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第二章
アナログゲーム同好会
しおりを挟む『ちょっと。なんでわざわざ同じ部室に入ってくるのよ!?』
彼女の静かなる怒りの視線を受けて、俺の脳内では瞬時にノイズが生成される。
やってしまった。
まさかの確率で、どうやら水無瀬と同じ部活……もとい、同好会を選んでしまったらしい。二人一緒に行動すると目立つから、という理由で分かれたのに、これでは本末転倒である。
「あれ。二人とも、もしかして知り合い?」
察しの良い上級生の一人が俺たちの様子を見て声をかけてくる。
さすがにここで嘘を吐くと言い訳が面倒なことになりそうなので、同じクラスであることを白状した。
「なーんだ、そっかぁ。珍しいこともあるもんだねぇ。ただでさえ仮入会する生徒も少ないのに」
そうですねー、と白々しく話を合わせる俺と水無瀬。
後で彼女から小言を言われるのは確実だな、と覚悟する。
「あ……ちなみにあたしたちの担任、天上都先生っていうんですけど、ご存知ですか?」
クラスの話題に触れたところで、水無瀬はここぞとばかりに天上先生について質問した。抜かりのないその姿勢に、俺は思わず舌を巻く。
「天上先生? うーん、私は知らないなぁ」
「あっ。もしかしてあの先生かな? いつも白衣を着てる美人な先生!」
上級生たちの中に一人だけ、彼女を知っているらしい人物がいた。俺と水無瀬は内心期待に胸を膨らませる。が、残念ながら返ってきた反応は予想とは違うものだった。
「廊下でたまに見かけてさぁ。美人だなーっていつも思ってたんだよ。そっかぁ、天上先生っていうのか。覚えとこ」
どうやら時々姿を見かけるだけで、お互いに関わりを持ったことはないらしい。
他の五人については先生の存在すら知らないようだったので、この時点で早くも俺たちの用事は済んでしまった。あとは消化試合とばかりにゲームをプレイするだけである。
「部屋の中にあるものは好きに使っていいよ。基本はみんな自由行動だから。好きなゲームで遊んで、満足したら帰るってだけ。気楽でいいでしょ」
同好会のリーダーらしき男子生徒が言った。常識の範疇で遊ぶなら、特に守るべき規則などもないらしい。
部屋の中には、いくつかの机を寄せて作られた島が点在している。それぞれの場所には囲碁や将棋、花札にオセロ、ジェンガなどのアナログゲームが乱雑に置かれていた。
それらを一通り見渡してみると、俺はなんだか懐かしい気分になった。
こういったゲームは小さい頃によく遊んだ覚えがあるが、体が成長するにつれて、いつしか触らなくなっていった。今日のような機会がなければ、この先もなかなか遊ぶことはないだろう。
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