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第三章
第三章33 〈新名物爆誕〉
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新名物『らうめん』の開発に日夜取り組んだ結果、ついにエンドレスサマーに新名物が完成していた。
その新名物の名を『ライスカリー』と言う。
なぜラーメンの開発をしていたのにカレーが完成したのかと言うと……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ユウタ! 頼まれてた麺の試作持ってきた」
バンチが手打ちの麺を何種類か持ってきてくれた。
試作を頼んだだけで何種類か試作を待ってくるとは、さすがバンチだ。
その麺を早速試してみる。
「美味い! 美味いっちゃ美味いけど……」
「ユウタには悪いけど、スープの味がボヤけてるね」
「いやいや、本当にその通り」
スープ単体として飲む分には、俺が試作したラーメンスープは中々美味い。だけど、いざ麺を入れてラーメンとして食べてみると、完全に麺の味に負けて味がボヤけてしまっている。
それにバンチが言うには、売るほどの量の麺を手打ちで賄うのは、やはり厳しいらしい。
筋肉の塊であるバンチが言うのだから、本当に厳しいのだろう。
どうしたものか悩んだ末に、ヤキメンも麺料理じゃないかと気付き、すぐにアイラさんに相談に言ったのだが、ヤキメンの麺はアイラさんの両親が手打ちしているらしく、違うタイプの麺をさらに仕込むのは厳しいようだった。
ならばとヤキメンの麺で試作を使ってみたのだが、やはりラーメンとは程遠い代物だった。
「……よし、ラーメンは一旦保留にしよう。やっぱり一度『らうめん』食べてからじゃないとね」
「せっかくスープも輪郭は出来てきてたのにねぇ……それともスープとして売っちゃう?」
「ははは……バンチのロッジで提供してくれて構わないよ」
そう言いながら、俺は何か引っかかるものを感じた。
ん? なんだ、このひっかかりは……ラーメンにするには弱いスープ……スープとして売る……?
……あ! 出汁として使えばいいんじゃね?
「そうだ! そうだよ! バンチ試作、試作ぅー! 今から言う物をモヤで買ってきて!」
そうして俺はバンチに買い物を頼む。
こっちの世界に来て色々な料理を食べて来た。
ドランゴニアでは地球の料理に似た食べ物もあったんだけど、この料理はどこにも無かったんだよね。
バンチに頼んだ買い物はスパイス数種類にハーブ数種類、調味料に人参玉ねぎ、それに肉だ。
モヤとは転移ゲートで繋がっているため、あっという間にバンチが帰ってくる。
仕入れから戻ったら早速試作を開始した。
先ずスパイス。クミンにクミンシード、ガラムマサラにウコンにコリアンダー。
辛味成分のカイエンペッパーは初めは少量でいいだろう。これらを挽いて粉にする。
粉になったスパイスを混ぜ、サラダ油と小麦粉と共に弱火で火にかけ香りを立たせてペースト状にしておく。
これとは別にスライスした玉ねぎを火にかけ飴色にしていくのだが、これにはコツがあってまず塩を振って水分を出やすくしておく。
火は弱火ではなく中火から強火だ。そして余り動かさない。
焦げ目が付いてきたら混ぜて、少量の水を足す。この水分でフライパンに付いたコゲを剥がして玉ねぎに混ぜ込んでいくと驚くほど速く玉ねぎの色は変わっていくのだ。
そして玉ねぎは飴色を通り越して黒っぽくなるまで炒めておく。
それから乱切りにした人参と肉を炒め、ここに初めのスパイスペーストと玉ねぎを入れて馴染んだら、ラーメンに使おうと思っていた魚出汁のスープをたっぷりと入れて、ここに数種類のハーブを縛って一緒に中火で煮込む。
このハーブは臭み取りだ。
数十分煮込んだ所でハーブだけ取り出して、オイスターソースを少量入れて数分煮込んだら完成だ。
そう、試作していたのはラーメン用に作っていた出汁を使ったカレーだ。
「うっはーいい香り。バンチご飯炊けてる?」
「炊けてる炊けてる。すごくいい香りのする煮込みだねー?」
「でしょでしょ? これ俺の地元で嫌いな人いるのか? ってくらい大人気メニューなんだよ。これをご飯にかけて食べるんだけど……」
そう言ってバンチにカレーをよそって渡す。
バンチが試食第一号だ。
バンチが口に運ぶスプーンを緊張しながら見守る。
「…………」
「…………」
「……何これ? 美味しすぎるんだけど?」
「マジ?」
「マジ」
俺は嬉しくなるグッと拳を握る。
そして俺も試食をしてみる。
「うわ、うっま。何コレ? ウマーーーイ!!」
俺のイメージよりだいぶサラサラでバランスもまだまだだけど、魚出汁のよく効いたかなり美味い部類のカレーだった。
何より久しぶりのカレーライスが俺の胃袋に染み渡り、何故だが目頭が熱くなった。
バンチに気付かれないように隠れて目を擦る。
「これお肉じゃなくてシーフードでも合いそうだね!?」
「そうそう! シーフードカレーてのがあるんだYO!」
俺は久しぶりにカレーを食べて完全にご機嫌だった。
この後アイラさんも加わり試作を繰り返した。
粘度については、ジャガイモを入れれば解決するかもしれないが、ジャガイモを入れると一気に保存性が悪くなってしまうので入れない事にした。
