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第三章

第三章23 〈突入〉

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 ───信じれば道は開かれる。

 俺はその言葉だけを胸に、光るエクスカリバルを振り下ろした。

 サシュン。

 何とも耳に心地の良い音ともに、【不可視インビジブル】で隠されたていた最下層への道が現れた。


「なんだ今の? 壁斬った音じゃなかったぞ?」

「手応えも壁斬った感じじゃねーわ。なんて言うか、空間の粘りを斬ったと言うのか……」

「はぁ?」

「だから空気の重さを斬ったと言うのか……」

「ユウタ……人語で頼む」

「だぁっ! もういいだろ、道が見つかったんだから!!」

「でもズゴイぞ。オイラが魔法撃っても、びくともしなかった壁をすんなり斬って消し去ったんだから」

 タロに褒められて、まんざら悪い気はしない。

「壁を斬ったって言うよりは、魔法を斬ったって言う感覚が近いのかもしれない」

 俺は自分の両掌に残る感触を確かめながら、うまく言い表せられない感触にヤキモキしていた。


「しかし、どうするか……」

 最深部への突入には皇帝も共にという話だった。
 本来ならこの時点で、皇帝に報告しに一度戻る予定だったのだが、ダンジョンマスターのドラゴンにはその猶予は残されていないかもしれない。

 そのタイムラグをなくすために戦闘開始直後に、カナとリリルに皇帝を呼びに行ってもらったのだが……果たして到着を待っていてもいいものだろうか?


 ◇  ◇  ◇  ◇


「急いで! とにかく急いでオジサン!」

 今ダンジョンの中を高速で飛行する一頭の飛竜がいた。
 その飛竜を駆るのは、帝国ドランゴニア皇帝・ユーリィ・ドランゴニア三世である。
 そしてカナとリリルも共に騎竜していた。

「この飛竜もっと飛ばせないの、オジサン!?」

 リリルは皇帝に言葉が通じない事を良い事に言いたい放題だ。

「このピクシーは何て言っておるのだ!?」

 皇帝はカナの肩にとまり騒ぎ続けるリリルが、何を言っているのか気になっているようだ。

「申し訳ありません……私にも何を言っているのかまでは……ユウタやタロがおれば分かるのですが……」

 カナは心底申し訳なさそうに謝罪する。

「構わぬ。大方、もっと飛ばさんか! とでも言っておるのだろう。だがダンジョン内は入り組んでおるでな、これ以上はスピードを上げられん」

 確かに現状でさえ、お供の近衛兵達が操る飛竜は遅れ気味だ。

「しかし其方からの報告にあったアンデッド共は出てこんの……それも注意しながら飛んでおるのだが……見つかるのはアンデッド共の焼死体のみ。アンデッドなのに死体とは、おかしな話ではあるがな」

 皇帝は至る所に見られる戦闘の跡を見て、いかにユウタ達が無茶苦茶な力で圧倒してダンジョンを進んだのかを肌で感じ取っていた。


「もしかしたらダンジョン内のアンデッドは、其方の連れが全滅させてしまったのやも知れぬな」

「……流石に全滅とまでは……でも最後にアンデッドの親玉のような魔族を見かけました。もしかしたらその魔族を既に討ち取っているのかもしれません」

「そうだと良いがな……」


 そして飛竜は、最下層の一つ手前の階層に辿り着く。

「もう少しだが、この辺りはさらに激しい戦闘があったようだな」

 皇帝は無数に散らばる、アンデッドだった残骸を見回す。

「たった二人で、この数のアンデッドと魔族を相手にするとは……化け物か?」

「……あの二人は化け物です」

「さっきから二人だけで話してんじゃないわよ!? もう少しで着くんだから、気合い入れなさい!」

 リリルの叱咤が効いたのか、もはや戦闘は起こらないと皇帝が確信したのか、それとも逸る気持ちを抑えきれないからなのか飛竜のスピードが上がっていく。
 後続の護衛の飛竜は完全に置き去りだ。


「ん!? 道が……道が開いておる!」

 最下層への道が開いている。
 もちろん誰が道を切り開いたかは口にするまでもない。

 一度飛竜を止め。辺りを見回してもユウタとタロの姿は見えない。

「我の到着を待たずに最下層へ向かったか……」

「申し訳ありません皇帝。お約束では共に最下層へ参る予定でしたが……」

 カナが皇帝に頭を下げる。

「構わぬ。無闇に約束を違える男には見えなんだ。先を急がねばならん理由があったのであろう」

「……」

「ユウタ達がいないんだから、ゴチャゴチャ言ってないで行くわよ!」

 言っている言葉の意味は分からないが、何をリリルが伝えようとしているのかは皇帝に分かっていた。


「お前達はここで待機せよ。万が一アンデッドが襲撃してきた場合のみ、最下層へ来い。その他の魔物ならば各自の判断で交戦せよ」

「「はっ!!」」

 皇帝は護衛の近衛兵に待機を命じ、カナとリリルを伴い、改めて飛龍を駆り最下層へと向かった。


 ◇  ◇  ◇  ◇



「本当にオイラ達だけで入っちゃって良かったのか?」

「……良くはないだろうけどな。でも、時間的に余裕が無いかもしれん」

 俺とタロは、皇帝の到着を待たずに最下層へと向かう事した。
 今は最下層への階段を全力で下りているところだ。



「よし、最下層に着いたぞ」

 階段を全て下りると、俺達の目の前には他の階層には無かった大きな扉があった。

「エンドレスサマーのタロがいた部屋にもこんな扉あったな……守護者の間……か。懐かしい」

 タロと戦った日が、ずいぶん昔のように感じる。

「この紋章は確かにドラゴン族……しかも火龍の紋章だな」

 火龍……か。

「開けるぞ? 覚悟はいいか?」

「ユウタこそいいのか? 相手はオイラよりも格上かもしれんぞ?」

「タロよりも格上の魔物がいるのかよ……」

「ドラゴン全部がじゃないけどな」

「でも、だからと言って二の足踏んでるときじゃない。行くぞ」

 そう言って俺は、ダンジョンマスターのドラゴンが待ち構える部屋の、大きな扉をゆっくりと押したのだった。


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私、竹山竹善の新作、

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笑えるコメディを目指して書いておりますので、是非読んで見てください。

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