『ダンジョンdeリゾート!!』ダンジョンマスターになった俺は、ダンジョンをリゾートに改造してのんびりする事にした。

竹山右之助

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第二章 エンドレスサマー

第二章23 〈新たなる仲間〉

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「なんでラーガは自我が戻った後も、ジグマに従ってたんだ?」

 俺の質問にタロは少し考えてから答える。

「過去にオイラにヤラレてたから仕返ししたかったのか、自我を取り戻しても結局操られたままだったのか……今となってはもう、わかんないぞ」

「確かに」

「それにただのテイムじゃなかった可能性もあるぞ」

「不気味な杖使ってたしなぁ……」

「あれが魔導具だったなら、色んな効果があっても不思議じゃないしな」

「なるほど……」

 そうだとしたらラーガ達は、襲いたくもないナイトウルフ達を襲わさせられて、したくもないのに三体融合して個を失くして戦わさせられていたのか……あんまりだ。

「次会ったら、キッチリ落とし前つけさせてやる」

「う~ん……オイラは害がない限りは魔族なんかと関わらない方がいいと思うぞ?」

「タロほどの狼でもそう思うのか?」

「魔族って、ほとんどは人間と変わらない奴らなんだけど、ごく一部の奴のネジの外れっぷりが異常なんだぞ。執着の仕方とか愛情が捻じ曲がってる奴とか……とにかく関わらない方がいいぞ」

「タロが、そこまで言うならその方がいいんだろうな」


 少しの間二人の間に沈黙が訪れる。
 次に口を開いたのはタロだ。


「ユウタは戦いのない国から来たって言ってたろ?」

「うん」

「初めて剣を持った日にダンジョン攻略したのも凄いけど、良く剣を振ることに躊躇わなかったな」

 ─────……。

 確かにそうだ。
 俺はダンジョンでモンスターを初めて斬った時も、魔族のジグマを斬った時も何も躊躇しなかった。
 ジグマに至っては見た目はほとんど俺たち人間と変わらないのにだ。

 日本にいた時のことを考えたら刃物で人を斬りつける事なんて考えた事もなかった。
 それなのに今の俺はジグマに対して、仕留め損なったとすら考えていた。
 この感情の変化は良いことなのだろうか?

「この世界で生きてくなら、良いことなんじゃないのか?」

「う~ん、でもなぁ……」

「じゃあユウタは、リリルやアイラ達を守らなきゃならない時に、何も出来なくてもいいのか?」

「──それは!」

「そういう事だぞ。この世界は震えてるだけじゃ何も守れないんだぞ。ユウタのその心情の変化はきっと、神様がこの世界で生きる為に、最適化してくれたんだぞ」

 神様か……。
 日本から転移して来た時に戦えるようにしてくれたのかな?
 これもチートの一つなのか、それともジョブスキル【剣を奏でる者ソードマスター】が俺にダウンロードされた時に、その辺の感情のコントロールもされたのだろうか?
 そうだとしたら、俺はスキルに振り回されていやしないか?
 スキルに勝手に感情面まで変化させられていたら、いつの間にか俺は俺でなくなってしまうのでは……。
 