そしてその日のうちに、エンドレスサマーに二つ目の名物『ライスカリー』が爆誕したのであった。
その新名物の名を『ライスカリー』と言う。
なぜラーメンの開発をしていたのにカレーが完成したのかと言うと……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ユウタ! 頼まれてた麺の試作持ってきた」
バンチが手打ちの麺を何種類か持ってきてくれた。
試作を頼んだだけで何種類か試作を待ってくるとは、さすがバンチだ。
その麺を早速試してみる。
「美味い! 美味いっちゃ美味いけど……」
「ユウタには悪いけど、スープの味がボヤけてるね」
「いやいや、本当にその通り」
スープ単体として飲む分には、俺が試作したラーメンスープは中々美味い。だけど、いざ麺を入れてラーメンとして食べてみると、完全に麺の味に負けて味がボヤけてしまっている。
それにバンチが言うには、売るほどの量の麺を手打ちで賄うのは、やはり厳しいらしい。
筋肉の塊であるバンチが言うのだから、本当に厳しいのだろう。
どうしたものか悩んだ末に、ヤキメンも麺料理じゃないかと気付き、すぐにアイラさんに相談に言ったのだが、ヤキメンの麺はアイラさんの両親が手打ちしているらしく、違うタイプの麺をさらに仕込むのは厳しいようだった。
ならばとヤキメンの麺で試作を使ってみたのだが、やはりラーメンとは程遠い代物だった。
「……よし、ラーメンは一旦保留にしよう。やっぱり一度『らうめん』食べてからじゃないとね」
「せっかくスープも輪郭は出来てきてたのにねぇ……それともスープとして売っちゃう?」
「ははは……バンチのロッジで提供してくれて構わないよ」
そう言いながら、俺は何か引っかかるものを感じた。
ん? なんだ、このひっかかりは……ラーメンにするには弱いスープ……スープとして売る……?
……あ! 出汁として使えばいいんじゃね?
「そうだ! そうだよ! バンチ試作、試作ぅー! 今から言う物をモヤで買ってきて!」
そうして俺はバンチに買い物を頼む。
こっちの世界に来て色々な料理を食べて来た。
ドランゴニアでは地球の料理に似た食べ物もあったんだけど、この料理はどこにも無かったんだよね。
バンチに頼んだ買い物はスパイス数種類にハーブ数種類、調味料に人参玉ねぎ、それに肉だ。
モヤとは転移ゲートで繋がっているため、あっという間にバンチが帰ってくる。
仕入れから戻ったら早速試作を開始した。
先ずスパイス。クミンにクミンシード、ガラムマサラにウコンにコリアンダー。
辛味成分のカイエンペッパーは初めは少量でいいだろう。これらを挽いて粉にする。
粉になったスパイスを混ぜ、サラダ油と小麦粉と共に弱火で火にかけ香りを立たせてペースト状にしておく。
これとは別にスライスした玉ねぎを火にかけ飴色にしていくのだが、これにはコツがあってまず塩を振って水分を出やすくしておく。
火は弱火ではなく中火から強火だ。そして余り動かさない。
焦げ目が付いてきたら混ぜて、少量の水を足す。この水分でフライパンに付いたコゲを剥がして玉ねぎに混ぜ込んでいくと驚くほど速く玉ねぎの色は変わっていくのだ。
そして玉ねぎは飴色を通り越して黒っぽくなるまで炒めておく。
それから乱切りにした人参と肉を炒め、ここに初めのスパイスペーストと玉ねぎを入れて馴染んだら、ラーメンに使おうと思っていた魚出汁のスープをたっぷりと入れて、ここに数種類のハーブを縛って一緒に中火で煮込む。
このハーブは臭み取りだ。
数十分煮込んだ所でハーブだけ取り出して、オイスターソースを少量入れて数分煮込んだら完成だ。
そう、試作していたのはラーメン用に作っていた出汁を使ったカレーだ。
「うっはーいい香り。バンチご飯炊けてる?」
「炊けてる炊けてる。すごくいい香りのする煮込みだねー?」
「でしょでしょ? これ俺の地元で嫌いな人いるのか? ってくらい大人気メニューなんだよ。これをご飯にかけて食べるんだけど……」
そう言ってバンチにカレーをよそって渡す。
バンチが試食第一号だ。
バンチが口に運ぶスプーンを緊張しながら見守る。
「…………」
「…………」
「……何これ? 美味しすぎるんだけど?」
「マジ?」
「マジ」
俺は嬉しくなるグッと拳を握る。
そして俺も試食をしてみる。
「うわ、うっま。何コレ? ウマーーーイ!!」
俺のイメージよりだいぶサラサラでバランスもまだまだだけど、魚出汁のよく効いたかなり美味い部類のカレーだった。
何より久しぶりのカレーライスが俺の胃袋に染み渡り、何故だが目頭が熱くなった。
バンチに気付かれないように隠れて目を擦る。
「これお肉じゃなくてシーフードでも合いそうだね!?」
「そうそう! シーフードカレーてのがあるんだYO!」
俺は久しぶりにカレーを食べて完全にご機嫌だった。
この後アイラさんも加わり試作を繰り返した。
粘度については、ジャガイモを入れれば解決するかもしれないが、ジャガイモを入れると一気に保存性が悪くなってしまうので入れない事にした。
そしてその日のうちに、エンドレスサマーに二つ目の名物『ライスカリー』が爆誕したのであった。
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