【完結】竜王に嫁いだら、推しの半竜皇子の継母になりました〜冷酷な夫には興味ありませんが、闇落ち予定の皇子は私が全力で幸せにします!〜

せりもも

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L'épilogue 1

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本編終了後、すぐの時間です。エピローグ的なお話です

⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*



 同盟国が主軸となって、国際会議が開かれた。
 皇帝ワッツァによってめちゃくちゃにされた国境の線を、新たに引きなおすのだ。

 バートラフは辞退したけれど、彼には、生まれ育ったソスクレア宮殿と、その荘園が与えられた。そしてわたしには、レゼルネ村が。

 わたしたちの領地は、会議が始まって早々に認可された。その後、会議は、各国の思惑が交差して、なかなか話が進まないらしい。


 国際会議はメレンクールの隣国、プロセシア王国で開催されているので、バートラフは、レゼルネ村に滞在していた。

 けれど、ソスクレア領有が決まると、そそくさと帰って行ってしまった。


 「よろしかったのですか、ひい様」
 一緒にベリーの実を摘みながら、アーヤがそんなことを言う。
「村の管理ならわたしたちに任せて、バートラフ様とご一緒に、ソスクレアに行かれたらよろしいのに」

「いったい何の立場で?」
ひときわ赤い実を摘み取り、わたしは問う。
「わたしは彼の継母で、彼の父親に離縁状を叩きつけた廃妃よ? ソスクレアになんか、戻れるわけないじゃない」

 国際法上、ワッツァとの離婚には、困難が付きまとった。なにしろ、この大陸では、王族の離婚は認められていないのだ。

 でも、関係各所に根回しし、最終的には多大な賄賂をまき散らし、なんとか実現に漕ぎつけた。

 資金は、なんと聖女が出してくれた。わたしからメレンクールを取り上げたことに心が痛んでいたのだろうか。彼女は、メレンクール城に残った財宝を売り払う許可を与えてくれたのだ。

 確かに賄賂は悪いことかもしれないけど、あの竜の妻でいるくらいなら、なんだってやる。だってそうでしょ? ワッツァの妻でいるなんて、冗談じゃないもの。


 「バートラフ様がいなくなってお寂しいでしょ?」
アーヤがずばり問いかける。

 わたしは無言で、ベリーを摘み続けた。

 バートラフとは、戦争が終わってから、殆ど2人きりになったことがない。彼の周りにはいつも、聖騎士団の騎士たちがいたし、わたしの周りには、アーヤや村の人がひっきりなしに訪れていた。

 これからのことについて、バートラフとわたしの間には、なんの相談も合意もない。
 わたしたちはこれから、ソスクレアとレゼルネ村に別れて暮らすことになるのだろうか。バートラフはそれを望んでいるのだろうか。

 もしそうなら、受け容れるしかない。
 だってわたしは、バートラフを愛しているから。彼には、自分の人生を自分らしく生きていってほしい。わたしの存在は必要ないというなら、この村で、彼の活躍を見守っていこう。

 バートラフには、竜と人間の間の懸け橋となるという、重要な任務があるのだから。

 緑の葉の上に、赤く熟したベリーの実が、次々と目に入る。甘酸っぱい香りが、心にぽっかりと空いてしまった穴の縁を、優しく撫でてくれる気がする。

 わたしにも、バートラフと同じくらい、長い長い人生が残されている。彼がわたしに会いに来た時に、あまりの劣化ぶりに失望させないように、しっかり生きていかなくちゃ。

 ベリーの入った籠を、アーヤが軽く揺すった。

「バートラフ様もバートラフ様です。デジレ様にあんなにべったりひっついておられたのに、あっさりソスクレアへ帰ってしまわれるなんて」
「彼は、ソスクレアの領主ですもの。責任があるのよ」
「それにしても、ですよ」

 アーヤの目が輝いた。そういえば彼女は、切り替えが早いんだった。

「ねえ、ひい様。お隣のプロセシア王国では今、国際会議が開かれていますよね。王や公子、宰相など、大陸中の要人が集まっているんですよ? 噂では、若くて裕福な貴公子たちが勢ぞろいだとか」

「へえ」

「会議では、ひい様がロシュフォイユ帝国に嫁がれたことが、高く評価されています。その上、晴れてあの悪い竜の皇帝との離婚が成立したわけですからね! 貴公子や若い宰相の中には、どうしてもひい様にお会いになりたいという方がいらっしゃるとか」

「もちろん、断ってくれたわよね?」

 誰にも会いたくないと、アーヤを通じて、申し入れてある。政略結婚とか、同盟とか。自業自得ではあるが、父と義母は、竜の鱗に関する嘘の情報を流したと、犯してもいない罪を糾弾され、投獄された。政治の玩具になるのなんて、まっぴらごめんだ。

 アーヤは不満げだった。

「一応は。ですが、一国の王や王子もいらっしゃるのですよ? 若いイケメンの」

「だから?」

「……。まあ、いいです。ひい様は昔から、金持ちや身分の高い方に、ご興味がありませんでしたものね。いくらでもお断りになればいい。ですが、ご安心ください。最終的にはセティがいます。何があっても、あの子は、ひい様のおそばにいます」

「それは心強いわ」

 セティとは、姉弟のようなものだものね。

「はい。あの子は、少しばかり、そのう、浅はかで思慮分別の足りないところはありますが、決して頭が悪いというわけじゃないんです。そう思います。セティは、筋の通った、真っ直ぐな青年です」

 何を思ったか、唐突にアーヤは息子の自慢を始めた。

「セティが優良物件であることは、母親であるこの私が保証します。私としては、ですね。こほん、私としては、ひい様とセティが……」

 言いかけて、アーヤは固まった。

「ここにいたのか。探したよ」

 ベリーの藪をかき分け、朝、村を出発したばかりのバートラフが、満面の笑みを湛えて現れた。




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