まあ、考えても今は答えは出ない。
 神様がこの世界に対応出来る様にしてくれたと思っておこう。


 ◇  ◇  ◇


「────サガ様!!」

 歩いて戻ってきた俺とタロに、グロックが一早く気付いて駆け寄ってくる。

「ご無事でしたか!?」

「ノープロノープロ。俺たちに掛かったら余裕なんだぞ」

「タロが大活躍だったよ」

「さすがサガ様。して、キメラはどうなりましたか?」

 俺はグロックに、今回の首謀者が魔族であった事、キメラは倒したけど魔族には逃げられた事を伝える。

「魔族ですか……」

「何か襲われる心当たりはあるのか!?」

「それが我らには全くないのです」

 結局、何故ナイトウルフの群れが魔族に狙われたのかは分からなかった。


「長も亡くなった、オマエ達はこれからどうするんだ?」

「仮にではありますが、私が長の代行を務めさせてもらいます」

 グロックが長の代わりに群れをまとめるみたいだ。

「ですが私にはまだ、長ほどの戦闘力も無いですし、魔族に群れの場所が割れている以上、どこか別の場所に移ろうと思っています」

 確かにジグマが二度とナイトウルフ達を狙わない保証なんてどこにも無い。
 ジグマの狙いが判らない以上、次があると思うのは当然だろう。


「ならさ、みんなでウチに来なよ」

「……? ウチとは一体……」

 俺とタロとでエンドレスサマーの事を説明する。


「ダンジョンマスターの話は本当だったのですね」

「オイラがお前達に嘘付くわけないぞ!」

「有難いお話ですが、私の一存では決めかねますので、皆と相談してもよいでしょうか?」

「もちろんだよ」

 グロックが仲間と相談に行ったので、俺たちは少し眠って待たせてもらう事にした。



「……ウタ様……ユウタ様」

 誰かに呼ばれた気がして目を覚ますと、俺を囲むようにナイトウルフ達が座っていた。

「───ビックリしたぁ……タロは?」

「サガ様はまだ寝ておられます」

「寝させといていい?」

「モチロンです。それで先程のお話ですが、我らナイトウルフ、グロック以下12頭ユウタ様のダンジョンでお世話にならせていただきたく……」

「マジ!? やったぜ!!」

「我らは狩りくらいしか取り柄がありませんが……」

「いやいや狩りはしたくなったらダンジョンの外で自由にしてくれていいよ。お願いしたいのは、ダンジョンに居る人間の送迎と護衛だよ」

「送迎と護衛ですか……?」

「そ。ダンジョンで働いてくれてる仲間の人間なんだけど、普通の人間だから戦えないんだよね。自由に町や村に買い出しに行ったりするのに、タロだけじゃ事足りなくてね」

「それは理解できますが、そんな事だけで良いのですか?」

「普通の人間にしたら、自由に移動出来るって、物凄くありがたい事なんだよ……頼めるかな?」

 グロックのほかに、ゲパードやダネル、ステアーも口々に任せてくれと言ってくれた。

 ナイトウルフが皆んなの移動の足になってくれるなら心強い。
 タロに聞いた話では、その辺のモンスターでは歯が立たないくらいには強いらしい。
 今回はキメラという相手が悪過ぎたみたいだ。


 〈ナイトウルフ12頭に【パートナー契約グッドフレンズ】を適用しますか?〉

 頭のなかに【黒幕フィクサー】の声が響く。
 俺は二つ返事で適用に同意する。

 しかしこの【パートナー契約グットフレンズ】ってジロの時にも出たけど、何なんだろうな。
 これで正式な仲間になったのかな? 程度にしか思ってなかったけど、今のところ何の効果があるのか分からないんだよね。

 そうこう考えていると、再び例の声が頭に響いた。


 〈スキル【思念通信テレパス】を作成しました〉
 〈魔力を消費して、スキル【完全なる懐柔パーフェクトフレンズ】【パートナー契約グッドフレンズ】が適用されている者との遠距離通信が可能になりました〉


 な、な、な、思念通信テレパス~!?

 サラッと使えるようになりました言ってるけど、無茶苦茶便利じゃねえの、コレ?
 しかも急に使えるようになったのは【パートナー契約グッドフレンズ】の人数が増えたからなのか!?
 取り敢えずグロックで試してみるか……。


(グロック……グロック……)

思念通信テレパス】でグロックに呼びかけてみた。
 すると、グロックは耳をピクピクと動かしてから、驚いた顔をしてこちらを向いた。

「ユウタ様今のは……」

「俺の新スキル【思念通信テレパス】だ。どうやら魔力を使って、離れた仲間との通信が出来るらしい。ナイトウルフ全員使えるようになったんだけど、ナイトウルフ同士で試してくれない?」

 そう言ってグロックにお願いする。

(分かりました)

 グロックは【思念通信テレパス】で返事をしてから試してくれたが、どうやら俺との相互通信しか出来ないようだ。
 つまり俺という親機と子機は話せるが、子機同士では連絡できないようだ。

 残念だけど、出来ないものは仕方がない。
 お次はエンドレスサマーとの遠距離通信だ。

(リリル……リリル……)

(え?)

(ジロ……ジロはヌートリア……)

(だからヌートリアーム……え?)

(マスコ……マスコ……)

(……)

 マスコだけ返事かない。
 リリルとジロには帰ってから説明すると言って一旦通信を切った。

 どうやら、マスコとはフレンズ契約していないから【思念通信テレパス】が使えないみたいだ。
 という事は、タロとも出来ないという事だろう。

「いつまで寝てやがるんだオマエは!?」

「痛っ!?」

 タロの頭を軽く叩いて起こしてから、試してみたがやはり出来なかった。
 戦闘面で一番共闘する事になるだろうタロとは使えた方がいいから、【パートナー契約グッドフレンズ】を適用しておく。
 マスコも帰ってから適用すれば問題ないだろう。


 リリルとジロに【思念通信テレパス】で帰る事を伝えてから、俺たちは新しい仲間と共にエンドレスサマーに帰る事にした。


 そして俺は帰ったら、絶対ノンビリと過ごしてやると心に決めていた。
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