玉ねぎの値段が4倍にっ! 一揆起こしていいですか?――聖女と戦う革命戦争

せりもも

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玉ねぎ革命

1 玉ねぎの裏切り

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※このお話はフィクションです。舞台も日本ではありません。

※日本と同じ固有名詞が使われていますが、偶然の一致です。気にしないでください。

※聖女が出てくるのは恐怖政治が始まってからです。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 青果台に伸ばした手が止まった。

「なにこれ。玉ねぎ1ヶ136円?」

 久しぶりのお買い物だった。

 彼女は社畜だ。毎日日付が変わるまで残業している。だが、このところのリモートワークとやらのおかげで、昼間にスーパーへ買い物に行ける、恵まれた身分となった。


 数年前、疫病が流行し、世界的に自宅待機が行われた。ジパング国は勤勉な国であるが、同時に周囲に同調できる、気遣いの国であった。

 他国で流行り出した魔法石通信を用い、自宅で仕事ができるようにしたのだ。この世界では、魔法石が生み出す魔力が、様々な分野でエネルギーとして使われていた。


 社畜であっても、彼女の給料は、決していいわけではない。いつもかつかつの生活をしている。そもそも非正規雇用である。月給は正社員の8掛けほど、しかも賞与など見たこともない。

 デフレのお陰で、なんとか生活できていたと言っても過言ではない。


 玉ねぎに向かって伸びていた手が、わなわなと震えだした。

「前回来た時は、3個で100円だったはず!」
ここ何年もずっと、玉ねぎは3個で100円だった。

 段ボールの中に無造作に詰め込まれているのを、他のご婦人たちといっしょになって掻き回し、ビニール袋に詰めてレジに持って行ったものだ。

 玉ねぎ3個100円。
 それ以外の値段を、彼女は知らない。というか、それ以外の値段では買ったことがなかった。

 1個136円って。
 しかも、3個で100円だった頃と、同じくらいの大きさだ。

「ええと。100÷3=33.333……、136を33.333……で割ると、」

 社畜の特殊能力を使い、素早く計算した。なんと4倍の値上げだ。


「た、玉ねぎが私を裏切った!」







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