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桃太郎
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村長の話は人間と鬼が別々で暮らし始めてから50年がたった時のこと。
鬼が島を離れて以降、人間と鬼は争いを行わず、お互いの生活に一切関わらず生きてきた。
しかし、人間の島の山奥に、鬼たちに対する恨みを持って過ごしている者がいた。
その山奥には老婆と老爺がいた。
2人には息子がいた。あの事件の日、オオカミに息子を殺されたのだ。
しかし2人は事件の真犯人を知らない。未だに鬼の仕業だと信じて疑わなかった。
2人は息子をとても大切にしていた。長年苦労してやっと授かった子だった。それを一夜にして失ってしまったのだ。2人の恨みは募るばかりだった。
おじいさんがが悲しみに暮れていると、おばあさんが桃を拾って帰ってきた。
「ばあさん、なんだいこれ」
「洗濯をしたら流れてきたんじゃ。こんな大きな桃は見たことがない。せっかくだから2人で食べよう」
おばあさんは大きな包丁で、桃を切った。
すると中から神々しい光とともに小さな小さな赤ちゃんが出てきた。
2人は驚いて腰を抜かした。
そんな2人を他所に赤ちゃんは元気な声で泣いている。
2人は顔を見合わせて、その後赤ちゃんを見た。
2人はその赤ちゃんに桃太郎と名付け、育てることにした。
桃太郎はすくすく育ち、あっという間に大きくなった。そして2人は、恐ろしいことを考えた。
桃太郎を利用して、鬼を絶滅させようとしたのだ。
2人は桃太郎に様々な武道、剣道を習わせ、たくましく育てあげた。桃太郎は2人の目論見などつい知らず、みるみるうちに成長していった。
2人は他の人間に桃太郎のことは隠していた。
島の人間たちはだいぶ年老いた2人に今更子育てなど到底出来ないと言うだろう。桃太郎を取られることをおそれたのだ。
桃太郎が青年になった時、とうとう鬼ヶ島へ送り出した。
桃太郎は2人に送られ、勇ましく旅立った。
そして、2人に言われたとおり、鬼退治をした。
「可哀想な子じゃよ。育ての親に利用され、何も知らずに悪を働いた。噂だと桃太郎は文字も言葉も全く知らないらしい。老婆と老爺は桃太郎の事など何も考えちゃいなかったのだ」
「つまり、全てはその老婆と老爺のせいだと…?」
「まあ、事の発端はそうじゃな」
みんな同時に息を飲んだ。
「それで、今その老婆たちはどこに?」
鬼之進が聞いた。
「もう亡くなった。桃太郎が鬼退治から帰ってきてすぐにな。きっと恨みを晴らせて満足したんじゃろう。なんとも自分勝手な人達じゃ」
「そうなのか…では、桃太郎は今どこに?」
村長は俯き、黙ってしまった。
「村長様?」
若い男が村長の顔を覗いた。
「桃太郎は…わからぬ。ここ何年も行方不明なのじゃ」
「行方不明?」
「ああ。老婆たちが亡くなってからわしは桃太郎の様子を見に山奥に入った。そこに3人が住んでたと思われる古い小屋があったが、そこには誰もいなかった。おそらく家を出ていったんだろう」
「では、もしかしたら桃太郎はこの島にはもう居ないのですか?」
「そうかもしれぬし、まだここにいるかもしれぬ。ただ、野放しにしておくのは危険じゃ…」
「え?危険とは…」
「この戦いを終わらせるのには、彼を止めなければならん」
「桃太郎を?なぜなのです?」
「さっきも言ったが、桃太郎は言葉も文字もわからぬ。そして桃太郎は鬼退治に生涯を捧げておる。そう育てられたからな。そして今、この島には鬼がいる…」
「はっ…!桃太郎は鬼を絶滅させる…」
「そうじゃ。わしらが争いをやめようと、桃太郎がいる限り鬼たちの安心は保証されない。我々が桃太郎を止めなければならない。」
「ちょっと待つのじゃ村長。彼の居場所がわからぬと言ったな」
「ああ。そうじゃ」
「一体どうやって止める気なのじゃ。そもそもお主たちは桃太郎を見た事がないのだろう」
「あっ…。」
みんなが深く考え込んだ。するとその時、遠くから1人の鬼が走ってきた。
「長老様ーーーーー!!!」
それは浜辺の戦いで死んだと思われていた鬼のひとりだった。
「生きておったか…!!」
