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第一章
猫屋敷レオ
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廊下に出てA組の教室から離れれば離れるほど、本来の高校生らしい喧騒が聞こえてくる。やがて階段の方までやってくると、俺たちはどちらからともなく足を止めた。
「それで、話って何!? 七嶋くん!」
やはり声がデカい。
幸い周りが賑やかなので、今はそこまで気にならないが、あのA組の教室内で会話するとなるとかなり気を遣うことになる。
あまり話を長引かせないよう手短に済ませなければと思い、俺は単刀直入に聞いた。
「あのさ。昨日のあれって、一体何だったんだ?」
「昨日のあれ?」
「ほら、都先生万歳とか大好きですとか、クラスの全員が急におかしなテンションになっただろ?」
「おかしなテンション? そうだっけ?」
猫屋敷はぼんやりと首を傾げている。まるで昨日のあれがおかしいとは全く思っていない様子だ。
「おい、冗談だろ? あのA組の連中……まあ、俺もA組だけど。あいつら全員、昨日は途中から急に人が変わったみたいにテンションが高くなってたじゃないか。最初のうちは先生に挨拶すら返さなかったのに。何かおかしいとは感じなかったのか?」
「うーん……。まあ確かに、普段のテンションが低すぎるっていうのはボクも気になってたけどね。せっかくボクが渾身の挨拶をしても無視するような連中だし」
「いや。さすがにあれはリアクションに困ると思うけど……」
なんだか会話が噛み合っていない気がする。
彼もまた昨日は天上先生に言われるがまま、全力で悪ノリしていたわけで。流されやすい性格なのだろうか、そもそもあの状況に何の疑問も抱いていない感じがする。
その後もいくつか質問を重ねてみたが、埒が明かなかった。こちらが欲しい情報は得られないまま時間だけが過ぎ、やがて校内には予鈴が鳴り響く。廊下で騒いでいた他の生徒たちはどんどん教室へ戻り始め、辺りが静かになっていく。
「ボクたちもそろそろ戻らないとね」
「あ、うん……」
結局、昨日の謎は解けないままだ。
A組の他のクラスメイトたちにも聞き込みをして回りたいところだが、残念ながら今は気軽に話しかけられそうな相手がいない。
「あっ、都先生だ!」
猫屋敷は階段の手すりから身を乗り出すと、嬉しそうに階下へ手を振った。
俺も釣られて見ると、視線の先で、昨日と同じ白衣姿の女教師が階段を上ってくる。
天上都。謎の多い担任だ。
美人で優しくて、常に笑顔で、受け持った生徒たちに愛の言葉を囁く。一見すると最高の先生だと言えなくもない。
けれど俺にとっては、何か得体の知れない、気味の悪い存在にしか思えなかった。
一体何を考えているのか想像もつかない——そんな彼女に対して、俺の本能はしきりに、頭のどこかで警鐘を鳴らしていた。
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