狼のタルとエサのペコ

るい

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タルとバルク

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「何してんだ…?こんなところで」

「それはこっちのセリフだ。何呑気に寝てやがる」

「呑気って…俺はこう言うの苦手なんだよ」

「お前も狼だろう。こんなとこで寝てちゃずっと除け者扱いだぜ」

「ああいいさ。俺はどうせ認められない狼だからな。それよりバルク、お前はここで何してんだよ。」

「お前を誘いに来たんだ」

「え?」

「だから、たまにはお前と話しでもしようと思って誘いに来たんだ」

「…は?」

「いいから、外に出てこい。」

タルは訳が分からなかった。あの将来有望、人望も厚い人気者のバルクが正反対のタルと遊ぼうとしてるなんて…。
タルはなにか怪しいと思ったが、バルクの他には誰もいなさそうだったし渋々外に出た。


「歩こう」

バルクはそう言うと、暗い夜道をずんずんと歩き始めた。
タルも仕方なく後ろに続いた。

「なあバルク、一体何の用だ?」

「別に。昔はよく一緒に歩いたじゃないか」

「昔の話だろ。俺なんかと歩いてるところを誰かに見られたら、お前までおかしくなったって思われちまうぞ」

「ふっ。構わないさ」

「はぁ?やっぱおかしくなっちまったのか…?」


タルとバルクはそれから無言のまま歩き続けた。
満月が空に輝き、2人を照らした。夜風が気持ちよく吹いている。

「たまには夜の散歩も気持ちいいな」

「ああ、そうだな」

「最近はどうなんだ」

「なにがだ?」

「あの犬のちびのことだ」

「なんでそんなことを聞く?」

「別に。ただ聞いただけだ」

「まあ、仲良くやってるさ。なんせお互いにはぶれものだからな」

「気が合うって訳か」

「うるせぇやい」

バルクはなぜか嬉しそうにふふっと笑った。そして真剣な顔に戻り、話を続けた。

「初めてあいつとお前の関係を見た時、正直羨ましく思ったぜ」

「は?なんでだ?」

「俺は周りからチヤホヤされ育てられた。歩くだけで人が集まるし、何をしても褒められた。だかな、俺には友達なんて呼べるものがいないんだ。人は集まっても、誰も俺の事を見ちゃいない。みんな俺についていることで、自分が強くなった気でいるんだ」

「ほ、ほぉ…」

バルクが急に真剣な話をするので、タルは唖然としていた。
そんなタルを横目に、バルクは続けた。

「俺は独りだったんだ。周りに人はいても、独りだった。そのことにずっと気づかなかったんだ。チヤホヤされ、ぬくぬくと育って、そんな日々に満足していた。だが、独りだと気付いた時、すごく寂しくなったんだ」

「バルク…何を…」

「俺はずっと友達が欲しかった。なんでも話し合えて、心から笑い合える、そんな友達が。そう、お前とあのチビみたいな関係が羨ましかった」

「お前が独りなんて、そんな事言うなよ。お前は俺に無いものを全部もってる、そうだろう?」

「お前から見たらそうなのかもしれないな」

タルはバルクの言うことが理解できなかった。バルクはタルに無いものを全て持っているとずっと思っていたからだ。タルもバルクの事を羨ましいと思っていた。なのにバルクは、独りだと嘆いている。訳が分からなかった。タルが考え込んでいると、バルクは驚きの一言を放った。

「タル、お前にお願いがある」

「ん、なんだ?」

「俺と友達になってくれ」

「は…?」

バルクはタルから目を逸らし、タルとは反対の方へ顔を向けた。タルはまさかバルクにそんなことを言われるとは夢にも思わず、とても驚いた。

「なんで俺と?」

「別に、気が向いたらでいい」

「ははっ、なんだよそれ」

タルはバルクに気持ちを読まれないようにひっそりと喜んだ。友達になってほしいなんて言われると、やはり嬉しいものだ。

「まあ、今じゃなくてもいいさ、いつかな」

「だからなんだよそれ」

タルが突っ込むと、バルクも照れたように笑い、タルとバルクは笑いあった。

「じゃあ今度3人で遊びに行こうよ、いい所があるんだ」

「いいのか?俺もついて行って」

「ああ、ペコなら喜んで遊んでくれると思うぞ」

「そうか、それは良かった」

その時、満月で輝く夜空に高い声の悲鳴が響き渡った。

「おい、この声」

「ペコ!!!」

タルは反射的にペコの家の方へ走った。

「おい!タル!どこへ行く!」

バルクも後を追って走った。
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