玉ねぎの値段が4倍にっ! 一揆起こしていいですか?――聖女と戦う革命戦争

せりもも

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玉ねぎ革命

11 祖国は危機にあり

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 革命政府と名を変えた国民自治政府の勢力は、日増しに強まっていった。
 彼らは密偵を雇い、政府への反抗心を持つ者を容赦なく逮捕していった。


 隣近所、学校や職場での密告も奨励された。数百年ぶりで五人組制度も復活した。なにしろ横並びが好きで、隣人が気になるお国柄である。密告制度は大きな効果を上げた。


 処刑は、公開処刑で行われた。ただ残念なことに、例の、ヤマト16世が開発させたツボマッサージ式処刑台「ハラキリ」のお陰で、処刑は大層地味なものとなってしまった。派手な流血を期待して集まった人々は、一瞬で死んでいく処刑者にがっかりして、田舎へ帰っていった。


 玉ねぎ革命に対し、諸外国は最初、静観の構えだった。

 なんにしろ、内政干渉は好ましくない。それに、ジパングは、中花国という大国の先っぽの海に浮かんだ、小さな島国である。国力も弱く、革命が起ったくらいだから、経済的にも貧乏国だ。大切な農林水産業も老人任せで衰退気味、資源埋蔵量も少なく、魅力がないこと夥しい。


 つまり、三流国である。極東の島国の大騒ぎを、国際社会は生ぬるく観察しているだけだった。


 そんな中、王妃主導による亡命事件、そしてその失敗が起きた。国王一家は、クラヤミザカ宮殿に幽閉され、その後、一家は引き離されて、首塚塔に監禁された。


 王妃の実家である中花国の皇帝は(彼は王妃の兄だった)、さすがに黙っていられなかった。皇帝は、半島のコーリア国王と会談を行い、「湖上宣言」を発令した。「湖上」というのは、両国国境の静かな湖畔で会談が行われたからである。


 もっとも、中花国、コーリア国とも、三流国ジパングの革命に対し、手を出すつもりはなかった。「湖上宣言」は、これ以上過激なことをやったらひどい目に遭わせるぞ、程度の警告だったのだ。


 しかし、ジパングの革命政府はそうは捕えなかった。
 政府は、大国中花国と文化先進国コーリア国が、自分たちの国土に侵入してくるつもりだと捉えた。

 なぜなら、ジパングは、素晴らしい技術と文化、その上おもてなしの心まで併せ持つ、小さいながらも洗練された一流国家だから。

 すでに国際経済において三流国に転落していることに、革命政府は全く気付いていなかった。



「祖国は危機にあり!」

議会は宣言し、ジパングは、大きく湧いた。



各地で義勇兵が募られ、軍が編成されていった。非正規雇用が大半を占めていた国民にとって、これは、割のいい仕事だった。工場や暗い事務所の片隅で、先輩社員にいじめられながら日銭を稼ぐよりずっといい。社会的な保証も完備されていたし、一流絵師がデザインした、かっこいい軍服だって貰える。食べる物の心配をしなくて済み、病気や怪我をすれば、きちんとした資格を持つ軍医に治療してくれるのだから、悪い話ではなかった。



戦争を意識し、景気はみるみる上向いて行った。何十年前のバブル景気以来の好景気に、ジパングは湧いた。

軍事費増大による見せかけの内需拡大であるのは言うまでもないが、いけいけどんどん!

この機を逃さず、革命政府は祖国防衛の名のもとに強力な中央集権を行い、人や物資を首都に集めた。また、「国民皆徴兵制」法案を議会に通した。

先のことを考えていたら、戦争なんてできない。
要は勝てばいいのだ。そうすれば、領土併合やら賠償金やらで、カネはがっぽり入ってくるはずだから。


この機会を逃さじ!

革命政府はチャンスの女神の前髪をがっちりと掴み、まずは中花国、続いてコーリア国に対し、宣戦布告を行った。







 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

1791年8月、ピルニッツ宣言
オーストリア皇帝レオポルト2世(アントワネットの兄)とプロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム2世による

翌92年4月、立法政府、オーストリアに宣戦布告、革命戦争の幕開け

同じく92年7月、立法議会で「祖国は危機にあり」と、義勇兵召集の呼びかけ






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