長老たちは喜ぶのも束の間、その鬼のただならぬ様子に表情を変えた。
鬼が島を離れて以降、人間と鬼は争いを行わず、お互いの生活に一切関わらず生きてきた。
しかし、人間の島の山奥に、鬼たちに対する恨みを持って過ごしている者がいた。
その山奥には老婆と老爺がいた。
2人には息子がいた。あの事件の日、オオカミに息子を殺されたのだ。
しかし2人は事件の真犯人を知らない。未だに鬼の仕業だと信じて疑わなかった。
2人は息子をとても大切にしていた。長年苦労してやっと授かった子だった。それを一夜にして失ってしまったのだ。2人の恨みは募るばかりだった。
おじいさんがが悲しみに暮れていると、おばあさんが桃を拾って帰ってきた。
「ばあさん、なんだいこれ」
「洗濯をしたら流れてきたんじゃ。こんな大きな桃は見たことがない。せっかくだから2人で食べよう」
おばあさんは大きな包丁で、桃を切った。
すると中から神々しい光とともに小さな小さな赤ちゃんが出てきた。
2人は驚いて腰を抜かした。
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2人は顔を見合わせて、その後赤ちゃんを見た。
2人はその赤ちゃんに桃太郎と名付け、育てることにした。
桃太郎はすくすく育ち、あっという間に大きくなった。そして2人は、恐ろしいことを考えた。
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2人は桃太郎に様々な武道、剣道を習わせ、たくましく育てあげた。桃太郎は2人の目論見などつい知らず、みるみるうちに成長していった。
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島の人間たちはだいぶ年老いた2人に今更子育てなど到底出来ないと言うだろう。桃太郎を取られることをおそれたのだ。
桃太郎が青年になった時、とうとう鬼ヶ島へ送り出した。
桃太郎は2人に送られ、勇ましく旅立った。
そして、2人に言われたとおり、鬼退治をした。
「可哀想な子じゃよ。育ての親に利用され、何も知らずに悪を働いた。噂だと桃太郎は文字も言葉も全く知らないらしい。老婆と老爺は桃太郎の事など何も考えちゃいなかったのだ」
「つまり、全てはその老婆と老爺のせいだと…?」
「まあ、事の発端はそうじゃな」
みんな同時に息を飲んだ。
「それで、今その老婆たちはどこに?」
鬼之進が聞いた。
「もう亡くなった。桃太郎が鬼退治から帰ってきてすぐにな。きっと恨みを晴らせて満足したんじゃろう。なんとも自分勝手な人達じゃ」
「そうなのか…では、桃太郎は今どこに?」
村長は俯き、黙ってしまった。
「村長様?」
若い男が村長の顔を覗いた。
「桃太郎は…わからぬ。ここ何年も行方不明なのじゃ」
「行方不明?」
「ああ。老婆たちが亡くなってからわしは桃太郎の様子を見に山奥に入った。そこに3人が住んでたと思われる古い小屋があったが、そこには誰もいなかった。おそらく家を出ていったんだろう」
「では、もしかしたら桃太郎はこの島にはもう居ないのですか?」
「そうかもしれぬし、まだここにいるかもしれぬ。ただ、野放しにしておくのは危険じゃ…」
「え?危険とは…」
「この戦いを終わらせるのには、彼を止めなければならん」
「桃太郎を?なぜなのです?」
「さっきも言ったが、桃太郎は言葉も文字もわからぬ。そして桃太郎は鬼退治に生涯を捧げておる。そう育てられたからな。そして今、この島には鬼がいる…」
「はっ…!桃太郎は鬼を絶滅させる…」
「そうじゃ。わしらが争いをやめようと、桃太郎がいる限り鬼たちの安心は保証されない。我々が桃太郎を止めなければならない。」
「ちょっと待つのじゃ村長。彼の居場所がわからぬと言ったな」
「ああ。そうじゃ」
「一体どうやって止める気なのじゃ。そもそもお主たちは桃太郎を見た事がないのだろう」
「あっ…。」
みんなが深く考え込んだ。するとその時、遠くから1人の鬼が走ってきた。
「長老様ーーーーー!!!」
それは浜辺の戦いで死んだと思われていた鬼のひとりだった。
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