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狂気の夜陰
3 ☆
『いやぁ! 尭司! やめて!』
泣き叫ぶ亜夜果。
『ほら、欲しいんだろう? 足、開けよ』
身をすくめる亜夜果を見下ろして、傲慢にいい放つ声……それが自分のものだと気付いて、戦慄が走る。
『舐めろって言ってるんだよ。俺のものを咥えて、奉仕しろって言ってるんだ』
『や! いやっ!』
嫌がる亜夜果の頭を片手で掴み、その口に自分のモノを押し込む姿は、あまりにも醜悪だった。
『チッ! やっぱり初めてじゃ上手く行かないか。こら、歯を立てるなよ……舌を使え……ヘタクソだな!』
涙ぐんでむせ込む亜夜果に対して、情け容赦ない言葉の数々を浴びせていく。
それが、その行為も言葉も、尭司自身から発されたという事実に、愕然とした。
これが、あの夜の出来事?
『ああ、やっぱり、生がいいよ。どうする? このまま、中に出そうか?』
恐怖に顔をひきつらせ、嫌がる亜夜果の目元は、すでに泣きすぎて赤く腫れ上がっている。
皮肉にも纏わりつく亜夜果の膣内は、記憶のある中でも最高にねっとりと甘美な感触を尭司に与えた。
けれど、こんな形で欲しかったものではない。少なくとも、誰に恥じることなく認められた暁に望むつもりだった。
なのに、亜夜果を苦しめ、傷付けて、あんな顔をさせて……何故だ?!
哄笑しながら亜夜果の腹に白濁した精液を撒き散らし、その身を汚す悦びに震え、そのまま逃がすまいと亜夜果を捕える自分の姿。
『尭司……ひどい……どうして……』
嘆きの言葉に尭司の胸が痛くなる。
なのに、目の前の自分は、その言葉を聴いて喜色を浮かべている。
【そうだ、嘆くがいい。愛した男の非道を恨め! 憎め! この男は、もっとお前の心を苦しめ、この躯をいたぶり、蹂躙する。絶望しろ。欲望の前には愛など無力なのだ。ただひたすらに、肉欲と官能の悦びに身を沈めるのだ。そうすれば、この淫靡な躯を、さらに美しく染め上げてやろう】
その言葉は、亜夜果には聞こえていない。けれどその意思は、亜夜果の心に突き刺さり、亜夜果の嘆きはますます深まる。
やがて意識を手放した亜夜果の肌を、目の前の尭司は柔らかなその感触を味わい、ついばみ、もてあそぶ。
愛を否定しながら、そこには、確かに亜夜果への思いがあった。
それを愛と呼ぶべきなのか……狂気に彩られた偏愛。
亜夜果の心を得られぬならば、その心を壊して、躯のみを得ようとする狂おしい思いが、あった。
……ああ、そういうことなんだ。
弾き飛ばされた自分の心から見えるもの。
亜夜果をむさぼる自分の体に宿るモノの真実を、本来のその肉体の持ち主である尭司は、悟ることができた。
その哀しいまでの情念を、けれど看過するわけにはいかない。このまま、亜夜果の心が闇に沈んでいくことを、亜夜果を苦しめる存在を許すわけにはいかない。
『亜夜果を守るのは、俺の使命にしたいけど』
再会した夜に、亜夜果に伝えた言葉に嘘はない。
亜夜果を、守る。
それは、ひどく大それた思いだ。
けれど、せめて自分の体が亜夜果を苦しめることだけはしたくない。
『………………とうとう、日の兵士は、自らの命を絶ってしまいました……』
けれど、それは、何の解決にもなってない。結局、愛する娘を苦しませ狂わせただけだ。
俺は、理由も分からず嘆くだけだった日の兵士じゃないんだ。
だけど、どうすればいいのかなんて、分からない。
亜夜果に近付かなければいいのか?
そうして、自分ではない誰かと亜夜果が幸せになるのを傍らで見ていろと?
……そんなこと、出来るわけがない。
まだ現れてもいない亜夜果の架空の伴侶にすら嫉妬する。
気を抜くと、自分の心がどんどん闇に堕ちていくのが止められない。
体だけでなく、心までアレに乗っ取られているようだ。
いや、違う。
根本的には、同じなんだ。
亜夜果を愛するあまり、欲するあまり、狂いそうなこの恋に囚われているのは、アレと、同じ。
亜夜果を愛し守りたいと思う一方で、その魅惑的な躯を思い切り耽溺したいという欲望があることを、尭司は認めた。
亜夜果を愛すればこそ。
そう認めると、自分の肉体を奪った得体の知れぬモノが、ひどく矮小な存在に思えた。
亜夜果の躯をだけを得ようと狂おしくもがく、哀れな情念。
だけど、間違っている。
亜夜果の心を蔑ろにして、躯だけを手に入れたところで、その先には悦びなどないんだ。
一時の快楽だけを求めて、結局月の巫女を失い、悪霊にまで身を落とした月の兵士。
お前などに、このまま亜夜果を奪われ、失わせてたまるものか。
目覚めると、窓から白々とした朝日が差し込んでいた。
夢、だったのか?
