石川五右衛門3世、但し直系ではない

せりもも

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花瓶の穴

17 番屋で推理

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 俺達が連れていかれたのは、番屋だった。

「まずは、五右衛門。お前さんに謝んなきゃならねえ」

 人払いをすると、潔く、長治親分が頭を下げた。
 わけがわからず、俺達は、顔を見合わせた。

「元陶工の三助殺しの下手人が、上がった」

「はあ? それは俺じゃなかったんですかい?」
少しだけ訳が分かって、俺は高飛車に出た。
「するってぇと俺は、親分さん方が間違ったせいでとっ捕まった、ってわけですかい?」

「だから、すまねえと言ってるだろ!」

 再び、深々と、長治親分が頭を下げる。
 お上の手のものでありながら、素直に自分の間違いを認める。こういうところが、長治親分の、人気の所以だ。

 確かに、悪い奴じゃねえ。
 だがこの親分は、如信尼様の周りをうろちょろしすぎる。


 「実は、見てた奴がいたんだ。白野屋の番頭が、三助を縊り殺すのを」

「白野屋の番頭!」

 思わず、間抜けな声が出た。あの、誠実そのもののような、矢八郎が?
 長治親分は頷いた。

「目撃者は、あまりの恐ろしさに、暫く、隠れていたそうだ。なにしろ、人殺しの現場を見ちまったわけだからな。だが、五右衛門、お前さんが捕まって、拷問されているという噂を聞いて、あわてて、出頭してきたってわけだ」

「五右衛門……」
潤んだ声を出し、独歩が縋り付いてくる。

「いや、噂だから。拷問なんかしてないから」
慌てて長治がとりなす。

 この騒ぎを、なぜか、おえんは薄ら笑いを浮かべて、見ていた。

「しかしまた、なんだって、矢八郎は、三助を……」
「三助が、旦那の春兵衛に乱暴するのを見て、耐えられなくなった、と言っていた」
「乱暴?」
「お店の前で、突き飛ばしたとか」
「ああ、あれ! 尻もちをついた」

ようやく、俺も思い出した。

「あれで殺されたとは……。俺も見てましたけど、それほど無体な事じゃなかったですぜ」
「だが、矢八郎には、耐え難い乱暴だった」
「いや、割が合わなすぎでしょ……」
「わかってやれ、五右衛門。つまり、そういうことなんだ」
「そういう、こと?」

「なるほど」
割って入ったのは、おえんだった。

「なるほどって、おえん、おめえ、」

「親分さん、五右衛門に、男×男の情を説いても無駄ですよ」

 5歳とは思えないセリフを、おえんが吐く。
 つか、男×男って、何?

 意外なことに、そして、俺にとっては心外なことに、長治は頷いた。

「そういうわけでよ。三助殺害容疑で、矢八郎を掴まえたんだが、お前たちの話を聞いていて、わかった。この話、どうにも、裏がありそうだな」

 「磁器の孔!」

目を輝かせ、独歩が叫んだ。頬が紅潮している。

「磁器に孔を空ける為に、三助は、岡津へ引き抜かれた。でも、岡津の磁器は国内販売しかされていないはずだから……」

「独歩の手柄ね!」
 ぴょんぴょんと、おえんが飛び跳ねる。

 大きく、長治が頷いた。
「こいつは、でかいヤマだぜ」

「いや、ちょっと、話が……」
 俺一人、何のことやら、さっぱりわからない。

 3人から一斉に、頭の悪い、可哀想な人を見る目が、注がれた。

「五右衛門。磁器に孔を空けるのは、何の為?」
今まで聞いたこともない、慈愛深げな声で、おえんが尋ねる。

「そりゃよ。金の蓋だか取っ手だかを取りつける為だろ」

「金の金具は、どこでつけるの?」
優しく宥めるような、これは、独歩。

「海の向こうの外国だぜ。南蛮とか、伴天連の国とか」

「で、出来上がった陶磁器に穴を開けるように依頼したのは誰だ?」
つっけんどんな物言いは、長治親分。

「白野屋だ。俺が、花瓶をぬ、」
慌てて言い直す。
「花瓶を買ったおたなの」

「密輸出だ!」

 長治が叫んで立ち上がった。
 次の間に控えていた手下どもに下知を飛ばす。

「白野屋に踏み込め! 蔵から屋根裏まで、徹底的に探すんだ。他にも、孔の開いた磁器があるはずだ!」




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