鬼の子は鬼

るい

文字の大きさ
13 / 15

桃太郎

しおりを挟む
村長の話は人間と鬼が別々で暮らし始めてから50年がたった時のこと。


鬼が島を離れて以降、人間と鬼は争いを行わず、お互いの生活に一切関わらず生きてきた。


しかし、人間の島の山奥に、鬼たちに対する恨みを持って過ごしている者がいた。

その山奥には老婆と老爺がいた。

2人には息子がいた。あの事件の日、オオカミに息子を殺されたのだ。
しかし2人は事件の真犯人を知らない。未だに鬼の仕業だと信じて疑わなかった。
2人は息子をとても大切にしていた。長年苦労してやっと授かった子だった。それを一夜にして失ってしまったのだ。2人の恨みは募るばかりだった。



おじいさんがが悲しみに暮れていると、おばあさんが桃を拾って帰ってきた。

「ばあさん、なんだいこれ」

「洗濯をしたら流れてきたんじゃ。こんな大きな桃は見たことがない。せっかくだから2人で食べよう」



おばあさんは大きな包丁で、桃を切った。

すると中から神々しい光とともに小さな小さな赤ちゃんが出てきた。
2人は驚いて腰を抜かした。
そんな2人を他所に赤ちゃんは元気な声で泣いている。
2人は顔を見合わせて、その後赤ちゃんを見た。


2人はその赤ちゃんに桃太郎と名付け、育てることにした。
桃太郎はすくすく育ち、あっという間に大きくなった。そして2人は、恐ろしいことを考えた。


桃太郎を利用して、鬼を絶滅させようとしたのだ。


2人は桃太郎に様々な武道、剣道を習わせ、たくましく育てあげた。桃太郎は2人の目論見などつい知らず、みるみるうちに成長していった。


2人は他の人間に桃太郎のことは隠していた。
島の人間たちはだいぶ年老いた2人に今更子育てなど到底出来ないと言うだろう。桃太郎を取られることをおそれたのだ。


桃太郎が青年になった時、とうとう鬼ヶ島へ送り出した。
桃太郎は2人に送られ、勇ましく旅立った。
そして、2人に言われたとおり、鬼退治をした。




「可哀想な子じゃよ。育ての親に利用され、何も知らずに悪を働いた。噂だと桃太郎は文字も言葉も全く知らないらしい。老婆と老爺は桃太郎の事など何も考えちゃいなかったのだ」

「つまり、全てはその老婆と老爺のせいだと…?」

「まあ、事の発端はそうじゃな」

みんな同時に息を飲んだ。


「それで、今その老婆たちはどこに?」

鬼之進が聞いた。

「もう亡くなった。桃太郎が鬼退治から帰ってきてすぐにな。きっと恨みを晴らせて満足したんじゃろう。なんとも自分勝手な人達じゃ」

「そうなのか…では、桃太郎は今どこに?」

村長は俯き、黙ってしまった。


「村長様?」

若い男が村長の顔を覗いた。


「桃太郎は…わからぬ。ここ何年も行方不明なのじゃ」

「行方不明?」

「ああ。老婆たちが亡くなってからわしは桃太郎の様子を見に山奥に入った。そこに3人が住んでたと思われる古い小屋があったが、そこには誰もいなかった。おそらく家を出ていったんだろう」

「では、もしかしたら桃太郎はこの島にはもう居ないのですか?」

「そうかもしれぬし、まだここにいるかもしれぬ。ただ、野放しにしておくのは危険じゃ…」

「え?危険とは…」

「この戦いを終わらせるのには、彼を止めなければならん」

「桃太郎を?なぜなのです?」

「さっきも言ったが、桃太郎は言葉も文字もわからぬ。そして桃太郎は鬼退治に生涯を捧げておる。そう育てられたからな。そして今、この島には鬼がいる…」

「はっ…!桃太郎は鬼を絶滅させる…」

「そうじゃ。わしらが争いをやめようと、桃太郎がいる限り鬼たちの安心は保証されない。我々が桃太郎を止めなければならない。」

「ちょっと待つのじゃ村長。彼の居場所がわからぬと言ったな」

「ああ。そうじゃ」

「一体どうやって止める気なのじゃ。そもそもお主たちは桃太郎を見た事がないのだろう」

「あっ…。」


みんなが深く考え込んだ。するとその時、遠くから1人の鬼が走ってきた。


「長老様ーーーーー!!!」


それは浜辺の戦いで死んだと思われていた鬼のひとりだった。

「生きておったか…!!」


長老たちは喜ぶのも束の間、その鬼のただならぬ様子に表情を変えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ナナの初めてのお料理

いぬぬっこ
児童書・童話
ナナは七歳の女の子。 ある日、ナナはお母さんが仕事から帰ってくるのを待っていました。 けれど、お母さんが帰ってくる前に、ナナのお腹はペコペコになってしまいました。 もう我慢できそうにありません。 だというのに、冷蔵庫の中には、すぐ食べれるものがありません。 ーーそうだ、お母さんのマネをして、自分で作ろう! ナナは、初めて自分一人で料理をすることを決めたのでした。 これは、ある日のナナのお留守番の様子です。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

少年イシュタと夜空の少女 ~死なずの村 エリュシラーナ~

朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
イシュタは病の妹のため、誰も死なない村・エリュシラーナへと旅立つ。そして、夜空のような美しい少女・フェルルと出会い…… 「昔話をしてあげるわ――」 フェルルの口から語られる、村に隠された秘密とは……?  ☆…☆…☆  ※ 大人でも楽しめる児童文学として書きました。明確な記述は避けておりますので、大人になって読み返してみると、また違った風に感じられる……そんな物語かもしれません……♪  ※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

イチの道楽

山碕田鶴
児童書・童話
山の奥深くに住む若者イチ。「この世を知りたい」という道楽的好奇心が、人と繋がり世界を広げていく、わらしべ長者的なお話です。

処理中です...