それにしては、あまりにも明瞭な。
尭司は、自分の衣服を確認し、ホッと息をつく。
もしや、夜中に亜夜果のもとに行って、無体を強いたのではないかと不安になったがそんな形跡はなかった。
机に手を伸ばし、手鏡を持ち上げる。
朝日を反射して煌めく鏡面に、自分の顔が映る。
決意を固めて、尭司はそれらを丁寧にリュックサックにしまうと、身支度をして朝食も食べずに家を出た。
早朝の街中を、尭司は目的地に向かって一途、走り抜けた。
泣き叫ぶ亜夜果。
『ほら、欲しいんだろう? 足、開けよ』
身をすくめる亜夜果を見下ろして、傲慢にいい放つ声……それが自分のものだと気付いて、戦慄が走る。
『舐めろって言ってるんだよ。俺のものを咥えて、奉仕しろって言ってるんだ』
『や! いやっ!』
嫌がる亜夜果の頭を片手で掴み、その口に自分のモノを押し込む姿は、あまりにも醜悪だった。
『チッ! やっぱり初めてじゃ上手く行かないか。こら、歯を立てるなよ……舌を使え……ヘタクソだな!』
涙ぐんでむせ込む亜夜果に対して、情け容赦ない言葉の数々を浴びせていく。
それが、その行為も言葉も、尭司自身から発されたという事実に、愕然とした。
これが、あの夜の出来事?
『ああ、やっぱり、生がいいよ。どうする? このまま、中に出そうか?』
恐怖に顔をひきつらせ、嫌がる亜夜果の目元は、すでに泣きすぎて赤く腫れ上がっている。
皮肉にも纏わりつく亜夜果の膣内は、記憶のある中でも最高にねっとりと甘美な感触を尭司に与えた。
けれど、こんな形で欲しかったものではない。少なくとも、誰に恥じることなく認められた暁に望むつもりだった。
なのに、亜夜果を苦しめ、傷付けて、あんな顔をさせて……何故だ?!
哄笑しながら亜夜果の腹に白濁した精液を撒き散らし、その身を汚す悦びに震え、そのまま逃がすまいと亜夜果を捕える自分の姿。
『尭司……ひどい……どうして……』
嘆きの言葉に尭司の胸が痛くなる。
なのに、目の前の自分は、その言葉を聴いて喜色を浮かべている。
【そうだ、嘆くがいい。愛した男の非道を恨め! 憎め! この男は、もっとお前の心を苦しめ、この躯をいたぶり、蹂躙する。絶望しろ。欲望の前には愛など無力なのだ。ただひたすらに、肉欲と官能の悦びに身を沈めるのだ。そうすれば、この淫靡な躯を、さらに美しく染め上げてやろう】
その言葉は、亜夜果には聞こえていない。けれどその意思は、亜夜果の心に突き刺さり、亜夜果の嘆きはますます深まる。
やがて意識を手放した亜夜果の肌を、目の前の尭司は柔らかなその感触を味わい、ついばみ、もてあそぶ。
愛を否定しながら、そこには、確かに亜夜果への思いがあった。
それを愛と呼ぶべきなのか……狂気に彩られた偏愛。
亜夜果の心を得られぬならば、その心を壊して、躯のみを得ようとする狂おしい思いが、あった。
……ああ、そういうことなんだ。
弾き飛ばされた自分の心から見えるもの。
亜夜果をむさぼる自分の体に宿るモノの真実を、本来のその肉体の持ち主である尭司は、悟ることができた。
その哀しいまでの情念を、けれど看過するわけにはいかない。このまま、亜夜果の心が闇に沈んでいくことを、亜夜果を苦しめる存在を許すわけにはいかない。
『亜夜果を守るのは、俺の使命にしたいけど』
再会した夜に、亜夜果に伝えた言葉に嘘はない。
亜夜果を、守る。
それは、ひどく大それた思いだ。
けれど、せめて自分の体が亜夜果を苦しめることだけはしたくない。
『………………とうとう、日の兵士は、自らの命を絶ってしまいました……』
けれど、それは、何の解決にもなってない。結局、愛する娘を苦しませ狂わせただけだ。
俺は、理由も分からず嘆くだけだった日の兵士じゃないんだ。
だけど、どうすればいいのかなんて、分からない。
亜夜果に近付かなければいいのか?
そうして、自分ではない誰かと亜夜果が幸せになるのを傍らで見ていろと?
……そんなこと、出来るわけがない。
まだ現れてもいない亜夜果の架空の伴侶にすら嫉妬する。
気を抜くと、自分の心がどんどん闇に堕ちていくのが止められない。
体だけでなく、心までアレに乗っ取られているようだ。
いや、違う。
根本的には、同じなんだ。
亜夜果を愛するあまり、欲するあまり、狂いそうなこの恋に囚われているのは、アレと、同じ。
亜夜果を愛し守りたいと思う一方で、その魅惑的な躯を思い切り耽溺したいという欲望があることを、尭司は認めた。
亜夜果を愛すればこそ。
そう認めると、自分の肉体を奪った得体の知れぬモノが、ひどく矮小な存在に思えた。
亜夜果の躯をだけを得ようと狂おしくもがく、哀れな情念。
だけど、間違っている。
亜夜果の心を蔑ろにして、躯だけを手に入れたところで、その先には悦びなどないんだ。
一時の快楽だけを求めて、結局月の巫女を失い、悪霊にまで身を落とした月の兵士。
お前などに、このまま亜夜果を奪われ、失わせてたまるものか。
目覚めると、窓から白々とした朝日が差し込んでいた。
夢、だったのか?
それにしては、あまりにも明瞭な。
尭司は、自分の衣服を確認し、ホッと息をつく。
もしや、夜中に亜夜果のもとに行って、無体を強いたのではないかと不安になったがそんな形跡はなかった。
机に手を伸ばし、手鏡を持ち上げる。
朝日を反射して煌めく鏡面に、自分の顔が映る。
決意を固めて、尭司はそれらを丁寧にリュックサックにしまうと、身支度をして朝食も食べずに家を出た。
早朝の街中を、尭司は目的地に向かって一途、走り抜けた。
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