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第2章
病院にて
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病院の待合室でまもりさんを待っていると、先に診察室から出てきたのは流星さんだった。
私は椅子に座ったまま、力なく彼の顔を見上げた。
「軽い脳震盪だってよ。幸い意識は早めに戻ったし、特に後遺症もないらしい」
「そう、ですか」
ひとまずホッと息を吐く。
流星さんがいてくれて、本当によかった。
あのとき――まもりさんが倒れた後、半ばパニックを起こしていた私は救急車を呼ぶことさえ頭に浮かばないほど混乱していた。
そこへちょうど買い出しに出ていた流星さんが戻ってきてくれたのだ。
私が説明をしなくとも、彼はすぐに事態を把握して車を出してくれた。
もしもあのとき彼が帰ってきてくれなかったら、私は結局何もできずに、ただまもりさんの隣で泣いていただけかもしれない。
魔法の代償によって苦しんでいるまもりさんを助けることもできずに。
そう思うと、自分が情けなくて恥ずかしくて、穴があったら入りたい気分になる。
そして何より、まもりさんに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「そんな暗い顔すんな。まもりは助かったんだから」
流星さんに言われて、私は今どんな顔をしているのだろうと、ぼんやりと考えた。
もうじきまもりさんも診察室から出てくるはずだ。
彼に会ったとき、私は一体どんな顔をすればいいのだろう?
流星さんは近くの自動販売機で飲み物を買うと、再びこちらへ戻ってきた。
そうして手にしたミルクティーの缶を私に手渡して、どかっと私の隣に座る。
「……すみません。私、何もできなくて」
ミルクティーを両手で握りしめながら、私は項垂れていた。
今は誰とも目を合わせる勇気がない。
流星さんとも、まもりさんとも。
「今回のことはお前のせいじゃない。あんまり気に病んでると、まもりが悲しむぞ」
流星さんが言った。
励ましてくれているのだろうか。
ぶっきらぼうな言い方だったけれど、その低い声色とは裏腹に、言葉にはあたたかみが感じられる。
私が黙っていると、彼は少しだけ間を空けてから、何かを思い出すように天井を見上げて、再び口を開いた。
「最近、まもりの元気がなかったんだよ。お前があの店に来なくなってから」
「え?」
流星さんはがしがしと頭をかき、次の言葉を選ぶように「うー」と低く唸った。
「だから、まもりはお前の顔を見ねーと落ち込むんだよ。この意味がわかるか?」
「意味……?」
まもりさんが、落ち込んでいる?
私の顔を見なかったから?
それは、私の思い上がりでなければ――私に会えないことを、寂しいと思ってくれたのだろうか。
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