『ダンジョンdeリゾート!!』ダンジョンマスターになった俺は、ダンジョンをリゾートに改造してのんびりする事にした。

竹山右之助

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第三章

第三章29 〈ジロとタロ〉

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 平原を無言で歩く怪しい生き物が二匹いた。


「…………」
「…………」

「…………」
「…………」

「何か話せよ」
「話す事があれば話してるぞ」
「……そうか」
「……そうだぞ」

「…………」
「…………」

「…………」
「…………」


 無言に耐えきれなくなったネズミの魔物が叫ぶ。

「ダァーーーッ! いい加減にしやがれ!!」
「……急に大声出すなだぞ」

 一見狼のようなまるんとした魔物は至って冷静だ。


「テメエは何しに付いてきたんだよ!?」
「世間知らずのネズミ一匹じゃ大変かと思ったんだぞ。旅を舐めたらダメだぞ」
「テメエ、マジでぶっ飛ばすぞ! だいたい舐めてるのはオメーだろうが!? なんだその探検隊みたいな帽子は!」
「サファリキャップだぞ。冒険には必要なものなんだぞ」
「よーし分かった。オマエがふざけてんのはよく分かった」
「ただ歩いてるだけなのに、オマエの重装備の方が遊んでるようにしか見えないぞ!」
「うん、殴る。オラァァ!」
「かかってこいだぞ」




 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「アイツら今頃ケンカしてたりしてな」

「え!? まだ出てって数時間しか経ってないんでしょ?」

 想像してクククと笑う俺に、リリルは呆れ顔だ。
 流石にあの二人でも、そんなすぐにはケンカしないと思ったのだろう。


「でもタロが付いて行くと言った時は、ビックリしたけどな」

「そりゃそうよ。普段は一緒に行動なんてしないからね」

「でもアイツら仲悪そうに見えて仲良いからな。なんだかんだでうまくやるだろ」

「そうだといいけど……」

 リリルも本当は一緒に行きたかったのかもしれないな。

「ま、うるさいのが二人も居なくなって、せいせいするわ」

 やっぱり寂しいんだな。


「それより今日はどうすんの?」

「そうだなぁ……何しよう?」

「私に聞かないでよ」

「……釣りでもするか」



 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「はぁっ、はあっ、はあっ」
「ぜいっ、ぜいっ、ぜいっ」


 街道脇の原っぱに、傷だらけのネズミの魔物と狼の魔物が横たわっている。

「な、なかなかやるじゃねえか……」
「オマエも思ったより、よっぽどやるんだぞ」
「当たり前じゃねーか……これでもウンディーネ様一番のペットだぞ」
「見直したぞ。それよりオイラ腹が減ってきたんだぞ」

 狼の魔物の腹がグウと鳴る。
 それを聞いたネズミの魔物は飯を買いに行こうと提案した。


「ここから一番近い村はどこだ?」
「ここからだとアルモンティアだな。だけどアソコはアイラがいなくなったからイマイチだぞ多分」
「……なるほど、アイラはアルモンティアの大人気屋台の店主だったって言ってたな」
「そうだぞ。どうせなら食べた事ないものに挑戦しに行ってみるか?」
「それもいいかもな」
「よし、そうと決まれば町も初めて行くところにしようと思うぞ」
「仕方ねえ……付き合ってやるとするか」

 そうして狼の魔物が空中で、カッと光り大型の狼の魔獣フェンリルへと姿を変える。


「ん? ユウタの奴がいないのに変身出来るのか!?」
『ユウタの奴がな……道中危険があってもいかんからと許可を出してくれてな』
「アイツはバカのくせして、そういう事はちゃんと気が回るんだな」
『フッ……乗るがいい。まだ見ぬグルメを目指して飛ばすぞ』

 ネズミの魔物が乗りやすいようにと、フェンリルが頭を下げた。
 そこにピョンとネズミの魔物が乗り込む。


「ヨシ! オマエの全速を見せてみやがれ!!」
『良いのだな? 泣いても止まりはせんぞ』
「行け! その脚が折れて走れなくなるまで!」

 その場からフェンリルの姿が消えるようになくなる。
 一瞬でトップスピードにのったフェンリルが、空気を切り裂くように走り去っていったのだった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「ふあぁ……しかし釣れないな。ダンジョンマスターが糸を垂らしてんだから、もう少し釣れても良さそうなものなのにな」

『当ダンジョンは、そういう忖度は一切致しません。釣れないのならば、餌を変えるなり場所を変えるなりしてみてはどうですか?』

 俺の愚痴にも似た言葉を聞いていたマスターコアのマスコの言葉だ。


「ちぇ……今度竿の改良をパントさんに頼んでみるか……」


「おーい、ユウタさーん!」

 遠くで俺を呼ぶ声が聞こえる。
 声のする方を見てみると、モヤの村のアイテム換金所の店主サトゥルだ。


「サトゥルさん、こんにちは。よく来てくれました」

「お言葉に甘えて来ちゃいましたよ。ジロくんとタロくんが旅に出たとリリルちゃんにそこで聞いたのですが……」

「ええ、ケンカしてないか心配ですけどね。それより今日は?」

「仕事に一段落ついたんで、アイラさんのヤキメンを頂こうかと思いまして」

「良いですね、俺も一緒に行きますよ。それとこの竿の改良をパントさんに頼んで貰ってもいいですか?」

「もちろん構いませんよ。私も子供の頃に川でよく釣りをしたもんですが……転移ゲートも設置してもらえたことですし、海釣りを始めてみようかな?」

 そんなサトゥルの何気ない社交辞令を俺は聞き逃さない。


「いいじゃないですか! やりましょうよ釣り! いや~良かった……エンドレスサマーで、お客さん以外で釣りする人いなくて、つまらなかったんですよね」

「え、ええ」

「ようし! エンドレスサマー海釣り部の発足だ!」


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