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「あれ? どうしたの?」
「……ニコラ、四つ、年上……?」

 なぜかダミアンが片言になっている。そんなに衝撃だったのだろうかとニコラは不安になった。

「同い年だと思ってたのに、ニコラに比べたらオレ……すっげぇガキじゃん……」

 彼は目を逸らして口を尖らせている。同い年だとしてもダミアンは子供っぽいと思っているニコラだが、それを言うと益々拗ねそうなので口を噤む。

「うぅ~~でも! ニコラ、処女だよな?」

 突然何を言い出すのかと、ニコラは驚く。

「え?! な、なに言って」
「違うのかよ!?」
「違わないけど!」

 ダミアンのあまりの剣幕に、ニコラは反射的に返してしまった。

「じゃあオレが初めてなんだな?」

 その言い方だと、これからダミアンと致すのが確定しているかのようで、ニコラは何と答えていいのか分からず目を泳がせる。

「なら、いい……」

 彼女の頬が赤く染まった事で、ダミアンは肯定と受け取ったらしい。

「ま、まって、ほんとにするの? 僕と、ここで……」
「うん、したい。……ニコラは、嫌か?」

 ニコラの戸惑いはなくならない。なぜなら、まだ彼の気持ちを何も聞いていないからだ。ニコラは、ダミアンに握られた手をギュッと握り返し、身体中の勇気を振り絞る。

「……ダンは、どうして僕としたいの? 僕はダンのこと、す、好きだけど……ダンは……ダンは、僕をどう思ってるの?!」
「ど、どうって……」

 今度はダミアンが、驚き呆気に取られた顔になった。

「ぼ、僕のこと、好き?」

 ボボボボッと音がしそうなほど急激に、ダミアンが真っ赤になる。顔どころか、首まで赤い。

「……す……す、すぅっ?! そ、そんなん分かんねーよ! だって、だってつい昨日までお前は男友達だったんだぞ?!」
「そ、そうだよな……」

 明らかにしゅんとして俯くニコラに、ダミアンがソワソワし始める。

「~~っでも!! お前が女だって教えてくれなかったのにイラつくし、お前にオレのこと好きだって言われてスッゲー嬉しいし! お前が処女じゃないかもって思ったら腸はらわた煮えくり返りそうになるし! お前のこと、なんかムチャクチャ可愛いって思うし、誰かに盗られる前に、オレのにしときたい……って…………それじゃ、駄目か……?」

 ニコラは恥ずかしさで頭からシュワシュワと湯気が出てくる気がした。ダミアンの言葉は最早『好き』と言っているのと同義だが、言った当の本人は気が付いていないようだ。

「……分かった。いいよ……僕がダンのこと、好き、だから……」

 言いながらニコラは、ダミアンの手をきゅっと握ったまま、ゆっくり顔を近付けると、そっと彼の唇にキスをした。

 ニコラはゆっくり唇を離そうとする。だが、離れきる前にダミアンの方からしっかりと重ね直されてしまう。

「んん!?」

 彼は片手でニコラの後頭部を抑え、彼女の下唇を唇で挟み、優しく吸い、舐めた。唇の間を舐められ、ニコラはつい口を薄く開く。開いた唇の隙間から、ダミアンが入り込んできた。

「ふ……ぅ……」

 ダミアンの舌はニコラの上顎をくすぐり、歯列をなぞり、頬の内側や舌の裏側まで這い回る。その口内全てを味わいつくそうとする動きに、ニコラの息は上がっていく。
 時折クチュリと水音が聞こえ、耳まで犯されているような感覚にニコラの肌がざわざわと粟立つ。
 同時にたまらなく恥ずかしく、彼女はダミアンの舌から逃れようと必死だった。年頃になっても浮いた話の一つもなかったニコラには、こんなキスは上級者向け過ぎたのだ。
 その時、フッと、ニコラの頭にある疑問が浮かぶ。口付けの最中である事を一瞬忘れて言葉を発しようとした時、ダミアンに舌を絡め取られてしまう。

「ん、んぅ……」

 そのまま彼の口内に引き込まれ、ザラついた表面を擦り合わせ、唾液をまぶしてぬるぬると絡められる。仕上げにちゅうっと吸われて唇を開放された時には、ニコラは息も絶え絶えだった。

「ん……はぁ、はぁ……」
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