話すなんて、そうそうあることでは有りませんから。人間ユウタよ、他になにかありますか?』
さすがウンディーネ様、心が海のように広いね。
じゃあお言葉に甘えてあと一つだけ。
「水を司る精霊のウンディーネ様から見て、このエンドレスサマーに足りない物ってなんですか?」
『これまた面白い事を聞きますね。……そうですねぇ、マリンスポーツをやれたら素敵かもしれませんね。それと……』
それと……?
『"らうめん"があるといいですね。内陸国のビシエイド王国に住む貴方達には分からないかも知れませんが、海水浴場なんかでは"らうめん"がとても人気な食べ物なのですよ』
「え? ラーメン!?」
『??? "らうめん"です』
「その"らうめん"って麺料理の? スープに浸ってるヤツ?」
『アラ? ご存知なのですか? 私も好きで、たまに人間の姿をして食べるんですよ』
「ははは……精霊様の意外な一面を知りました」
しかし、まさかこの世界にラーメンがあったとは……。
でも考えてみたら焼きそばによく似たヤキメンがあるのだから、ラーメンによく似たらうめんがあっても不思議じゃないか。
それに海の家で食べるラーメン不思議と美味いもんな~。
ヨシ! ラーメン作りも機会を見て挑戦してみよう。
「ウンディーネ様ありがとうございました。物凄く参考になりました」
『フフフ……私も戦場に召喚されるより余程楽しい時間でしたよ。では私はそろそろ戻りますね』
「ウンディーネ様~」
『ジラルディーノよ、皆様に良く仕えるのですよ。そして人間ユウタよ……願わくば、次の召喚も戦場でないよう祈っています』
「はい……ありがとうございました」
そして蜃気楼のようにウンディーネ様は消えて行った。
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