鬼の子は鬼

るい

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人間と鬼

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「そろそろ着く頃だ。」

「ふむ。ありがとう」

長老たちは長らく歩き、村長の住む村の近くまで来ていた。


「ここだ。しばらく待っていてくれ」

若い男は長老たち鬼を置いて、娘と一緒に村の中に入っていった。
村は畑や家畜が多く、農業に使う道具が綺麗に整えられていて清潔な空気が漂っていた。
村には人1人おらず、沈黙だけがそこにはあった。


男たちが中に入り、しばらく経った。


「戻って来ませんね。…まさか逃げたんじゃ!?」

「心配するな。必ず戻ってくる」


長老は村をじーっと見つめ、大人しく待っていた。



それからさらに時間が経ち、やっと2人が戻ってきた。
後ろには、ヨボヨボのおじいちゃんも一緒だ。


「すまない。だいぶ待たせてしまったな。やはり揉めてしまってな…」

「いや、構わんさ。それで…」


長老はヨボヨボのおじいちゃんをちらっと見て、顔を確認した。



「久しぶりじゃな。村長。まだ生きておったとは光栄じゃ」

「お前こそ、また会えるなんて思ってもおらんかったわい」


長老は硬かった表情を和らげ、村長と握手を交わした。




「…え?」



長老と村長を除くその場にいた全員が驚いた。


「長老様?久しぶりとはどういう事です」


鬼之進が長老に問いた。


「村長様…?これは一体…」


若い男も状況が理解できなかったようで、村長に問いていた。



「みな、黙っていてすまなかった。とりあえず説明をしよう」

「それなら中に入っておくれ。外では少々危険かもしれぬでな」

「おお、すまぬな村長。そっちのが我々にしてはありがたい」


村長は長老たちを招き入れ、みんなで村長の家の中に入っていった。



「村長様…いいのですか?」

「ん?なにがじゃ?」

「鬼を村長様のご自宅に招くなんて…」

「彼は私の古い友人だ。友を招き入れるのは普通のことじゃろう」

「友人…?私には一体何が何だか…」

「ああ、そうじゃな。では説明しようかの。わしと長老の関係を…」




村長の話はこうだった。

時は100年前。その頃は人間と鬼が共存していた時代だった。同じ島で生活をし、鬼と人間では大差ないと考える思想が強かったのだ。
人間は頭が冴えて賢く、鬼は筋肉があり力が持ちなので、お互いに助け合って生活し、上手くいっていた。


長老と村長が出会ったのはちょうどその頃、2人が5歳のときだ。
2人は毎日毎日一緒に遊んだ。鬼と人間が仲良しのことは普通だったが、それでも一目置かれるくらいの仲の良さだった。時には家族で食事をすることもあったし、兄弟で遊んだりすることもあった。


人々はこの生活に不満もなく、鬼と人間、誰もが上手くいっていた。そう思っていた…。


空が青々として天気の良いある日、事件が起きた。
人間が1人殺されていたのだ。
それも刃物で刺されたなんてものではなく、首を鋭い爪で掻っ切られたような殺され方だった。


人間は真っ先に鬼を疑った。
鬼は必死に否定した。俺たちじゃない。そんなのありえない。と、鬼は告げ、無罪を主張した。

人間は信じなかった。爪の跡が何よりの証拠だと、譲らなかった。
鬼はそれでも否定し続けたが、人間は聞く耳を持たなかった。

人間は犯人が出てくるまで一緒に暮らすことは出来ないと、村から鬼を追い出した。
鬼はとても悲しんだが、疑われている以上近づくことは危険と判断し、ひとまず村を離れた。


だが、何日経っても殺した犯人が出てくることは無かった。

人間は犯人探しが進まず、犯人も見つからないことに苛立ち始め、村には嫌な雰囲気が漂っていた。


そして、人間の恐ろしいところはここからだった。



鬼たちは村を追い出されてから、小さいが自分たちの集落を作って生活していた。
少し不便ではあったが、人間たちが自分たちを信じてくれればまた一緒に生活できる。そう信じて頑張っていた。事件後、鬼たちも話し合ったが、ここには殺人を犯すような鬼はいない。第一鬼には人間を殺す動機がない。話し合いはそれでまとまった。鬼たちはお互いを信じ合い、無罪を主張し続けた。



事件から1ヶ月経った。
犯人は未だに見つかっていない。
人間はまだ鬼を疑っている様子だったので、村には帰れなかった。


そして、人間に我慢の限界が来た。


突然、鬼の集落に人間がやってきた。
何やら長くて尖った武器のようなものを構えている。
そして鬼に向かってこう言った。

「今から裁判を行う。全員ここに1列に並べ」


鬼たちは状況が理解できなかった。
鬼たちがオドオドしていると、ドンッというものすごく大きな音が空に響いた。
よく見ると人間はブーメランのようなものを持ち、空に向けていた。先の方から煙が出ていたので、恐らくあれが大きな音の元凶だろう。

鬼たちは驚き、動きをとめた。


「さあ、ここに並べ」


鬼たちがまだ動かないでいると、人間はついに、持っていた槍で鬼を刺した。心臓をひとつきだった。
刺された鬼は大量の血を流し、動かなくなってしまった。


「早くしろ。みんなこうなりたいか?」


鬼たちは一連の流れの、あまりの衝撃に泣くこともできなかった。
鬼たちは大人しく従った。この人間は、もう鬼たちが知っている優しい人間ではなくなっていた。
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