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【第二章・アニヲタ、少女ベルリアと出会う】
【第4話】《爺さん》
しおりを挟むーいやいやいや、この世界に来て早々とんだ災難だったなー
この声は、あの爺さんの声だ!
「しっかしまぁ、冤罪とかクソワロタ」
腹立つ爺さんだな、振り返るとあの爺さんが俺のことを見てクスクス笑っていた。白い布は変わらないが、今度はちゃんと顔が見える。予想通りの老けた顔。異世界アニメによくいる本当にベターすぎる爺さんだ。
「どれ小僧、こっちに来い」
俺は爺さんの案内で、ある路地に入った。
「色々と積もる話もあるじゃろう。察しはつくじゃろうが恐らくお前さんの話には誰も耳など傾けてくれん。しかし、あんた強いな」
積もる話があるのはお前だろうがよ。
「なあ爺さん、積もる話とかじゃなくてさ、俺は聞きたいことが多過ぎるのさ。まずここはどこ、なんで俺はここにいるの?そしてあんたは誰?」
「いいだろう。1から話してやろう」
このままこの爺さんに話させてもいいのだが、なにせこの爺さんは余談が多い。なので、勝手に要約させてもらう。
まず俺が今いる所はメルソフィティアという国の王都、まぁ今で言う首都みたいな大きな街にいるらしい。ここまでは夢で見た内容と同じだが、別に国や世界に脅威が迫っている訳でも、俺は国を救うために召喚されたわけでもないようだ。爺さんも、俺に夢まで見せた覚えはないらしいから、完全なデジャブだ。だが、肝心である俺をここに召喚した理由については、あまり教えてくれなかった。教えられたつもりでも、何を言っているのか分からなかった。
「貴様には、強大な力を感じる。先程の騎士との戦闘、死を恐れぬ姿勢。それに何より驚いたのが、あの魔力に包まれた空間でよく意識を保てたものだ…」
「何言ってるの?爺さん」
爺さんは少し真面目な話をするような感じで話しだした。
「お前の故郷の世界には、ここと違い魔力はほとんどない。そちらの世界の人間は、大抵魔力によって時空諸共一時的に抹消される。しかし魔力が切れればそれらは復活する。なので彼らには何もなかったかのように思える。強いて言えば、今頃お前が突然消えて混乱している、とかだろう」
状況はわかった。つまり俺は選ばれし者と言うことだ。なんか異世界アニメの主人公みたいでテンション上がるな~!
「でも爺さん、自分で言うのもなんだけどさ、なんで俺そんなに色々とすごいことしてるの?」
あれ、聞こえなかったかな?爺さん、寝ちゃった?
「先程も言ったがお前は、強大な魔力をもつ何かの気配がする」
目をつぶったまま爺さんは答えた。
「それって、何かわからないのか?」
「わかるよ」
え、爺さんわかるのかよ?
「分かるけど、ストーリー的に今言ったら面白くないじゃん」
なんなんだよこの爺さんは!まじで一回殴っていいかなァマジで!
「それほどの魔力を感じさせる存在、気づかぬ方がおかしいかの。まぁ、わしにゆかりのある人物とだけ言っておこう」
話が理解できなくて頭おかしくなりそうなんですけど。
「やっと見つけたわ、ネグロメトロ!!」
声の方に振り向くと、金髪の少女が屋根の上に立っていた。手には縄を持ち、もう片方の手にはピストルを持っている。やばい!!
「おっとぉ、立て込んできたのぉ」
「言ってる場合かよ!!」
というか、この少女のおかげでわかったがこの爺さんの名前はネグロメドロと言うらしい。
「ちょっと、わし逃げるわ」
「待ちなさい!」
言うや否やネグロの爺さんは、見た目に合わない俊足でその場を抜けた。
「トンズラじゃーい、お前さんもせいぜい捕まらないように気をつけな!そいつに捕まると面倒じゃぞー」
あのジジイ、トンズラしやがったな。俺も…
「逃さないわよ」
少女の手から縄が飛んできて、その縄はきれいに俺のことを縛り上げた。
「おい爺さん!!捕まっちまった!!」
爺さんはついに宙に浮いた。
「あーら捕まったか!しゃーないよ兄ちゃん!まぁ、強く生きろよ!」
てめぇこのクソジジイィィィィィィ!!
(続)
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