日本語しか話せないけどオーストラリアへ留学します!

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Chapter #3

聞いた方が早い

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「みさきちお疲れー。誘ってくれてちょうど良かったよー! 私も話したいこと沢山あるんだって!」

 放課後。
 こちらのキャンパスまでバスでやって来た舞恋は、すでにご立腹だった。
 どうやらゴルフが今日は別の女の子とデートするようで、気が晴れるまで愚痴らせてほしいというのだ。

「もちろん、みさきちのお悩み相談の方が先だけどね! そんで? 昨日はあの後カヒンと何かあったの? もしかして夜のお誘いされちゃったとか?」

「そっ……そんなわけないでしょ!!」

 思いのほか声が大きくなってしまい、私は周りからの視線に萎縮した。

「……みさきち最近、声がちょっと大きくなったよね。良いことだけど、調節は大事だよ?」

 確かに。
 最近、人と話すことへの抵抗感がなくなってきたからか、つい声のボリュームを抑えることを忘れてしまう。
 以前よりもちょっと話せるようになったとはいっても、やはりコミュ障には変わりないのだ。

 とりあえず場所を移動しようか、ということで例のごとく購買の方へと向かう。
 席を確保した後、おやつを買うかどうかで舞恋と悩みに悩んだ挙句、今回はジュースだけで我慢しようということになった。

 テーブルに戻り、ほっと一息吐いてから、私は昨日のオリバーのことを舞恋に話した。

「なるほどねー。日本人の彼女がステータスってか。でもそれ、オリバーが勝手に言ってただけで別にカヒンがそうだっていう確証はないんでしょ?」

「うん、そうなんだけど……」

 舞恋の言わんとしていることはわかる。
 けれど。

「でも、もし本当にオリバーの言う通りだったとしたら、私……」

 自己主張をしない従順な女性。
 それを恋人にすることで周りに自慢ができるというステータス。
 そんなもののために自分が選ばれたとも知らず、ひとりで舞い上がっていたのかと思うと、恥ずかしくて情けなくて、穴があったら入りたい気分になる。

「そんなに気になるならさ、本人に聞いてみればいいじゃん。その方が手っ取り早いっしょ!」

 ほら貸して、と舞恋は私のスマホを奪い取る。

「えっ、ちょ、ちょっと待って。心の準備が」

「準備ったって、あれこれ悩むだけでしょ? 本人に聞かなきゃわかんないんだからさ、さっさと決着つけた方がいいよ。じゃないとみさきち、悪い方にばっかり考えて勝手に落ち込んでくでしょ?」

 ご明察。
 私の生態をよくご存知でいらっしゃる。

「ほいさ。カヒンに電話かけたよ」

「も~~……」

 カヒンを呼び出し中のスマホを、舞恋はやっと私に返す。

 何度目かのコールで、彼は応答した。

「Hi, Misaki?」

 美咲、と呼ぶ彼の優しい声。

「Hi, Kahin. Where are you now?」

 今どこにいるの? と聞けば、彼はすでに家に帰っていると言った。

「えっ、もう家に帰ってんの? 早っ! ていうか意外!」

 スピーカーの声が漏れて聞こえたのか、舞恋が隣からリアクションする。

 さすがに通話に集中できないので静かにしてもらおうかと思っていると、

「そういえば今日のカヒン、珍しくあくびばっかりしてて眠そうだったっけ」

 思わぬ情報が彼女の口から転がり出る。

 考えてみれば、昨夜はシティで解散した時間も遅かったし、さらにはそこからカヒンは私の家まで送ってくれたのだ。
 彼が自分の家に帰り着いた時間は、もしかすると日付を跨いでいたかもしれない。

 だとすると、彼は寝不足のまま今日の授業に臨んだのだろう。
 放課後もまっすぐ家に帰ったのは疲れていたからに違いない。

「え、えーと……Thanks for yesterday! Have a good rest!」

 昨日はありがとう、ゆっくり休んでね! と私が咄嗟に電話を切ろうとすると、隣から舞恋が慌てて止めに入る。

「ちょちょちょ、まだ本題にかすってもないじゃん! なんで切ろうとしてんの!?」

「だって、カヒン疲れてそうだし……あんまり長電話すると悪いから、明日にでもゆっくり聞こうかなって」

「今ぱぱっと聞いちゃえばいいじゃん! そんなに時間かからないって!」
 
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